PHASE4:フロンティア
白一色で染色された正体不明機とノーチェアスの間に入ってきたのは、黒一色で染色された”デサピア”だった。前回見た時とは違い、左腕にシールドを右腕にライフルを装備していた。
デサピアが背中の大型スラスターとブースターを起動させ、空中で静止していた機体の目の前まで一瞬で到達する。シールドを持っている手の甲から、ブレードが出現し敵を切り裂こうとする。
正体不明機はデサピアの攻撃を難なく回避し、蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたデサピアは降下し、地面へと叩きつけられる。正体不明機はデサピアに銃口を向けるが、発射するよりも早くデサピアがグレネードとミサイルを一斉に発射する。虚を突かれた正体不明機の回避は間に合わない。だが、背中の翼のような形状をしたものが機体を庇う。
「あの機体に乗っているのは?」
二機の戦闘の様子をただ見ていることしか出来ない花菜はデサピアの搭乗者が誰だか気になっていた。
「こちら、カイト。レーダーにアンノウンが二機映っているが、分かる者いるか?」
「敵側の新型FTともう一機は”デサピア”よ、今私の目の前で二機が戦っている。誰か援護に来れる者は?」
「こちらはマライだが、敵の挙動がおかしいぞ。まるで何処かに集結しようとしているみたいだ」
花菜の乗るノーチェアスのレーダーに信じられない数の敵反応が表示される。どうやら集結している場所はここのようだ。
「集結場所は、アルファ3」
急に正体不明機が攻撃の手を止める。その理由は周辺に味方機が集結したからであろう、正体不明機は高みの見物でもするつもりなのだろうか。
中破したノーチェアスとデサピアを囲んでいるゾベーズはゆうに二十機は越えている。普通なら逃げ出す状況だろうが、デサピアは敵の攻撃を自機に集中させようと突っ込んでいく。
間合いを詰めながらミサイルとグレネードでゾベーズを破壊していき、一機のゾベーズの頭部を掴むと敵に目掛けてぶん投げる。
ゾベーズの攻撃などものともしない頑丈さで装甲を貫く事も敵わない。ゾベーズが残り十機になり、集結する陣形を取った。
そこで、初めてデサピアは右腕のライフルを集結したゾベーズに向け、トリガーを引いた。ライフルからは青い光が放たれ、一直線に進んでいく。直進の間に周囲の木々を薙ぎ倒し、目標へと着弾すると大きな青い爆風が起きる。
ようやく、花菜の味方の機体が到着した時にはゾベーズは全滅した後だった。カイトも含め、全員がデサピアの圧倒的な性能に驚愕する。それが一番大きかったのは、一部始終を見ていた花菜だった。
「仲間も全滅しただろう。もう充分だ、撤退しろ!!」
オープン周波数で浩介の声が聞こえてくる。正体不明機は素直に撤退する気はないようで、再度銃口をデサピアに向ける。
「あのアンノウンの性能は未知数だ。全機”デサピア”の援護に回れ」
正体不明機のライフルから、デサピアと同じ青い光が発射され、味方機は散開しデサピアの後方で援護射撃を行う。
デサピアもブースターを展開させ、移動しながら敵をロックオンし持っている火器を全て一斉に発射する。正体不明機は大半は回避したが回避できないものはシールドで防ぐ。
正体不明機がデサピアに集中していると背後から緊急ブースターと倒れた巨木を使ってジャンプした一機のノーチェアスが剣を上段から振り下ろす。
「もらった!」
「ちっ! カイト・ヘルズニルク!」
「今の声!?」
「何処かで・・・」
振り返ると同時に正体不明機は剣を左腕で掴み、真っ二つにへし折る。デサピアの時と同じように地面へと蹴り飛ばし、銃口を向ける。
レーダーの背後に反応があり、警報が鳴る。デサピアが先程と同じように目の前まで迫ってきていた。今度は回避する事が出来なく左腕がブレードで落とされる。
「なるほど、お前も。”フロンティア”」
機体の搭乗者はそれだけを言い残し、撤退した。その速さは現在存在するどんな兵器よりも速いだろう。
戦闘が終わり、その後の処理に慌しく人が動いている間に、浩介は格納庫のデサピアの前で座っていた。その横に花菜も座る。
「ありがとう。助けてくれて」
「聞かないのか? 父さん達みたいに」
「私にとって命の恩人。それだけよ」
訓練も無しにFTを動かした浩介は技術者やこの研究所の関連の人間から興味深い目で見られていた。唯一”デサピア”を動かせる人間として見ている者もいるだろう。その証拠として、これからはこの研究所で協力を余儀なくされた。もちろんデサピアのデータを取るためのテストパイロットとして。そして、敵が言い残した”フロンティア”とは何を指すものだったのかを明らかにするため。
今までどおり普通に学校に通いながら、そんな事に手を貸すなんて出来の悪い三流映画の主人公かと浩介は思っている。
「よっ。お二人さん」
「カイト」
「元気ないなぁ〜、もっと明るく行こうぜい」
「浩介君は慣れてないだけよ」
慣れたくなんか無かった。人を殺す事に慣れたくなんか無い。結果として今日は人を一人も殺してはいなかったが、この先どうなるか分かったものではない。
「にしても、あの敵は何なのかね? あの新型もそうだが、あれだけの数のゾベーズを遠隔操作できるなんて遥かに今の技術水準を超えているぞ。何処の国の物だ?」
「ソ連かアメリカしかないんじゃない?」
「あ、そういや、お前らあの敵のパイロットの声になんか聞き覚えがあるみたいだったよな?」
「う、うん。ただ、知り合いに似ているなぁって・・・あ、でも絶対ありえないからね? あの子にそんなこと出来るなんて絶対ありえないから!」
そう、確かに花菜の言うようにありえない。だが、あの時のあの声は確かに聞き覚えのある声だった。氷のように冷たく機械のように冷徹なあの声。以前聞いた事がある。それは河嶋詩音の声だった。
サブタイトルですが、ミスではないのでご了承ください。




