表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

脳内会議


「ルカさん?えっとどうゆう漢字なんですか?」


そういいながら夏音さんはごみ箱付近にあるカラーボックスから

コピー用紙と黒のボールペンを取り出しアルミ製のデスクに置いた


「瑠璃色とかの瑠に華で瑠華です」


自分の字にはあまり自信がなかったので

読みづらかったらどうしようかと少し不安だった


「いい名前ですね」


「そう…ですか?ありがとうございます」


こうゆう時反応に困るのは私だけだろうか


「えっと私の名前は……って名刺にかいてましたね」


名前の話に夢中になりすっかり冷めてしまったコーヒーを一気に飲み干した


「それじゃぁそろそろ帰りますね」


そういうと夏音さんは一言


「送っていきます」


えっと……どうしよ


「こんな時間に一人は危ないですよ」


一体こんな時どうしたらいいだろう

考えた末にだした答えはこうだ



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



私は立ち上がり会議室の扉を開けた

そうそこはいく数十名の私がいる会議場

足早に壇上へ登壇し私は重い口を開けた


「第25回脳内会議開催」


「今回は彼女『笹村夏音』氏の好意をどう受け取るか」


議題を言い終えた直後に会場は一気に興奮の坩堝と化した


「これ以上夏音氏に迷惑をかけてどうするのだ!

ここは丁重にお断りすべきだろう」


「たとえば好意を有り難く受け取ったとする

その後何かおきたらどうする責任はおいきれないぞ!」


「そもそもどうしてさっき出会った人物とこうも親しく会話ができるのだ?」


「現実をみろ何を信用するかよく考えてから慎重に行動することを推奨する」


「第一にまだ20時だタクシーでも拾って帰宅すればよかろう」


「私もその意見に賛成だタクシーの方がより安全かつ早急に自宅につけるぞ」


「というより終電が20時前とかおかしくないか?」


「それは後で誰かが説明するだろう」


「私も賛成だ

それにタクシーに乗るぐらいの資金はまだあるだろう」


「賛成」「賛成」「賛成」


これでタクシーに乗り帰宅することが決まった

と思った時どこからか声がして意見した

あれだけざわついていた会場が火のついたマッチ棒を水に浸けたときの様に「ジュ」っと音をたてて消えた

その声の主は確認するかの様に再度意見を述べた


「私はその意見に反対だ」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ルカさん?」


夏音氏が……っと失礼

気がつくと夏音さんが不安そうな顔で私の顔を覗き込んでいた


「えっ?あぁゴメンなさい脳…

いえぼーっとしててそれで……何でしたっけ?」


脳内会議をしていたなんて言えるわけがない


「大丈夫ですか? 時間もあれなんで送って行きます」


「えっとお願いしてもいいですか」


私がそういうと今にも雨が降りだしそうな

曇り空の不安な表情から一変

ぱあっと夕立の後の太陽の様な明るい表情を見せてくれた

そして「はい喜んで!」と今にも飛び跳ねそうな勢いで言ってきた





そうだどうして

このような結果になったのか

その理由となった脳内会議の続きをお見せしよう



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



【脳内会議 会議室】


火のついたマッチを水に浸けて

消火した後再び火を点けるなんて無理な話しだ

火は点かない

だが今この会議室内の現状は違った

一旦水に浸け消火したはずのマッチ棒は再燃し始めた

それも前よりさらに強く大きな炎になって轟々と燃え上がる

おそらくあの一言によりたっぷりと油を注いだのだろう


「何を今更言っている」


「もう決まった事ではないか!」


「とんだ話しのわからないやつがいたもんだ」


再燃したマッチを消す方法は現在思案中だ

とりあえず理由を聞くために静かにしてもらう必要がある

なにより私も「反対」の意見である

だから同じ意見の理由を聞きたかった

私は声を大にして叫んだ


「皆静かに!」


鶴の一声とはまさにこれだと私は心からそう思った


「私はその意見に賛成です

つまり……なにゆえ皆の意見に反対するのか

明快な答えがあるはずです

そうこの会場全員を納得させる論理的な根拠が 今はその理由を聴こうではないか」


ざわついていた会場はしんと静まり

皆右斜め後方にゆったりとした姿勢で座っている

何番目かの私に注目し静かが話しはじめるのをじっと待っていた


彼女はといっても私なのだが(以下彼女の名を夏川(仮)と表記する)

夏川(仮)はゆっくりと口を開いた



「諸君らが求める決定的な根拠というものを提示し一様に頷き納得するような理由を皆に公表できるかといわれれば

そういった自信というものも含め皆無である」


そう言い終えるのと同時に批判の声が一斉掃射された銃弾の如く夏川に降り注いだ


出ていけだ二度と口を開くなだ裏切り者だ罵詈雑言の嵐


ついに耐えかねた私は壇上の机を叩き一気に怒りをブチまけた


「うぬらたった一人の者を責めるためにこの会場に来たのか!?

明確な理由も聞かずにただ罵声を浴びせ何がおもしろい!

多数決を取るために私はここへ来たわけではない

一つの意見を大切にするという気持ちはないのか!

なにゆえ夏川氏をつまはじきにするような発言ばかりする

ここにいる皆に発言権はあるだろう

異論はあるか?

ある者は一歩前へ

だがすべての意見を却下する」


一方的にすべてをブチまけた

私は心身共に疲れ果て壇上を下りそのまま会議場の扉を開けた


不思議と批判の銃弾は一発も発射されずに皆呆然と私を見つめていた

ただただ一人夏川だけは薄ら笑いをうかべ宙を見ていた






「かなり強引な終わり方だが許してほしい

こうゆう事でしか終わらせる事ができなかった私の責任だ

異論は認める

すべてを受け止めようではないか」


誰かに話しかけるわけでもなく

ただボソボソと独り言のように呟いた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ