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自分の名前

終電で人がいなくなった駅のホームには

清掃員のお姉さんと二人っきりとなった

私は喋るタイミングを逃してしまい

いつ話し出そうかお姉さんの様子を伺っていたら


「寒いので場所変えませんか?」

【賛成・賛成・勝訴】


私の頭の中でこの三つの言葉(なぜか勝訴)が何度も何度も繰り返された


きっと寒さで頭が働かなくなったのだろうと勝手に解釈し納得した


「いいですね でもどこへ行くんですか?」


とりあえずこの場所から離れて

暖かい場所に行きたい


「えっとまずは事務所に戻りますね」


事務所?あぁそういえばお姉さんはまだ制服(作業着)のままだった

「そういえば事務所ってどこにあるんですか?」


ふと思った疑問をそのまま投げてみた


「えっとどう説明したらいいんだろう」


少し困った顔をして考え込んでしまった


しばらくしてお姉さんは口を開いた


「ゴメンなさい説明下手なので

とりあえず付いてきて下さい」


そういってお姉さんは駅の階段を上がっていった


「寒いですね」


階段を上がりながら微笑みながら話私にしてかけてきた


「寒いですねこんなに寒いのに雪が降らないなんて正直驚きです」


「事務所戻ったら何か暖かい飲み物お出ししますね」


「あの?事務所って関係者以外立入禁止とかじゃないんですか?」


疑問というのは尽きないものです


「寒いのに外で待たせるなんて失礼じゃないですか

それに人いませんから大丈夫ですよ」


そういってまた微笑んでくれた

彼女の笑顔はどこか温もりがある

話している間に階段を上りきったようだ

駅ビルはほとんどのお店がシャッターを下ろしていて開いている

ガランとしていて寂しく感じた


「さて行きましょうか」


お姉さんがいう事務所は意外とすぐ近くにあった

扉には


【 関係者以外立入禁止 】


と大きなステッカーが貼られていた

その下に同じような大きさのステッカーが貼ってある


【 清掃員専用事務所 】


ガチャ


「さぁどうぞ遠慮なく入ってください」


そういってわざわざ扉を開けて待っていてくれた


「ありがとうございます」


お礼をいうと軽くニコッと笑って返してくれた


ガチャン


「あっそこのイスに座っててください」


そこのイスとは近くにあった折り畳みのパイプイスだった

まだ新しいのかサビやヘコミが一切なくきれいだ


入ってきて早々パイプイスの観察をしていた私


一方お姉さんは無料の自動販売機の前で何を飲もうか悩んでいた


「お茶もいいけど炭酸も捨て難いいやココは暖かい紅茶で……」


ブツブツ呟きながらうーんと唸っている

そんなお姉さんを観察していると

「コーヒーって飲めますか?」


と質問されたので驚いて声が裏返ってしまった


「えっあっはい一応飲めます」


コーヒーは多少苦くても我慢するつもり飲めないというわけではない

ただ飲み慣れてないだけ

だから嫌いじゃない


パタン


「はい熱いので気をつけて下さいね」


「えっとありがとうございます」

まずお礼をいってからコーヒーの入ったカップを受け取った


「……あのこれは?」


受け取ったカップの中を見てみるとコーヒー独特の黒みを帯びた茶色ではなくクリーム色をしていた


それにカップの中身から発せられる匂いがコーヒーの苦い香りじゃないそう感じた

もっと別なこう柔らかな甘い香りがする


「当ててみてください」


ニコニコしながら私の質問に答えた


私はとりあえず一口飲んでみることにした


「……おいしい」


しつこい甘さではなく口の中にふわっと広がりすぐに消え

少し酸味のあるほろ苦い香りが残った


「あの……これは?」


「えっとただのミルクコーヒーです 少し元の物を変えただけの

よくみんなに出すんですお疲れ様の意味も込めて」


「このコーヒーを飲むと疲れ……すぐになくなりますねなんか魔法みたいです」


本当に魔法みたいだ

歩き回って疲れているはずなのにいつの間にか消えていた


「そんな魔法だなんて でも少しでも疲れがなくなったのであれば作った甲斐があります」


そういった直後はっと何かを思い出したかのようにお姉さんは話し出した


「そういえばまだ名前言ってませんでしたね

私は笹村夏音っていいます」


名刺と一緒に自己紹介

さすが社会人


「あっえっと私は榊原瑠華っていいます」


名刺を受け取り自己紹介


その時ふと気付いた

そういえばだれかに自分の本名いうの久しぶりだということを

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