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Dawn  作者: ひよこ


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22/214

 




 わがままか。


 それはわがままだ。


 わがままになりたいと望んでは。


 結局は、自分の意思では無いのだから。


 胸に突き立てられた、ナイフ。


 抜くことも叶わない。


 深く沈んでいく。


 心臓の奥深くに仕舞われた。


 もう二度と取り出せない。


 鍵は金庫の中みたいだ。


 金庫は盗まれた。


 だから僕は追いかけた。


 追いかけた……。


 でも追いつけなかった。


 翌日、金庫はゴミ捨て場に置いてあった。


 中身はそのままだった。


 なんて事はない、中にもゴミしか入っていなかったのだ。


 こんなものを抱えて何年もよく生きてきたな。


 盗まれて良かった。


 でも鍵が無かった。


 また違う誰かが持って行ったのかも知れない。


 好きにすればいいが。


 彼は呪いの言葉を吐いただろう。


 盗まれた上に、何故そんなことまでされなきゃあいけないんだ?


 いつも傷つけられる。


 確かに、こないだ、倒れている人を見かけても助けなかった。


 僕も傷つけた。


 あの人を救わなかった。


 皆だっていた。


 何故僕だけ責めるんだ。


 だから嫌だったんだ。


 死んでいれば良かったのに!


 あの時!!


 誰も助けてくれなかったのに……!


 足が震えている。


 寒い。


 血が凍るほどの寒さ。


 冷たい人間。


 機械より人形より愚かで馬鹿でどうしようもない。


 何が出来るのか、何がしたいのか。


 それだけを与えられたもののなんと幸せなことか。


 考えれば更に震えが止まらなくなる。


 冷たいのは、冷たいのは……。


 少なくとも何も着ていないせいでもあった。


 警察が飛んでくる。


 翼を広げて飛んでくる。


 警察もまた何も着ていなかった。


 何故震えないでいられるのか?


 手錠足錠首錠。


 目錠鼻錠耳錠口錠。


 いつもと変わりはしない。


 連行されることだけが嫌だった。


 知らない景色。


 その苦痛だけは誰よりよく知っているつもり、そういう風な顔をする。


 当然誰も気付かない。


 誰も見ていないから。


 誰も居ない劇場。


 一人踊らされている。


 逆立ちで。


 頭が床に擦り付けられる。


 血が滴る。


 誰も見ていない。


 糸は切れている。


 逆立ちのまま踊る。


 まばらな拍手が送られる。


 感覚が無い。


 いつの間にか体がバラバラだからだ。


 大歓声。


 ピアニストが応えた。


 確かに彼は素晴らしい演奏だった。


 誰も踊りなど観ていなかった。


 体を繋ぎ合わせ、一人で帰る。


 うまく歩けない。


 指が無いからだ。


 細かい部品は拾えなかった。


 這って進む。


 景色が変わる。

 

 星が綺麗だ。


 知らなかった。


 下ばかり向いていたから。


 こうなって初めて知った世界。


 願いをかけようか。


 どうかこのままであって欲しいと。


 星が落ちてきた。


 流星が胸を貫く。


 星が落ちてきた。


 頭を削り取る。


 地面にめり込んだ星は、ルビーの輝きだった。


 誰かが拾って行った。


 家までもう少し……。


 あと、少し……。


 あと……。





 体が動かない。


 体なんて無いのに。


 でも、もう限界だ。


 悔いはない。


 ただ悔しいだけだ。


 もっと。


 掴めたはずだった。


 それが出来なかった。


 家が遠ざかっていく。


 どうしても自分が許せない。


 ただ一つの願いさえも叶えられないのか。


 その時、何か光が見えた。


 空の奥。


 耳で見、口で聞いた。


 頭が遠くに転がっていくのを指で嗅ぎとる。


 光が、感覚を潰す。


 伏せていなければ危なかった。


 星が……星が百、千……。


 なんて恐ろしい輝きなんだ。


 願いを叶えようというのか。


 やめてくれ……。


 やめて……。


 

 や……。


 

 

 やめてくれえええええ!!!!!


 


 体が浮き上がる。


 天地が逆さになる。


 星が輝いているのでは無い。


 あれは、観客達の目だったのだ。


 ずっと見ていたのだ。


 今こそ終幕を見届けようと目を輝かせたのだ。


 願いを叶えるのをやめろーーーーーーーっ!!!!!!


 ギュイーーーーーーーン


 引っ張られるように吹き飛んでいく。


 明らかに重力の法則から外れ……て……。


 ドンッ


 気が付けば心臓が屋根に突き刺さっていた。


 動けない。


 鍵が……。


 引っかかって、い。


 家のドアの、鍵、だったのか……。


 それさえも分からずに……今まで………………


 い、ま、ま、





 ザーーーーーーー


 ジャーーーンジャカジャーーーーーン


 ドロロロロロロ


 パァーパパパパーーーーファファファファーーーーーン


 ピューピュー


 ジーーーーーー


 ジャンジャン


 ウィーーーーーーー


 カタカタカタカタ


 ガタッ


 ガタッガタッガタガタガタ


 ガヤガヤ


 ワイワイ


 ギィー


 バタン
























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