独
何故、なのか。
いつも自分に問いかけていた。
答えは返って来なかった。
答えなんて知らないから。
自分自身ですら、自分を見限っているのだ。
離れたいのに、それが出来ない。
人生とは、夏の夜の部屋みたいなものなんだね。
誰も視線を合わせてくれなかった。
そこを見ることは出来なかった。
おそらく見えているものすら他人とは違っている。
暗い。
声が出せない。
自分には喉が無い。
触れられない。
突き飛ばされる。
歩けない。
地面が無いから。
感じない。
そこに誰も居ないから。
授業中、黒板に集中していた。
先生が何を言っているのかは半分分かって、もう半分は理解不能だった。
だいたい、目が悪くて文字がよく読めなかった。
なんとかノートをとっていた。
あの時ほど憂鬱な時があっただろうか。
他人には、絶対に分からない。
下を向いて、ただ耐えていた。
怯えていた。
いつもいつも、いつもいつも、恐れていた。
今となっては、今となっても、この体の中にいる。
もうそれは自分の一部であり、一部でありながら僕よりもはるかに大きな存在になった。
ただ心の中の行いでありながら、心を喰らい、押し潰し、内側全てを蝕み、しかしそこから出ていかない。
やはり心なんだな。
二度と後戻り出来ない。
終わりに向かって、逃げている。
前に進んでも、後ろに進んでも、羽が生えても、海の中にも、幸せなど、ありは、するのだった。
辿り着いた時には既に中身が無い。
誰かが持っていって散々遊んだあとなんだ。
いつもそうだった。
でも誰かが居ないと、場所が分からない。
他人すらも幻なのに。
ありもしない現実を、求めている。
その考えすらもありもしない妄想だった。
頭の中が壊れていた。
その時既に気が付いていた。
気が付かなければ壊れたことも無かったことに出来たかも知れないのに。
だって。
明らかにおかしいから。
見て見ぬ振りは、結局更におかしくさせるだけだ。
いつ気が付くべきだったのか。
そのタイミングを誤ったのかも知れない。
もっと早ければよかった。
変にまともぶって、余計に失った。
どうしてそんなことをさせた?
だっておかしいから。
生まれる前から、そうだったと分かっている。
何も知らない癖して、自分の不具合については誰より聡い。
そう誘導されていた。
身動きがとれない。
意識が夢から覚めない。
仕方ないから座っている。
交差点の真ん中で。
誰も居ない。
ビルの中にも、店の中にも。
交差しない。
狂気と正気すらも交わらない。
何も巡らない。
太陽も昇らない。
月も輝かない。
白線が引かれていない。
真っ白でない、もちろん透明でもない。
形容し難い濁り色。
目の奥が染まって、涙が流れて、海に向かっていった。
海はどこだ。
もう行方は知れない。
足元に水溜りがあった。
ただの水では無かった。
覗きこむ顔が映った。
目と鼻と耳の無い顔が。
自分の顔。
はっきり自分を見つめている。
鏡が欲しい。
常に顔を包んでいて欲しい。
窒息したい。
百万の目に見つめられながら。
立ちあがろうとした。
勇気を出して振り向いて、ようやく分かった。
何も知らない頭が、何より早く気が付いた。
口の無い顔が自分を見つめていた。
どうしてかは分からなかった。
一億人もいる意味は、流石に分からない。
でも、自分はどうやらここから出ていって欲しいと思われていることを悟った。
そうか。
やはりそうなんだな。
ゆっくり這って進む。
かつて、涙の流れた方向へ。




