6・諸行無常
ありがとうございました
「おう、来たな」
「何故、関係の無い者を巻き込む!」
「ん?、お前と関係はあるだろう?それが気に食わんだけだが?」
「それだけの理由で!」
「はぁ?、俺には大きな理由だが?そもそもどうなって良いと言ったのは貴様であろうに、自分の吐いた言葉を良く噛み締めんか!いつまで経っても逃げの兵助じゃな!いいか?もう一度言うぞ!き、さ、ま、が良いと言ったであろうが!」
喜三郎が兵助に近寄ると、目の前でくるりと背を向けた。
その一瞬で兵助は踏み込み下から切り上げた。
喜三郎は素早く半歩前に出た。剣は空を切るがそのまま振り下ろし真っ向に切りつけた。
“追掛抜”を遣った。
喜三郎の頭上に剣が届くところで受け留められた。
右腕で受けている。
下がろうとしたところ剣先を握られた。
刀の先端が折られ、喜三郎の左手による逆手居合の抜き打ちで軽く袈裟に斬られる。
「馬鹿か?同門なのだからあの体制取れば、追掛抜を遣うと分かるわ!本当にグズだな」
喜三郎の右手のひらが光る。
「鎖帷子か!?」
「おうよ!鎖の手袋だよ。貴様には思いも付かんだろう!」
喜三郎は人を多く斬っている剣だ。
さっきの一刀で殺され無かったのは、剣が運良く折れたまたま間合いの外に出れただけだ。
(まずい・・次は無い・・・)
兵助はここでやっと覚悟を決めた。
この後に及んで、まだ何処か踏み切れなかったのだ・・・
(覚悟が無いばかりに、取り返しの無い事になってしまった)
大きく飛び下がり、間合いを開け折れた剣を納める。
「何だ?居合で勝負か?」
黙って喜三郎を睨む。
「よかろう乗ってやる!」
小走りに喜三郎に近づく。
喜三郎は逆手居合の構えだ。
間合いに入る前に兵助は斜め前に飛ぶ。
剣はおろか槍でも届かない間合だ。
ザザッ!
砂煙が舞う。
兵助は喜三郎の左後ろあたりの、かなり離れた位置に居る。
「秘奥義・・・一撃・・・」
喜三郎は目を向き血を吐き出し、その場に跪いた。
刀が届く間合いでも無いので抜いても居ない。
しかし、喜三郎の腹には3本目の刀があった。
兵助の鎧通しだ。
そこから血が滴り落ちる。
「卑怯・・・まさか“一撃”とは・・・投剣だったとは・・・武士の魂を投げるとは卑怯!」
「だから秘奥義だ。武士で無い者を斬る貴様のような卑怯者に、卑怯と言われたくは無い」
「黙れ!弱者なぞ死ねば良いのじゃ!おい逆手居合は何じゃ」
「あれは元はエゲレスの武人から教わった技らしい」
「毛唐に教わっただと!何という事・・・恥を知れぇ・・・」
ゴボッ!
喜三郎の口から更に血が吹き出す。
「弱者なぞ死ねば良いのじゃろう?さらば弱者喜三郎!」
兵助は左手で切先が折れた刀を抜き打った。
喜三郎の首は勢いよく転がり川に落ちた。
兵助はそのまま脱藩し、行方不明になった。
その後大政奉還が行われ、数百年続いた徳川幕府の時代は終わった。
そして時代はうねり元号は明治となり新政府になった。
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明治に入り千葉さな子に京都の寺から来た僧侶が、坂本龍馬の遺品を届けに来た。
僧侶の名を聞いても何も反応しなかったさな子だが、顔を見て驚いた顔を見せた。
奥の部屋に僧侶を通した。
2人は旧知の仲のようで、長々と話し込んで居たらしい。
その日はさな子の勧めで泊まり、翌日は日本橋界隈で経をあげ京に戻って行った。
終




