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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
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70 作戦準備

 

「全員武器を捨てろ。抵抗したら容赦しないぞ」


 扉を蹴破り雪崩れ込んだフォンシェが叫ぶと、その声は空虚な空間に響き渡った。


 フォンシェは誰もいない空間を見て、あっけに取られて口がぽかんと開いていた。


「なんだ、これは? おい、建物内を捜索しろ」

「「「はっ」」」


 だが、部下からの報告はここには誰もいないというものだけだった。


「隊長、アントン隊、ホレス隊とも誰も逃げてこなかったと言ってきました」


 くそっ、騙された。


 フォンシェは自分が騙された事を理解し地団駄踏んで悔しがったが、このまま成果ゼロでは拠点に戻れなかった。


 直ぐに全員を集めると、緑髪の人間を見ていないか周辺の聞き込みを始めた。


 +++++


 乱暴に開いた扉からは1人男が駆け込んできた。


「おい、オラシオ、ダミーの拠点に連中が突入したぞ」


 それを聞いたギルドマスターが噴き出した。


「ぶふふふ、どうやら商業ギルド内に連中のスパイがいたようね」

「ギルマス、どういうことだ?」


 オラシオがそう叫ぶと、ギルドマスターは余裕の表情で返していた。


「此処に来る前に、ダミーの拠点に行くと言ってから出てきたのよ」


 ああ、それでカラスが一杯食わされたという事ね。


「すると連中、一杯食わされたこと地団駄踏んで悔しがっているという事か」

「ええ、だけど、これだけ直ぐに反応したという事は、連中が邪魔されたくないと思っているという事よ。いよいよ、連中の計画が最終段階に入ったと考えるべきね」

「すると、もう時間が無いという事だな」


 ギルドマスターとオラシオの会話を聞いていると、カンカさんの救出するための時間がもう無くなっているという事だ。


「ギルマス、どうする?」


 そう聞かれたギルドマスターがこちらを見てきた。


「皆さん、カンカさん救出を急がなければならなくなりました。貴方達はどうしますか?」

「勿論、協力するぞ」


 そう声を上げたのはシリルだった。


 既にオラシオさんとギルドマスターはやる気になっていて、それにシリルとカーリーも同意した事から話がどんどん進んで行った。


 そして決まったのは、オラシオさん達がカラスの拠点前で騒ぎを起こし、そちらに連中を引き付けている間に私達が海側から潜入することだった。


「魔魚がいる海の中はこちらの行動が制限されて危険だから、海岸沿いを水路まで行くしかないな」


 テーブルに広げられた見取り図では、海に面した水路と傍の壁が未完成を示す点線で描かれていた。


 この部分が完成したら潜入は難しそうなので、今救出に向かうのは最後のチャンスに見えた。


 私は侵入路が見つからずガイア様に壁に大穴を開けてもらう光景を想像してみた。


 大音声の破壊音と崩壊する壁、大騒ぎになる現場を想像して、とても救出がうまくいくような気がしていた。


 そして今から救出に向かうのは良い案だと考え直すのだった。


 +++++


 まんまと騙され、慌てて周囲で聞き込みを行ったが、全く成果が無かったフォンシェは仕方なく拠点に戻って来ると、早速指令から出頭命令があった。


 フォンシェが指令室に入って行くと、執務机に座ったドンが書類を見ながら声を上げた。


「捕まえたか?」

「い、いえ、まだ、行方を追っているところです」


 フォンシェがそう言うと、書類から目を上げてこちらを見たドンの顔は信じられないといった表情だった。


「相手は目立つ緑髪だぞ。そこらへんを歩いている通行人に聞けば誰か見ているだろう。それで、なんで見つからないのだ?」

「それが、聞き込みを続けているのですが、全く目撃情報が出てこないのです」

「それなら商業ギルドから外に出ていないのではないのか?」


 それには強く否定出来た。


「いえ、商業ギルド内の協力者からの情報では、ギルドマスターが緑髪を連れて外に出た事が確認されています」


 すると指令が手に持った書類を机に置いた。


「それで何故、情報が入ってこない?」


 フォンシェは司令の機嫌が悪くなっているのを理解していて、自分の返答次第では無能とののしられるだろうと分かっていた。


 何とか、指令を納得させられる理由を必死に考えていると、頭の中に1つの答えが導き出されてきた。


「多分ですが、住民の我々に対する感情が悪化しているせいではないでしょうか?」

「はあ? 神官達が治療してやっているだろう。連中は恩知らずなのか?」


 フォンシェは神官達が法外な治療費を要求しているのを知っていたが、それを言ってしまうと我々が不誠実な対応をしていたと認めてしまう事になるので、絶対に言えなかった。


「まさにそう思いますが、それが現実なのです」

「そうか。なら、神官達に連中の治癒を止めさせるんだ。そうすれば連中も我々のありがたみを身をもって思い知るだろう」


 フォンシェは、神官達の治癒行動が自分達の権限外であることを口にしようとして止めた。


 それよりも強欲な神官達に、もっと治療費を上げろと言うほうが簡単だと思ったからだ。


「そのように対応いたします」

「ああ、それから捜索は部下達に任せて、お前は拠点の防衛に回れ」

「え、ここの防衛ですか?」

「ああ、なんだか嫌な予感がするのだ。拠点の防備を固めようと思う」

「分かりました」


 フォンシェは指示を伝えるため、指令室から退出した。


 +++++


 作戦は今夜決行となったので、私達は夜間行動のため持ち物のチェックを行う事になった。


 私は一旦2人と別れて、誰もいない場所でガイア様とグロウ様を呼び出した。


 2人は今まで神石の中だったので状況が分かっていないだろうと、これからの事を説明していった。


「すると、モーフの神域を探すためその手掛かりを持っている可能性のあるマーメイド族を救出するのだな?」


 ガイア様がそう言ってきたので、私は頷いた。


「はい、そうです。それで夜間に捕らえられているという建物に潜入するつもりです」


 私がそう言うと今度はグロウ様が口を開いた。


「アリーちゃんは、夜目は利くの?」

「いえ、私は暗視魔法が使えませんので」


 私がそこまで言うと、グロウ様の手がぱかりと開くと緑色の光線に包まれた。


「グロウ様、何をされているのですか?」

「夜でも昼間のように行動できるようにしておるのじゃ」

「あ、こら、それなら私がアリソンを乗せて走れば済む話だろう?」

「全く、このトカゲは」


 そう言ったグロウ様は、首を横に振ってから先を続けた。


「夜間の潜入は静かにそして見つからないように移動するものじゃ。そなたに乗って駆け込んだら、それこそ眠っている敵兵を全員たたき起こして、潜入作戦がぶちこわしじゃ」

「むう」


 まあ、ガイア様はどちらかというと、どんな相手でも真正面からぶつかって打ち破る事を好みそうよね。


 それに、こっそりとか静かにとかいうのは苦手そう。


 そう思って私はくすりと笑ってしまった。


「アリソンよ、その笑いは何だ?」


 あ、いけない。


 ガイア様が不貞腐れてしまったわ。


「ガイア様、救出作戦は救助対象を見つけるまではどうしても敵に見つかってはいけないのです。ですが、見つけた後は、多少騒いでも迅速な撤退が必要ですから、その時はお力をお貸しください」

「ふむ、そうか」


 ガイア様は私が頼りにしていますよと言うと、機嫌を直してくれたようだ。


「アリーちゃん、これで魔眼を使ったら暗視が可能になっておるぞ」

「ありがとうございます」

「ふむ、それからこれを渡しておくぞ」


 グロウ様はそう言うと、糸玉のような物を差し出してきた。


「グロウ様これは?」

「このツタは丈夫で伸縮自在じゃ。魔眼を発動した状態で伸びよと言えば伸びるし、縮めと言えば縮むから潜入には便利じゃぞ」

「まあ、それはとても便利そうですね。グロウ様ありがとうございます」


 それから2人を神石に戻ってもらうと、待たせていたシリル達の元に戻った。



「アリソンちゃん、準備はいいの?」


 カーリーにそう聞かれたので、私が頷いた。


「はい、後は食料を少し補充すれば大丈夫だと思います」

「ああ、それなら私の方で用意しておいたわ」



 そしてオラシオ達と最終確認を終えると、彼らに渡された地図に従い、目立たないようにフードを被ると路地裏を海岸線まで移動していった。


 途中、カラス共に目を付けられないように警戒しながらの移動となったので、予定していた海岸線まで辿り着くのに随分時間がかかっていた。


 それでもトラブルに巻き込まれる事も無く予定地点に到達すると、早速シリルが携帯型ドライウォールを発動してノームの中に紛れ込んだ。


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