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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
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69 不穏分子

 

 フォンシェは、メモ書きにあった不穏分子共の拠点に向けて兵を進めていた。


 モステラのような未来が無い国に住んでいる連中など、ちょっと鼻薬を嗅がせて、アンスリウムへの移住をほのめかしてやればどんな高い地位に就いている者だって簡単に手駒になった。


 常日頃から準備を怠らない事がこの組織の中で自分の地位を維持、そして向上させるための心得なのだ。


 フォンシェは部隊に停止の合図を送った。


「諸君、これから指令から命令のあった任務を遂行する。捕縛対象を逃がさないため3手に分かれて目的の場所を包囲する。アントンは右、ホレスは左、私は正面からだ。行け」


 フォンシェの号令で2つの隊が速やかに移動していった。


 我々の誇りの象徴であるこの黒鎧は、とても洗練されていてかっこいいのだが、とても目立つのだ。


 そのため、出来るだけ目立たないように少人数で移動し、捕縛対象を取り逃がさないたように周辺を包囲するのだ。


 +++++


 私達は騙されたのではないかという疑念の目を向けたが、睨まれたギルドマスターは私達ではなく後ろの黒鎧を見てフードを取って顔を見せた。


 そして眉間に皺を寄せると、やや非難する口調になっていた。


「何馬鹿な事をしているの?」


 それは一体誰に向かって言ったのかと思っていると、後ろの黒鎧が反応した。


 先頭の黒鎧がフルフェイスの兜を開けて顔を見せた。


「何だ、ギルマスか。どいうだい、連中の黒鎧とそっくりだろう?」


 私は相手の言葉を聞いて彼らの鎧をじっとみつめると、所々違和感があるのが分かった。


 そしてギルドマスターを見ると、なんだか難しい顔で眉間を揉んでいた。


「何がしたいのか全く分からないけど、とりあえず外に居るのは拙いわ。中で話しましょう」

「分かった」


 どうやら黒い鎧を着ている連中が、カラス共が言う不穏分子で間違いなさそうだった。


 黒鎧達は、全員が私達の前に集合すると、全員で10人になった。


「それじゃあ、俺達の拠点に案内するから付いてきてくれ」


 男達の1人がそう言うと、袋小路にあったちょっとくたびれた建物の中に入って行ったので、私達もそれに倣った。


 建物内に明かりは無く、隙間から入って来る陽光でかろうじて自分達が歩いているのが廊下だと分かる程度だった。


 そして男達は奥に扉を開け中に入って行くと足音が変わったので、この先が階段だと分かった。


 階段は下向きだったので、拠点は地下にあるようだ。


 到着したそこは壁も地面も土という場所で、天井は崩落を支えるため何本もの木の梁で補強されていた。


 そして中央には急ごしらえの長テーブルと丸椅子が10脚ほど置かれていた。


 黒鎧が私達にその丸椅子に座るように手で合図を送ってきた。


 先にギルドマスターが1つの丸椅子に座ったので、私達はその隣に座って行った。


 その間、部屋から消えていた黒鎧達は、装備を外していたらしく、戻って来たら普通の平民服を着ていた。


 そして空いている丸椅子に座ると、直ぐにギルマスに話しかけていた。


「ギルマス、この3人は?」

「貴方達の活動に協力してくれる人達よ。小さい女の子がアリソンさん、男性がシリルさんそして女性はカーリーさんね」

「ああ、俺はオラシオだ。よろしく」


 私達が挨拶をすると、ギルドマスターが話を続けた。


「彼女達は、マーメイド族のカンカさんを救出したいと考えているの」

「えっ、この3人が?」


 この声には疑念が含まれていた。


 ギルドマスターは私達がギルドで説明した内容をここで話していた。


 それを聞いていたオラシオ達はじっと話を聞いていたが、ギルドマスターが話し終えると直ぐに私に声をかけてきた。


「モステラでまた漁業が出来るようになるのか?」


 私が肯定の意味を込めて頷いた。


「絶対とは言えませんが、マーメイド族のカンカさんに協力してもらえたら希望はあると思います。そのためには彼女を救出してこちらの誠意を見せ、協力してもらう必要があります」


 私の答えを聞いたオラシオ達からどよめきが起こった。


 するとギルドマスターがそっと耳打ちしてきた。


「この人達は元漁師なのよ」


 ああ、そう言う事ね。


「それで、俺達は何をすればいいんだ?」


 オラシオが期待を込めた瞳で私に話しかけてきた。


「カラス・・・失礼、強制懲罰部隊の拠点の見取り図が必要です。それとカンカさんの居場所を教えてください」


 私が言い直しをすると、オラシオはこちらを見てにやりと笑みを浮かべた。


「へえ、連中はカラスというのか。確かに黒い鎧を自慢しているような連中だからお似合いだな」


 オラシオが仲間に合図すると、指示された別の男が丸めた紙を持って来た。


 テーブルの上に広げられたそれは、拠点の大まかな見取り図だった。


「俺達の仲間が拠点を見張ったり、出入りしている商人達から聞き出して図面にしたんだ」


 見取り図では、拠点は高くて厚い壁が周囲を取り囲み、唯一開いているのは海側にある水路だけのようだった。


 構造物は、正面玄関の先に横長の建物があり、その両翼に入口に正面を向けた建物があり、正面に押し寄せた侵入者を3方面から同時攻撃できるような形になっていた。


 左右の建物の裏手には厩舎や倉庫群があり、正面建物の裏手には海に向かってかなり長い建物があった。


 その建物の先端には水路があり、途中に水路を遮る閘門と閘門を守る櫓があった。


 見取り図を見る私に、オラシオは指で閘門を示した。


「連中は、捕まえたマーメイド族を囮にして、マーメイド達をおびき寄せここで殲滅するつもりのようだ」


 そんな事をされたら、もうマーメイド族から協力を得る事は出来ないだろう。


 絶対に、連中の計画が実行される前にカンカさんを助け出さないと。


「そしてこの細長い建物の地下牢に捕らえたマーメイドが居るらしい。だが、救出したくても周囲は高い壁で取り囲まれていて侵入は難しいのだ」


 私は見取り図を見て、救出したカンカさんを解放する事も考えると、侵入経路は海側の水路になるだろう。


 アンスリウムで水の中で呼吸できるマジック・アイテムを購入しておいてよかったわ。


 するとシリルが話しかけてきた。


「どうするんだ?」

「水路から侵入するしかないわね」

「だが閘門のところに見張り櫓があるぞ。そこで見つかったら侵入は無理なんじゃないか?」

「私が櫓の見張りを眠らせましょうか?」


 見張りを眠らせたとしても、交代の間隔とかが分かっていなければカンカさんを助けて戻ってくるまでに発見されてしまう可能性がありそうね。


「交代時間が分からないと、見つかる可能性がありますね」


 私がそう言うとオラシオが口を開いた。


「それなら俺達が正門付近で騒いで陽動してやろう。そうすれば交代要員を櫓に回せなくなるだろう?」

「それは良い考えですね。一緒に戦いましょう」


 私が答えるより先にシリルが賛成し、オラシオ達がやる気になってしまったので、もう私が口出しできる状況ではなくなっていた。


 目に見えない手で背中を押されては、もうこの作戦で行くしかないわね。


 そんな時、突然階段をバタバタ駆け降りる音と、乱暴に扉を開ける音が聞こえてきた。


 +++++


 フォンシェは途中で別れたアントン隊とホレス隊から準備完了の合図が送られてきた。


 よし、完全に目標物の包囲が完了した。


 フォンシェは自分が率いる本体を見回してから、大きく頷いた。


「よし、敵の逃げ道は塞いだ。我々はこれから突撃して全員を捕縛するぞ。なお、抵抗する者は容赦なく排除せよ」

「「「はっ」」」


 フォンシェとその捕縛部隊は、敵に見つからないように静かに建物に近づいて行った。


 今の所、見張りの姿は見えなかったが、見つかり次第一気に突入するつもりだった。


 だが、見張りの姿は何処にもなく、緊急を知らせる声も聞こえないまま、目標物の扉まで到達していた。


 一瞬違和感を覚えたが、連中が素人集団だった事を思い出した。


 まったく、これだからド素人は、見張りの意味すら理解していないらしい。


 そして扉を蹴破ると一気に雪崩れ込んだ。


「全員武器を捨てろ。抵抗したら容赦しないぞ」


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