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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
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68 獅子身中の虫

 

「連中の拠点に潜入して囚われのお姫様を解放出来ると思っているわね? 貴女、いったい何者なの?」


 私は自分の事をじっと見つめているギルドマスターの視線に晒されながら左右に視線を移すと、シリルとカーリーもじっとこちらを見つめ返していた。


 皆私の正体に興味があるみたいだけど、どこから情報が洩れるか分からないので、ここは慎重にいかないと。


「私はカルテアまで巡行しているアンスリウム大神殿所属の神官で、こちらの問題を解決してほしいとダルチェの神殿長から頼まれました」


 私がそう言うと途端にギルドマスターの目が厳しい物に変った。


「まさか敵だったなんて」


 ギルドマスターはそう言うと席を立ち、そのまま部屋を出て行こうとした。


「あ、待ってください。確かに私はアマハヴァーラ教の神官ですが、神官になったのもやむを得ない事情があっただけで、進んで神官になった訳では無いのです」


 直ぐにバレるだろうと、表の身分を公表したが案の定ギルドマスターは敵意に満ちた目で睨んできた。


 どうやって誤解を解こうと焦りだしたところで、シリルが援護射撃をしてくれた。


「ああ、確かにこの嬢ちゃんはアマハヴァーラ教の神官だが、俺はこの耳でこの嬢ちゃんが影でアマハヴァーラ神を貶める言葉を吐いたのを聞いているぞ」


 ギルドマスターの顔に一瞬、困惑の表情が浮かんだのを見て畳みかける事にした。


「あの黒鎧、強制懲罰部隊には家族を殺された恨みがあるのです。私としては計画をぶち壊して、連中が悔しがる姿を見たいという欲求があるのです」


 だが、ギルドマスターは私がアマハヴァーラ教の神官であることがどうしても許せないようだった。


 ここで私がリドル一族だといっても、人間達はアマハヴァーラ教の長年の布教せいで神獣がこの世界の環境を整えているという事実を知らないので、本当の事を言っても信じてもらえないだろう。


 では、どうやってギルドマスターに信じてもらえるだろうかと考えていると、シリルが再び援護射撃をしてくれた。


「確かに、信じられないだろうとは俺でも思う。だが、俺達はバキラでの環境をどうにかしたいと思い唯一環境が整っているアンスリウムに情報収集に行ったんだ。そこで見つけたのがこの神官様だ。そしてこの神官様がユッカに行った途端、遭難率が高い迷いの森には王都まで続く道が現れ、そしてユッカの環境が元に戻ったんだ。次にこの神官様がモステラに行くと、今度はユッカの王都バシュラールからモステラの国境まで密林の中にまっすぐ伸びる道が現れたんだ。こんな偶然があると思うか? それにこの神官様に協力すればこの地の環境も元に戻る可能性があるとは思わないのか?」


 ギルドマスターは、シリルが言った言葉をじっと考えていたが、何かに思い当たったのか驚いたように目を見開いた。


「まさか貴女、敵の懐の中に入って内側から崩壊させようとしているの?」


 その言い方だと、私が組織の中に潜りこんだ害虫だとも聞こえるけど、外の人達には身の危険を冒して潜入した勇気の人に見えるのね。


 都合よく誤解してくれたので、ここは否定せずじっと見つめ返すとギルドマスターはそれを同意ととらえたようだ。


「貴女、命を懸けた戦いをしていたのね。微力だけど私も協力するわ」


 ま、まあ、カラスに私の正体がバレたら命の危険に関わるので間違いではないわね。


「それじゃあ、早速行ってみましょうか」


 ギルドマスターはそう言うとソファからゆっくりと立ち上がった。


「えっ、行くって何処に?」

「何を言っているの、アマハヴァーラ教に敵対している人達のところよ」


 +++++


 アマハヴァーラ教強制懲罰部隊のロエル拠点で、指揮官のドン・ブラウドフットは、ダルチェの留守役エリアス・モロからの変な通信文を読んでいた。


 エリアスのやつ、なんだ、これは?


 意味が全く分からないじゃないか。


 唯一分かるのが緑髪に緑眼だかの女がロエルにやって来ると言うことろだけで、それ以外は外見も年齢も変だし、相手が神官なのか平民なのかもさっぱり分からなかった。


 それにそいつが我々の計画の邪魔になるのかならないのか、さっぱり分からない言い回しをしやがって。


 全く、こんな不確かな連絡をしてくるとは、一度活を入れてやる必要があるな。


 今は全力を持って人語を話す魚共を絶滅させるための罠を作っている最中なのだ。


 そんな時に、こんな不確かで些細な事に人手を割けと?


 そんな時、ドンの部屋に部下のフォンシェ・アグアージョが入って来た。


「指令、どうしたのです? そんな難しい顔をして」

「ん、ああ、留守役のエリアスがおかしなことを言ってきたんだ」


 そう言って送られてきた通信文をフォンシェに渡した。


 それを読んだフォンシェが、ちょっと考えてから口を開いた。


「指令、何が言いたいのかさっぱり分かりませんが、この通信文に載っている緑髪の女っていうのを商業ギルドで見ましたよ」

「そいつは我々の計画に悪影響を与えそうな奴だったか?」

「見た感じ、成人したばかりの女の子にしか見えませんでしたが?」


 ドンは計画に影響を与える可能性はゼロだろうと結論付けた。


 そしてこの通信文を無視しようとしたところで、考え直した。


 今までほんの些細な事で計画が破綻した事があったのを思い出したのだ。


 そうだ。何事も慎重に進めなければ、とんでもない事で足元をすくわれる事もあるのだ。


「よし、その小娘を捕縛してこい」

「え、ただの小娘ですよ?」


 フォンシェの顔には、小娘に怯えるなんて、なんて小心者なんだと書いてあるようだった。


 だが、ドンが組織内でここまで出世できたのは、自分が慎重な男だったからだと知っていたので、どんな些細な事でも見逃すつもりは無かった。


「いいから捕まえてこい。そいつが大人しく捕まれば、害が無い小娘だと分かるだろう」

「捕縛に抵抗したら?」

「抵抗するという事は、我々に対して含む所があるのだろう。構わないからその場で殺してしまえ」

「分かりました。それで無抵抗で捕まったら、その場で解放するのですか?」


 フォンシェの顔に一瞬軽蔑の色が見えたので、ドンは怒鳴りつけた。


「馬鹿野郎、そんな事をしたら我々が誤認逮捕したと思われるだろう。こちらの作戦が終わるまで牢の中に放り込んでおくんだよ。理解したのならさっさと行ってこい」

「は、分かりました」


 ドンは、部下が無能揃いだったことに頭を抱えた。


 まったく、あいつ等の油断で俺の作戦が瓦解したらどうしてくれようか。


 +++++


 アマハヴァーラ教の強制懲罰部隊では上官の命令は絶対だった。


 捕縛しろと命令が下りたのなら、絶対に捕縛しなければならないのだ。


 フォンシェは、警備部隊の各隊から数名ずつ人員を引き抜き捕縛隊を編成していった。


 目の前に集まった黒鎧の精鋭達は、実の頼もしい兵士に見えた。


「我々はこれから緑髪の少女を捕縛に行く」


 それを聞いた隊員達からは不満そうなうめき声が聞こえてきた。


 フォンシェはそれを手で制した。


「皆の気持ちはよく分る。だが、これは命令なのだ。まさかとは思うが、小娘一人捕縛出来ないなんて事はないよな?」


 全員が黙ったところで、部下の1人がそっとメモを持って来た。


 それは商業ギルドからで、緑髪の少女に関するものだった。


 ふふふ、俺から逃げられると思うなよ。


「よし、では出発だ。なに簡単な仕事だ、直ぐに済むだろう」


 フォンシェ率いる捕縛部隊はしっかりした足取りで行動を開始した。


 +++++


 私達は目立たない灰色のフードを被りローブで体を隠した格好で、ロエルの町の細い裏路地を移動していた。


 先頭を案内役として歩いているのは、身バレしないように灰色のフードを被っている商業ギルドマスターのアロンドラ・ベルティさんだ。


 私達は、ギルドマスターに先導されて反乱分子の拠点と言われる場所に向かっていた。


 やがてギルドマスターが路地を曲がると、そこは袋小路になっていた。


 そこでギルドマスターが立ち止まり、こちらを振り返った。


 すると正面の建物の窓、左右の建物の廊下から黒い鎧を着た男達が現れた。


 そして今通って来た路地からも黒い鎧を着た男達が現れた。


「お前らは包囲されている。大人しくしろ」


 まさか、ギルドマスターが裏切ったの?


 私達は袋小路でカラス共に包囲されていた。


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