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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
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65 旅の同行者

 

「もう、いいかの。そろそろ飽きてきたんじゃが」


 私が態とあくびをしながらそう言うと、モロと呼ばれた男は渋い顔をしながら肩をすくめた。


「ああ、勝手に出て行って勝手に野垂れ死んでしまえ」


 そう言いうと、さっさと行けとばかりに手を振っていた。


 私が部屋から出て門の前に来ると、そこには既に尋問を終えたシリルとカーリーが待っていた。


 2人は私の姿を認めるとほっとした顔になった。


「母さん、大丈夫だったか?」


 シリルは私達が親子という設定をわざとらしく守っていた。


 まだ周りにはカラスの監視の目があることから、私もその設定を守ってシリルの手を握ってお互いの無事を喜ぶ姿を見せてやった。


「お前達も無事だったようで何よりじゃ」


 手を握られたシリルは一瞬戸惑ったようだが、そっと耳元に囁いた。


「さっさと出てしまおう」


 +++++


 エリアスは東門からノームの中に消えていく3人の後ろ姿をじっと見つめていた。


 自分の感に従って取り調べてみたが、あの緑髪のババアは変装した神官ではなく、本当の婆さんだったのだ。


 くそっ、俺の感もさび付いたか。


 3人がノームの中に消えると、エリアスは建物に中に戻って来た。


 そこには先ほど呼びつけた下級神官見習いが待っていた。


「モロ様、御用はこれで終わりでしょうか?」

「ああ、助かったよ」

「では、失礼します」


 そして見習いが帰ろうとしたところで立ち止まった。


「そう言えばあのお祖母ちゃん、見たことも無いとっても綺麗で大きな黄色の石と緑色の石を付けたブレスレットをしていましたよ」


 うん、あの婆さん、そんな裕福そうな感じじゃなかったぞ。


 どちらかというと貧しい平民だったような。


 まさか、追いかけるか?


 いや、人手不足の状況で追っ手を出すのは難しいか。


 仕方がない、ロエルにいる上司に連絡だけ入れておくか。


 あれ、そういえば婆さんの名前を聞いていなかったような。


 これは拙いかもしれない。


 エリアスは自分が上司にこっぴどく叱られる姿を思い浮かべて、背中に嫌な汗が流れていた。


 そのため上司への報告は自分の失態を隠すため、何重にもオブラートに包んでしまったので、受け取る側も首を傾げる物になっていた。


 +++++


 東門を出ると直ぐにシリルが声をかけてきた。


「神官様、俺達のドライウォールに入って行くか?」


 ここはまだ東門の傍なのでここで口論する訳にもいかず、私が肯定の意味を込めて頷いた。


 私が頷いたのを確認すると、シリルは懐から拳大の何かを取り出した。


「それじゃあ起動するぜ」


 ドライウォールが起動するとそれまで白い靄に覆われていた場所にふうっと透明な空間が自分達の周りに出来上がった。


 へえ、こんな感じなのね。 


 私は携帯型ドライウォールというマジック・アイテムを始めて見たので、思わずシリルの手元をじっと見つめていた。


 それに不信を抱いたシリルが尋ねてきた。


「神官様、まるで始めて見たような顔をしているぞ? ユッカからここまでどうやって来たんだ?」


 それはまだ話すわけにはいかないわね。


「そんな事より、私は神殿の用事でロエルまで行くのですが、貴方達も付いてくるつもりですか?」

「ええ、そのつもりですよ」


 やっぱり付いてくるのね。


「それじゃあ、時間が惜しいから早速向かいましょう」


 王都を出て、シリルが持つ携帯型ドライウォールの中に入った私は、危険感知を発動して周囲の状況を確認した。


 周囲には魔魚を示す赤い輝点が沢山現れ、前途多難が状況がうかがえた。


 ガイア様の神域には魔魚は殆ど反応しなかったけど、この携帯型ドライウォールはどうなのかと観察していると、遠方の輝点は反応しないが近くにある輝点は近寄って来る事があった。


 そしてある程度接近すると、ドライウォールの中に私達が居ることを感知したらしく凄い勢いで襲い掛かって来た。


「皆さん、魔魚が来ますよ」


 私が腕を伸ばしてその方向を指し示すと、直ぐにシリルが腰の剣を抜いた。



 シリルは此処まで辿り着いただけあって中々の腕前だった。


 そしてカーリーも優秀な魔法使いらしくドライウォールを突破してきた魔魚に次々と魔法弾を撃っていった。


「ドライウォールの有効範囲が狭いから魔魚に感知されているようです。もっと広げられないのですか?」

「そんな事をしたら魔石が持たない」


 成程、有効範囲を広げるにはエネルギーが必要になり、持続時間に影響するということなのね。


「襲撃されるのが意外そうだが、神官様はどうやってノームの中を渡って来たんです?」


 あ、これはバレるのも時間の問題かしら?


 まあ、その時はその時よね。


 それよりも今は目の前の事に集中しましょう。


「そこ、魔魚が来ますよ」


 私はそう言いながらも杖を構えると、突進してくる魔魚に向けて神力弾を撃ち込んだ。



 そして魔魚の襲撃を撃退して一息ついていた時、シリルが声をかけてきた。


「先ほどから神官様が杖を水平に構えると、襲って来る魔魚が爆散するような気がするのですが?」

「ええ、魔法弾を撃っていますので当然ですね」

「へえ、攻撃が見えないのですが?」

「ええ、私の魔法弾はそういう性質なんです」


 シリルは納得していない顔をしていたが、それ以上は聞いてこなかった。


 王都から大分離れたところで、野営の準備をすることになった。


「神官様が手ぶらなのは、老婆として検問所を突破するための仕方がない事だったのですか?」


 今までは神獣様との旅だったので、ガイア様の保管してもらっていた食料を取り出して食べるだけだったが、今回は旅の同行者がいるのでそうもいかなかった。


 ロエルまで手ぶらという訳にもいかないから、もうガイア様の分身体を見せるしかないわね。


「私は運搬用のゴーレムを持っているので、そこに保管しています」

「へえ、で、それは何処に居るのです?」


 シリルは半ば呆れたような表情をしているが、カーリーの方は興味を持ったかのような目で見つめてきた。


 食事や寝具を2人甘える訳にはいかないし、仕方がないのでガイア様を見せてしまう事にした。


 私は右目を隠すためゴーグルをつけてから、腕のブレスレットに嵌められている神黄石に触れた。


 目の前にガイア様の分身体が現れると、2人はその姿を見て「あっ」と声を上げた。


「この馬は、ナッシュの郊外で見たぞ」

「ええ、それと、神官様の魔力があの時と同じように跳ね上がりましたよ」


 あれ、いろいろバレたような気がするけど、これは仕方が無かったと諦めよう。


 ガイア様は目の前に部外者が居る事に不満そうな顔をしていた。


「アリソンよ、こいつらは何だ?」

「「喋ったぁ」」


 2人が同時に声を上げた。


 もう、色々バレたけど開き直る事にした。


「ガイア様、野営をしますので食事と寝具を出してください」


 2人が凝視している中、ガイア様が口を開くとそこから1食分の食料と野営道具が出てきた。


 それに興奮した声で応じたのはカーリーだった。


「神官様、これ凄いですね。こんなマジック・アイテム見た事がありません。ひょっとして神殿ではこれが常識なのですか?」


 私はカーリーのそこ言葉尻を捕らえることにした。


「これは危険な巡行をする神官用に神殿が極秘に用意したマジック・アイテムなのです。ですから、細かい説明は出来ないのです。ご理解いただけますよね?」

「これは国家機密なのか?」

「はい、そうです」


 ごめんなさいね。こうでも言わないと絶対に色々聞いてくるだろうから、ボロを出さないためにもこう言わざるを得なかったんです。


 流石に国家機密だと言われたら、これ以上質問してくることは無いわよね。


 シリルが造った簡易竈で火を起こし2人が食事を作っている間、私はガイア様が出してくれた作り置きの料理を食べていた。


「神官様、その国家機密は保管している物を時間停止できるのですね」

「ええ、特別製ですから」


 仕組みは分かりませんが、神獣様のお力ならこれくらい簡単に出来るのでしょうね。


 食事を終えると、野営にはつきものの交代で見張りという作業があった。


 今まではガイア様が周囲を警戒してくれていたのでそんな心配はなかったのだが、ここは私も手伝う事にした。


 そして私の順番が回って来ると、2人が眠っているのを確かめてからグロウ様を呼び出した。


「アリーちゃん、何か用かい?」

「はい、すみませんが、私を元の姿に戻していただけますか?」

「うむ、分かった」


 グロウ様の分身体の腕が開くとそこから以前浴びた成長光線とはちょっと色合いが違う光線が降り注いだ。


 するとシワシワだった私の肌がみるみるうちに10代にふさわしいつやつやな肌に戻っていた。


「アリーちゃん、ちゃんと戻したぞ」

「ありがとうございます」


 最後に手鏡で自分の顔をみると、見慣れた自分の顔があった。



 朝、起きてきた2人は私が10代の姿に戻っていたことから、また目を見開いて驚いていた。


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