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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
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62 新たな決意と再会

 

 王都ダルチェの神殿内で港湾都市ロエルで作戦実行中の隊長ドン・ブラウドフットに命じられて連絡役を務めているエリアス・モロは、神殿にアンスリウムから神官がやって来たという情報を入手した。


 隊長は作戦実行中に発生する些細な問題も嫌う性格なので、その下で働く者としてはこの些細な出来事が作戦に影響しないように対処しなければならなかった。


 そこで早速アンスリウムから来たと言う神官に関する情報を集めようとしたが、意外と神殿長周囲の口が堅く訪問の目的が分からなかった。


 だが、その神官が緑髪の女で、今夜は神殿内に泊まる事は分かった。


 それなら捕まえて口を割らせればいいのだ。


 なに、相手はただの下級神官だ。


 問題になったとしても、その頃にはこちらの作戦は完了している事だろう。


 エリアスとっては、アンスリウム大神殿に睨まれるよりも直属の上司であるドン・ブラウドフットの機嫌を損なう方が恐ろしいのだ。


 +++++


 神官服を脱ぎ、眠る準備を整えたアリソンは、神殿長が用意してくれた部屋で備え付けのベッドに横になった。


 ぼんやりと灯る明かりの中、昼間神殿長に言われたちょっとしたお願いについて考えていた。


 それは沿岸都市ロエルで、拘束されているマーメイドの解放をあのカラス共に交渉せよというものだった。


 何がちょっとしたお願いよ。


 カラスの中には私の事をリドル一族だと判別できる人間が居るのよ。


 正体がバレた途端、私は殺されてしまうわ。


 まあ、確かにナッシュの町でも必要な路銀を受け取るため神殿長から会計処理の名目として孤児院での炊き出しを命じられたから、今回のお願いもそれに準拠したちょっとした会計処理の都合なのだろうとは理解できる。


 でも、私にとっては死ねと言われたのと同義なのよ。


 もう、いっその事、巡行を止めてしまおうかしら?


 グロウ様の神域にリレークリスタルを設置したから、もうアンスリウムの大神殿に神官として戻る必要は無くなったので、こんな巡行なんか放り投げてエルフの里に定住してしまえば、ガイア様とグロウ様のお世話は出来るのよね。


 そうすればもうカラスの恐怖に怯える事もないし、お祖母ちゃんの元にも戻れるわ。


 でも、そうするとモステラのモーフ様や他の地域を担当している神獣様もつらい思いをしているのを無視することになってしまわないかしら?


 それに今回のちょっとしたお願いをぶっちすると、顔も知らないけど母親の事も聞けないわね。


 まさか、大神官ベネディクト・アッシュベリーがカルテア巡行した時の神殿長が、既に引退しているなんて。


 今回のお願いを遂行しないと、引退した前神殿長の引退先住所を教えてもらえないのだ。


 母親がリドル一族を裏切ったのかどうかを調べるのも、すんなりいかないわね。


 そんな事を考えていたが、そこでふっと腕に付けているブレスレットが視界に入った。


 ああ、それでも私はリドル一族なのよね。


 モーフ様が困っているのなら、お傍に行ってお世話をしないと。


 私は迷いが無くなった事に満足すると、いつの間にか眠っていた。


 目が覚めると既に窓の外は明るくなっていた。


 アリソンがベッドから起き上がり朝の支度を整えていると、扉前の床に手紙があった。


 なんだろうと手紙を手に取り、後ろを確かめたが差出人の名前は無かった。


 封を開けて確かめろって事ね。


 全く面倒だけど仕方が無いと、封を開けて中の手紙を広げて戦慄が走った。


 それはカラスからの呼び出し状だったのだ。


 どうして連中に私の事がバレたのかしら?


 でも、カラスの中には私がリドル一族だと判別できる人間も居るのだ。


 こんな所で私の正体がバレる訳にはいかないのよ。


 う~ん、どうしようか。


 そうだわ。


 いずれにしても神殿長からの命令でロエルのカラス共の所に行くのだから、此処ではなくロエルの連中の拠点に会いに行くという事で良いわよね。


 まあ、本当にカラスの元に行くとは限らないけど。


 そうして私は一度着た神官服を脱ぐと、レアムバルの町で購入した平民服に着替えると、目立つ髪の色を隠すためローブを羽織り全身を隠すことにした。


 そして誰にも何も言わず神殿を出ると、ロエルに向かう事にした。


 急いで向かったはずなのに、既に外に出る城門の前には黒い鎧を着た強制懲罰部隊の連中が立っていた。


 え、どうして?


 いや、まさかこんなに早く私を捕まえようなんて考えないわよね。


 きっと、他の誰かを探しているのよ。


 私はそう思って城門の方に向かおうとすると、外から入って来た人達の話声が聞こえてきた。


「あれ、何だったんだ?」

「さあ、さっぱり分からないが、連中の目的は緑髪の女らしいぞ」


 ちょっと、やっぱり私を探しているじゃない。


 私はそっと先ほどの商人らしき人物達の中に紛れ込むと、城門前のカラス達から見えなくなるまで付いて行ってから、建物の影に身を隠した。


「神官様、何かお困りですか?」


 私がどうやって城門を抜け出そうか考えながら様子を窺っていると、突然後ろから声をかけられて飛び上がりそうになった。


 そして何とか平静を保って振り返ると、そこには見覚えのある男女のペアが立っていた。


「貴方達は」

「やあ、やっと見つけましたよ、神官様」

「本当に緑髪に緑眼をしています」


 目の前にはアンスリウムで出会ったシリルとカーリーという男女だった。


「お2人は、どうしてモステラに? それにどうして私の外見を知っているのですか?」


 すると隣のカーリーが声をかけてきた。


「あの神官様、もしよろしければですが」


 カーリーはそこまで行ってからシリルの顔を見て、相手が頷いたのを確かめてから続きを話した。


「私達まだ朝食前なので、何処かで食事をしながら続きを話しませんか?」


 まあ、こんな話を立ち話でするのもなんだし私も朝食を摂っていないので、その提案は魅力的だった。


「ええ、分かりました」


 私は裏路地の目立たない小さな食堂に入ると、シリルとカーリーの影に隠れるように端の席に座った。


 給仕係が持って来たメニュー表には、レアムバルと同じような魔魚を食材にした料理の名前が並んでいた。


 メニュー表を見たシリルも眉を顰めていたが、こんな環境では食べられるだけありがたいので、我儘を言える状況では無かった。


 私が黙って槍魚の揚げ物を頼むと、2人とも気が進まないまま槍魚のステーキを頼んでいた。



「はい、お待たせ」


 そう言って給仕係が注文した朝食をテーブルの上に並べると、早速頂く事にした。


 味はともかく量だけはたっぷりあるので、全て平らげる頃には食べ過ぎたと思えるほどだった。



 私は食事をしながら、アンスリウムで会った時と比べ髪や瞳の色が変わっているのにどうして分かったのか聞いてみると、2人はエタンとバルバラの夫婦に偶然出会って私の外見を聞いたのだと教えてくれた。


 そして恥ずかしい事に私が「森の神様」と誤解されている事も知らされた。


 今は神緑石に戻ってもらっているグロウ様に知られたら、私が名前を騙っているように思われてしまうわね。



 食事を終えて「ふぅ」と一息つくと、先に食事を終えていたシリルが話しかけてきた。


「それで、神官様はどうして追われているのですか?」


 シリルの顔を見ると、ふざけている様子はなく私を心配しているように見えた。


「知っていたのですね」

「ええ、王都にやって来た時、門で緑髪の若い女を見なかったかと聞かれたのです。私達はエタン夫妻から話を聞いていたので、その外見で直ぐ神官様だと分かったのです。それで助けが必要かと思って探していたのですよ。いやあ、見つける事が出来て本当に良かったですよ。これもアマハヴァーラ神の思し召しですかねぇ」


 そう言って急ににこやかな表情になり頭をかくカーリーは、途端に軽い男に見えた。


 それを見ていたカーリーが、慌ててフォローしてきた。


「神官様を必死に探していたのは本当ですよ。それに神官様も1人であからさまに怪しげな行動をしていましたから、あのままだったら連中に直ぐに目を付けられましたよ」


 えっ、出来るだけさりげない感じに振舞っていたはずなのに、悪目立ちしていたの?


 私が考え込んでいたところで、シリルが声をかけてきた。


「大丈夫ですよ。神官様の演技がいかに大根だろうと、我々がフォローすれば万事問題ないでしょう」


 それを聞いた私がジト目を向けると、シリルが慌てだした。


「待ってください。神官様に力添えをしたいと言うのは本心ですよ。何か困っているのでしたら是非とも協力させてください」


 私は偶然馬車や店で居合わせてちょっと話しただけの相手がどうして助けてくれるのか分からなかった。


「どうしてそこまでしてくれるのですか?」


 私が真面目に聞いたのに、この男はとんでもない事を口走った。


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