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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
61/61

61 シーロの思惑

 

 私達は視界の悪いノームの中を地面にうっすらと映る道を頼りに歩いて行くと、赤い輝点ばかりだった危険感知に白い反応が現れた。


 私達は視界の悪いノームの中を地面にうっすらと映る道を頼りに歩いて行くと、赤い輝点ばかりだった危険感知に白い反応が現れた。


 携帯型ドライウォールを使って移動している人達かと思ったが、白い輝点と赤い輝点の間には何か見えない壁でもあるのか、お互いの輝点が接近する事は無いようだった。


 これは、もしかして。


「ガイア様、やっとモステラの王都に辿り着いたようです」


 私がそう言うと、ガイア様が振り返った。


「王都では何かするのか?」

「一応私はカルテアへの巡行の最中ですので、神殿に行って到着連絡をする必要があります」


 神殿長に会えば大神官がカルテア巡行をした時の事を聞けるかもしれない。


 そうなれば、母親がリドル一族を裏切った証拠も・・・。


「なんだ、暗い顔をして?」


 はっとなって顔を上げると、そこには私の事を心配するガイア様の顔があった。


「いえ、何でもありません」

「そうか。だが、ユッカの神殿では歓迎されなかったのだろう。この地でも同じなのではないか?」

「そうだとしても、後で大神殿で何か言われた時のために反証出来る証拠は必要でしょう」

「ふむ、確かにそうだな」


 それに大神殿の仕事でカルテアまで行くんだから、最低限の金銭的な援助はしてもらわないとね。


 そして空気の壁を超えると、それまで白い靄で伸ばした手の先も見えなかった状態から急に視界が開けた。


 目をしばたたいて周囲を見ると、立派な城壁と門、そしてその隣には門番の詰め所があった。


 そして私が入って来たのに気が付いたのか、兜をかぶりながら慌てて兵士がやってきた。


「神官様、ご苦労様です」

「すみません。ここは王都ダルチェですか?」

「え? ひょっとして王都は初めてですか?」


 門番は私の一言で、こちらに疑いの目を向けてきた。


 なんとなくだが、偽神官だと思われているようね。


「はい、私はアンスリウム大神殿から来ましたので」

「ええっ、アンスリウム? それはまた遠路はるばるよくお越しくださいました」


 まあ、こんな環境の中、よっぽどの理由が無い限り、態々国外から訪問者が来ることも無いわよね。


 門番の顔が猜疑から興味に変ったので、ここは訪問者として質問してみてもいいわよね。


「あの、ダルチェのアマハヴァーラ教神殿の場所を知っていますか?」

「あ、ああ、この道をまっすぐ進むと白亜の建物がありますから、直ぐ分かりますよ」


 そう言った門番の顔は微妙な表情をしていた。


「そう、ありがとう」


 私が知らないところで、アマハヴァーラ教との間で何かあるのかもしれないわね。


 ここではあまり悪目立ちしない方が良さそうだわ。


 そしてその場から離れようとすると、門番が小声で質問してきた。


「ひょっとして神殿長が交代するのですか?」


 この門番は私が神殿の人事で来たと誤解しているのかしら?


「神殿内部の事は部外者には話せません」

「そうですか」


 門番の顔には明らかにガッカリした表情が張り付いていた。


 この町の神殿は権力闘争でもあるのかしら?



 モステラの王都ダルチェの町を歩いていると、ここには魔魚による脅威が薄いのか比較的平和な空気が流れていた。


 だが、そんな中でも町の人達の私を見る目には、冷たいものがあるようだった。


 歓迎は、されていないみたいね。


 レアムバルで教えてもらった事は本当のようだわ。


「ガイア様、急ぎますよ」

「うむ、分かった」


 幸か不幸かトラブルに巻き込まれる事も無く、門番に教えてもらった白亜の建物の前までやって来ていた。


 目の前に建っていた白亜の建物は、王都のどの建造物よりも大きくそして立派だった。


 これでもかってくらいに凄い存在感だった。


 あの門番が微妙な顔をしていた理由がようやく分かったわ。


 既にガイア様には神黄石に戻ってもらっていたので1人で門の前で立ち尽くしていると、慌てた様子で下級神官見習いがやって来た。


「ダルチェ神殿へようこそお越しくださいました」


 見習いは私を待たせた事で怒られるのではないかと怖がっていたので、私は怒っていない事を分からせるため笑顔を見せた。


「私はアンスリウム大神殿所属のアリソン下級神官です。神殿長への面会を希望します」

「分かりました。確認を取りますので、それまで神殿内でお待ち下さい」

「ええ、ありがとう」


 私は見習いに案内された部屋に入りそこにあったソファに座ると、ここまで案内してくれた見習いがお茶を用意してくれた。


「ありがとう」


 私がそう言うと、見習いはにっこり微笑んだ。


「それでは神殿長に報告してきますので、しばらくお待ちください」


 +++++


 ダルチェのアマハヴァーラ教神殿の神殿長室で政務を執り行っていたシーロ・ソルの元に慌てた様子で見習いがやって来た。


 その慌ただしい姿を見て、何か問題ごとでも起きたのかと頭を抱えたくなったが、それを顔に出す事は無かった。


「失礼します神殿長様」

「どうかしたのか?」

「はい、アンスリウム大神殿からお客様がやってきました」

「アンスリウム?」


 この危険な環境の中、態々アンスリウムから神官がやって来るなんて、一体何事なのだ?


 考えられるのは私の更迭だろうか?


 だが、目の前の見習いはシーロの心配をよそに、その呟きを聞いていたようだ。


「はい、アンスリウム大神殿所属のアリソン下級神官様だそうです」

「え、下級神官?」

「はいそうです」


 見習いは不思議そうに小首を傾げたが、やって来たのは下級神官なら私の更迭ではなさそうだ。


「分かった。下がってよいぞ」

「はい」


 見習いが部屋から出て行くと、シーロは補佐官のゴドフレド・ジャマスを呼んだ。


「お呼びですか、神殿長?」

「ああ、実はアンスリウム大神殿から下級神官が面会を求めてやって来たのだ」

「え? 下級神官、それでは人事の話ではなさそうですね」

「ああ、私の更迭なら最低でも上級神官補佐が来るはずだ」

「では、何の話でしょうか?」


 ジャマスも訪問してきた目的が分からないようだ。


 だが、シーロはこれはチャンスだと考えていた。


「良かったなジャマス、これで我々の問題の1つが解消されそうだ」

「え、一体何の話ですか?」


 シーロは補佐官の満面の笑みを見せた。


 +++++


 神殿長への面会を待っていた私の元に神殿長の補佐官だという男がやって来た。


「お待たせしました。私はシーロ・ソル神殿長の補佐官ゴドフレド・ジャマス上級神官補佐です」

「私はアンスリウム大神殿所属のアリソン下級神官です」


 挨拶が終わると早速ジャマスに案内されて神殿長の部屋にやって来た。


 そこでは満面の笑みを浮かべた男が待っていた。


「やあ、アリソン下級神官、よくぞ参られた」

「はい、歓迎して頂き、感謝いたします」

「ささ、こちらにどうぞ」


 そして神殿長に案内されるままソファに座ると、目の前にシーロ・ソルと名乗った神殿長が座った。


「私はアンスリウム大神殿の意向でカルテアまで巡行する途上でダルチェの神殿に立ち寄りました」

「ほう、カルテアですか。それは大変な任務ですな」


 この方は此処までの道中の事を聞いてきませんね?


 確か今回のカルテア巡行では、道中の聞き取りをすることを対価に巡行費用を出してくれるのではないの?


 あまり熱量の無い返答に私は、この方はロドニー・センシブル派の方ではないのかと疑念が湧いてきた。


 そこでちょっと水を向けてみる事にした。


「そこでカルテアまでの巡行するための費用援助をお願いできませんか?」


 私がそう言うと、目の前の男はニヤリと笑った。


「分かりました。それでは1つお願いがあります」


 +++++


 女神官が出て行った後で、シーロの元に補佐官のジャマスが声をかけてきた。


「良かったのですか?」


 心配そうなジャマスの顔を見て、シーロは笑みを浮かべた。


「大丈夫だろう。我々の目の上のたんこぶである強制懲罰部隊の動きを抑制できなくとも、牽制くらいなら出来るだろう」

「アンスリウム大神殿と言っても、ただの下級神官ですよ? 連中も少しは気にするとは思いますが、行動を制限するとは思えませんが?」


 シーロはそんな事は百も承知だったが、駄目元でやってみる価値はあると思っていた。


「確かにそうかもしれないが、神殿側でも対応しているぞという、いわゆるやっている感を王家に見せつける事は出来るのではないか?」


 するとようやくジャマスにもシーロの思惑が理解できたようだった。


「ああ、確かにそうですね。流石は神殿長です。御見それしました」


 胃の痛い日々を送っていたシーロにとって、これは一服の清涼剤だった。


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