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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
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57 レアムバルの町3

 

 商業ギルドで目の前の2人からユッカの事情を聞かれた私は、グロウ様が元気になった事は言えないので、商業ギルドにも環境悪化の事をしっかりと言っておくことにした。


「皆さまにも言っておきますけど、環境が悪化すると魔物が発生するのです」

「え、それではモステラに魔魚が発生したのは、環境悪化のせいなのですか」

「ええ、そうです」


 2人には初耳だったようで、とても驚いていた。


「環境悪化とは、例えばどんな事が考えられますか?」


 ギルマスがそう聞いていたので、これはモーフ様への支援にもなるのでしっかりと教えておきましょう。


「そうですねぇ、例えば鉱山から出た廃液やら廃棄物をそこらへんに捨てるとか、黒石を大量に燃やすとか、木材を切り出してはげ山にするとか、ゴミの不法投棄とか色々ですね」


 私が例を挙げて行くと、思い当たるふしがあるのかギルマスの顔色が悪くなっていった。


 会話が止まったところで、受付嬢がギルマスに助言をした。


「こちらの神官様が、品不足になっている浮遊魚の毒に効果がある毒消し草を持ってきてくれました」

「え、そうなのか。実は浮遊魚の毒消しが不足していたのです。これはとても助かります」


 そうなのかは受付嬢に、その後は私に言ったようだ。


 これだけ感謝されるなら、この地域の情報を聞いても問題なさそうね。


「モステラ地方で、立ち入り禁止になっている場所とか神聖な場所とかってありませんか?」


 私の質問にギルマスも受付嬢も何か悩んでいるようだったが、やがて首を横にふった。


「特に国の方で立ち入りを制限している場所もありませんし、有名な観光地とかも無いと思います」

「そうですか」


 そう簡単には見つかりそうも無いか。


 そこでユッカではエルフ族がそう言った場所を知っていたことを思い出した。


「モステラに亜人は居ますか?」

「ええ、沿岸都市ロエルがマーメイド族と交流があったようです」


 ギルマスが過去形で教えてくれたが、どうも微妙な顔をしていた。


「交流があったとは、今は無いという事でしょうか?」

「ええ、まあ貴女なら言ってもいいでしょう。アマハヴァーラ教の武装集団が、ロエルの町と取引していたマーメイド族を襲って捕えてしまったのです」


 アマハヴァーラ教の武装集団? それって、まさか。


「それは黒い鎧を着た人達でしたか?」

「詳しくは知りませんが、そのせいでマーメイド族が持ってきてくれた海中草が手に入らなくなって、浮遊魚の毒消しが不足しているのです。本当に迷惑な連中ですよ」

「それはすみませんでした」


 彼らから見たら私もその迷惑な連中の仲間なので、一応謝罪をしておいた。


 でも、モステラに居るアマハヴァーラ教の武装集団については、調べておかないと拙いわね。


 神殿が雇った神殿騎士ならいいけど、アンスリウムの強制懲罰部隊だったら、私がリドル一族だとバレたら命を狙われてしまうわ。


「この町にはアマハヴァーラ教の神殿はあるのですか?」

「いえ、この町にはありません。あるのは王都ダルチェです」


 王都かぁ。ユッカでも王家にはあまりいい思い出がなかったので、できれば関わりたくないのよねぇ。


「それはこの町から道なりに進めば辿り着けますか?」

「ええ、道なりに進めば王都にいけます。途中、ノームに飲まれた廃墟の町がありますので、注意してください」


 私がカルテアまで巡行しているという事が、モステラの神殿に通知されているかどうかが問題ね。


 通知されていれば私は歓迎されてしかも路銀をもらえるが、通知されていなければユッカと同じ目に遭う可能性が高いのだ。


「それとマーメイド族と交流があったというロエルの町は、何処にあるのですか?」

「王都から海に向かって行った先です。もしかして行かれるのですか?」


 マーメイド族なら、もしかしたらモーフ様の神力だまりの場所を知っているかもしれないしね。


「ええ、行ってみようと思っていますが、何か問題ですか?」

「王都民はアマハヴァーラ教の神殿があるので表立って敵意は向けませんが、ロエルの町では事情が違います。マーメイド族の件もあって、アマハヴァーラ教の関係者を恨んでいますから何が起こるか分かりませんよ」


 成程、少なくとも神官服を着て行かない方が良いという事ですね。


 だけど、一応私はカルテアへの巡行中だから、命令どおり各地の神殿には到着報告をしなければいけないのよね。


 ユッカでは出来なかったからこの地ではちゃんと報告しておかないと、失敗だと思われてしまう。


「この町に古着を売っている店はありますか?」

「ええ、此処を出て通りを左に歩くとあります」

「ありがとうございます。それでは持ち込んだ魔石と甲羅草の買い取りをお願いします」

「分かりました」


 返事をしたのは受付嬢の方だった。


 再び受付嬢に案内されてカウンターの方に戻って来ると、持ち込み品の査定をしてくれた。


 商業ギルドのロビーを見回すと、商人らしい人もいたが、何故か筋骨隆々の男達が多かった。


「あのガタイの良い人達は何をしているのですか?」


 受付嬢が一瞬私の視線の先を見てから答えてくれた。


「ああ、あの方達は漁師です。昔は海で魚を取っていたんですが、今ではノームの中で魔魚を狩って持ち込んで来るのです」

「へえ、そうなのですね」

「生きていくには大変ですからね」

「それと、持ち込まれた魔魚肉はギルドに併設されている食堂でお召し上がりになれますよ。是非、味を確かめて行ってくださいね」


 私は受付嬢の顔を見た。


 そこには営業スマイルが張り付いていたが、そう言えばこの町に来るまできちんと調理された料理を食べていない事を思い出した。


 ひょっとしてこの受付嬢は私がユッカから来たことで調理された食事に飢えている事をさっしたようね。


「あ、査定が終わりました。魔石と毒消し草の買取代金は、アルメンダリス金貨2枚とカンデラリア銀貨5枚それとロンゴリア銅貨8枚です」

「ありがとう。ちなみにアンスリウムの硬貨との交換比率はどうなっていますか?」

「そうですねえ、大体1対1.5と言ったところですね。1は勿論アンスリウム硬貨ですよ」


 ユッカよりも交換比率は悪いということね。


「どうもありがとう。せっかくだから食堂を利用してみるわ」

「ええ、どうぞ楽しんで行ってくださいませ」



 ギルドに併設された食堂は、ギルドが取り扱っている商品の試食コーナーを兼ねているようね。


 そこには槍魚のステーキ、槍魚のフライ、槍魚の燻製、槍魚団子と色々調理方法はあるようだが、素材は全て槍魚だった。


 私がメニュー表を見て固まっていると、給仕の女性が笑いながら声をかけてきた。


「ノームが覆っている状況だと、他の町との交易も厳しいので仕方が無いのよ」


 確かに魔魚がうようよしている中を移動するのは、過酷なんてものじゃないわね。


「それじゃあ槍魚のステーキにするわ」

「はい、承りましたぁ」


 そしてテーブルに運ばれた料理は、木製の皿の上にかなりの存在感があった。


 まあ、この町を取り囲んでいた魔魚の数を見れば、かなりの量が取れそうよね。


 私が食事をしていると、ガタイの良い漁師がやって来た。


「神官様が、俺達の町を助けてくれたと聞いたぜ」

「この町に入るのに邪魔だったから討伐したのです。町を救ったと言うのは結果的にそうなっただけですよ」


 私がそう言うと、漁師は意外そうな顔をしていた。


「あんた、他の神官とは違うんだな」

「私はアンスリウム大神殿所属の神官です。貴方が言う他の神官とは誰の事を言っているのですか?」


 私がそう言うと、漁師はバツが悪そうに頭をかいた。


「悪い。モステラの神官は守銭奴のような連中ばかりなんだ」

「そうだったのですね」

「あんたはそんな連中とは違うらしい。恩人である神官様に俺が出来るのは忠告だけだ。神官様がモステラの他の町に行くのなら服装を変えた方がいいぜ」


 商業ギルドでも同じことを言われたので分かっていると伝えようと漁師の顔を見ると、そこには真剣な顔があった。


 ああ、この人は、私の事を心配してくれているのだという事が伝わって来た。


 私は漁師ににっこり微笑んだ。


「ありがとうございます。この町で古着でも買ってみようと思います」

「ああ、それなら俺が連れて行ってやるよ」



 漁師に案内してもらった古着店に行くと、また私の神官服を見て驚かれた。


「え、神官様が古着を着るのですか?」

「ええ、街中を歩くには神官服は悪いイメージを持たれてしまうと、親切な漁師さんに教えてもらったので」

「あ、ああ、確かにそうですね」


 私は動きやすいようにシャツとズボンをそれぞれ2組と、ローブを1着購入した。


「シャツ2枚、ズボン2枚それとローブでカンデラリア銀貨3枚、ロンゴリア銅貨4枚だよ」


 私は商業ギルドで換金してもらったモステラの硬貨を取り出した。


 私は、今の時点で会話が出来るグロウ様に念話で話しかけた。


「さて、グロウ様、それでは王都に向けて出発しましょう」

「ふむ、わらわも他の地方を旅するのは初めてじゃから、これはちょっと楽しみじゃのう」

「ふふ、それでは楽しんでくださいね」

「うむ、そうするのじゃ」


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