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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
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55 レアムバルの町1

 

 ガイア様と一緒に町に入った私は、地面に倒れている兵士達を見回してブレスの巻き添えで怪我をした人を探した。


 そして見つけた怪我人に傍に跪くとアマハヴァーラ教の神官が普段使っている杖を使って治癒魔法を掛けようとした。


 するとなぜか怪我人が掌を突き出して首を横に振っていた。


「神官様、待ってくれ。俺は大丈夫だから治癒魔法は必要ないんだ」

「えっ、でも、その足、怪我していますよね?」

「いやいや、本当に大丈夫だから、神官様も気にしないでくれ」


 怪我人はそう言って頑なに治療を拒否するので、恩を売って買い取り場所を聞くのは無理そうだと思ったところで、後ろから声をかけられた。


「あの破城魚を仕留めたのは、神官様ですか?」


 振り返ると私の事をじろじろ見おろしてくる男が、吹き飛ばした魔魚の破片を指さしていたので、最後に倒したあの大きな赤い輝点の事を言っているようだ。


「ええ、この町に入るのに邪魔でしたので。それと他にも沢山の魔魚を仕留めましたよ。ひょっとして、貴方達の仕事を奪ってしまいましたか?」

「い、いえ、とんでもない。むしろ感謝しております」


 兵士はそう言って感謝の意を示した。


「破城魚を仕留めた時、ノームに空間が開くほど強烈な攻撃のようでしたが、いったい何をされたのですか?」


 まあ、ガイア様がブレスを撃ったらその程度の事は起こるわね。言えないけど。


「それはアマハヴァーラ教内での極秘事項です」

「・・・そうですか」


 男は納得していないようだったが、私はごまかすため話題を変えてみた。


「ところで、この兵士が頑なに治療を拒否するのは何故でしょうか?」


 私がそう尋ねると男達は微妙な表情になっていたが、声をかけてきた兵士は理由を教えてくれた。


「それは神官様への心づけが高いからですよ」


 はて、アンスリウムでは気持ち程度の金額の筈ですが、モステラでは違うのでしょうか?


「高い?」

「ええ、給料が吹っ飛ぶ程にね」


 えっ、モステラの相場ってそんな事になっていたのね。


 この町の神殿に、どうなっているのか聞いてみた方がいいかしら?


「この町に神殿は何処にあるのですか?」

「いえ、レアムバルにはありませんよ」


 ここはレアムバルという町なのね。


 この町に神殿が無いという事は、ひょっとして出張費がべらぼうに高いという事でしょうか?


 私は怪我をしている兵士に向き直った。


「治療費は、手持ちの薬草を売れる場所を教えてくれればいいですよ」

「えっ、そんなんでいいのですか?」

「ええ、私はアンスリウムの神官なので、この町には不案内なのです。教えてもらえたらとても助かります」


 私は相手が安心するようににっこり微笑んだ。


「では、治癒魔法を掛けますね」

「はい、お願いします」


 杖から放たれた光が兵士の怪我をした足を包み込むと、映像を逆回転するかのように怪我をした部分が元に戻って行った。


 やれやれ、やっとガイア様のブレスで被害を受けた人を治療出来たわね。


「あ、ありがとう」

「どうしたしまして、それでは売れる場所を教えてもらえますか?」

「ああ、この道の先に天秤を象った看板を掲げた商業ギルドの建物があるんだが、そこで買い取ってくれますよ」

「どうもありがとう」


 私が教えてもらった方向に歩いて行こうとすると、土煙を上げて騎馬がこちらに駆けてきた。


 そしてこちらの姿を認めると、馬を止めて降りてきた。


「神官様、アランサバル伯爵様がご都合がよろしければ招待したいとのことです」

「アランサバル伯爵とはこの町の領主の方ですか?」

「はい、そうです。今回町の危機を救って頂いたお礼を言いたいとのことです」


 態々声をかけられても面倒なだけだしどうしようか迷っていると、頭上のグロウ様が念話で話しかけてきた。


「アリーちゃん、この町から疑神石の気配がするのじゃ」

「えっ、そうなのですね。ユッカでは国家が使っていましたが、そうすると貴族も使っている可能性がありますね」

「ふむ、多分じゃが、この空気の壁を発生させる装置といったところじゃな」

「ああ、成程」


 モーフ様を正気に戻す為にも、疑神石は排除しなければなりませんね。


 私は男に向き直った。


「分かりました。領主様にお会いしましょう」

「それでは私が案内しましょう」


 そう言ったのは、先ほどから声をかけてきた男だった。


「貴方は?」

「あ、失礼しました。私はアランサバル伯爵軍のカルドナと言います」

「私はアンスリウム大神殿所属のアリソン下級神官です」

「えっ、その実力で下級神官なのですか?」


 カルドナと自己紹介した男は驚いているが、事情を説明するつもりは無いので「これは大神殿の都合」とだけ答えておいた。


 カルドナは、私がアンスリウムから来た事に興味を持ったようだ。


「神官様は、アンスリウムからここまで来られたのですよね?」

「ええ、そうです」

「そうすると、ユッカの迷いの森も通り抜けられたと?」

「ユッカの環境は改善しましたから、もう魔樹は出ませんよ」

「えっ、あの、その話、申し訳ありませんが、伯爵様に詳しくしていただけませんか?」


 まあ、ここの領主に疑神石の危険性を伝えるには丁度良いわね。


「ええ、構いませんよ」


 そしてカルドナに案内されて領主館に向かって歩歩き始めると、先ほど怪我を治した兵士の呟きが聞こえてきた。


「同じアマハヴァーラ教の神官なのに、アンスリウムの神官は一味違うな」


 +++++


 エリアスが町の被害状況の報告を受けていると、家令がカルドナ将軍がアマハヴァーラ教の神官を連れてきたと言ってきた。


 ちっ、やっぱり来たか。


 それにしてもカルドナの奴、態々連れてくることも無いだろうに。


 少し不機嫌になったエリアスだったが、町の恩人に会わない訳にもいかないので、直ぐに通すように命じた。


 応接室で待っていると、カルドナが意外にも緑髪の女神官を連れてきた。


 てっきり破城魚を倒したと聞いたので、男だと勝手に思っていたのが顔に出たらしくカルドナが慌てて口を開いた。


「伯爵様、こちらはアンスリウム大神殿所属のアリソン様で町を襲っていた破城魚を退治してくれました」

「そ、そうか、分かった。私はこのレアムバルの町の領主エリアス・アランサバルだ。神官殿、この町を救って頂いて感謝している」


 エリアスが自己紹介して直ぐに感じた違和感を口にした。


「うん、アンスリウム?」


 すると再びカルドナが口を開いた。


「そうなのです、伯爵様。このお方はユッカの環境が改善した事をご存じなのです」


 エリアスは目の前の神官がアンスリウム出身で、モステラとアンスリウムの中間にあるユッカの地の環境が改善したというキーワードで、アンスリウムのアマハヴァーラ教がユッカの地の環境に何かしたのかもしれないと考えた。


「ユッカの環境が改善したというのは本当なのですか?」


 エリアスは、領主館の応接室でローテーブルを挟んで対座している妙齢の女神官をじっと見つめていた。


「ええ、本当ですよ」


 女神官は長旅をしていた割には疲れた表情も無く、神官服に汚れも内容だった。


「この町に来るまで携帯用のドライウォール発生器を使われたのですか?」


 携帯型のドライウォールを使っていたとしても全く魔魚が寄ってこない事は無いのだが、この女神官はまるで戦闘など無縁な旅をしてきたような姿だった。


「いえ、携帯用のドライウォールというのは初めて聞きました」


 え、なら、どうやってここまで辿り着いたのだ?


「えっと、神官様は魔魚がうようよしているノームの中をどうやって来たのですか?」


 エリアスが返事を待っていると、目の前の女神官は少し難しい顔になった。


「それは答えなければいけない質問ですか?」


 どうやらこれはアンスリウムの機密に関わる事の様だ。


 エリアスはとても興味があったがその質問は諦める事にして、本題に戻る事にした。


「ほう、それで神官様は、環境が改善した理由をご存じなのですね?」

「ええ、勿論です」


 女神官は笑みを浮かべると、こちらが用意したお茶のカップを手に取った。


 その態度は落ち着き払っていて、嘘をついているようには見えなかった。


「それで、その環境が改善した理由をお伺いしても?」

「そうねぇ、この町が魔魚に攻められる理由を知っているのかしら?」


 質問に質問で返されたが、そもそもノームが発生した原因は王家でも分からない事象なので、エリアスが知っている訳も無かった。


 だが、アンスリウムの神官が聞いてくるという事は何かあるのかとじっと考えていると、じれたのか先に口を開いた。


「疑神石」


 意外な一言にエリアスがぴくりと反応すると、女神官は意味深な笑みを浮かべた。


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