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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第2章 ユッカ
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47 ユッカの村人2

 

 グロウ様がアルラウネの姿になると、その姿を見た青年は突然目の前に魔物が現れた事で目を見開いて固まっていた。


 まあ、大騒ぎされるよりはましなので、グロウ様に意識の無い老婆を男と同程度の若さまで変化させてもらった。


 そして廃屋もグロウ様が成長光線を照射すると、今度は時間を巻き戻すような感じで立派な家に変化していった。


 男は老婆が若返える姿や廃屋が立派な家になる姿を見て、顎が外れるくらいの大口をあけていた。


 私がそんな男の肩を叩いた。


「これから畑を作ります。一緒に外に出て下さい」

「え、ええ、あ?」


 動かない男を仕方なく引っ張って外に出すと、待っていたグロウ様が軽く頷いてから手を掲げた。


 すると、目の前の密林が下草と一緒にみるみるうちに枯れていくと、そこには柔らかい黒土が現れた。


 そしてそこにグロウ様が種を放り投げると、不思議なことに空中に浮かんだ種が一定間隔で出来上がった畑の中に落ちて行った。


 グロウ様はその様子に満足すると全体に成長光線を照射した。


 すると、みるみるうちに作物が成長し、あたり一面に収穫を待つ作物が実っていた。


「これだけあれば2人が食べて行くには十分すぎる程の量が収穫できますね」


 私が肩を叩いてはなしかけると、ようやく男が復活した。


「いや、有り余る量です。しかし、これは丸芋ですか?」


 男にそう聞かれたので、畑の中の1本を引っこ抜いた。


 そこには沢山の丸芋が実っていた。


「ええ、煮て良し、蒸かして良し、焼いても良しってね。まあ油があれば揚げても美味しいですけどね」


 男は丸々と実った丸芋をじっと見つめていた。


「これなら生きていく事が出来ますね。それから魔樹はもう現れませんよ」

「え、それはどういった訳で?」

「ユッカの地を見守られている森の神様のお力が元に戻ったからです。ただし、ユッカの民が森を破壊したら再び同じ事になるから注意してくださいね」

「そ、それはもちろんです。あの、それで畑に雑草が生える事も無いのでしょうか?」


 雑草?


 初めて聞く言葉に戸惑うと、アルラウネの姿をしているグロウ様が口を開いた。


「もう雑草も生えぬぞ」


 男は突然魔物が喋った事に驚いたが、私が平気な様子を見て落ち着いたようだ。


「魔樹も出ない、雑草も生えない・・・ううっ」


 なんか、感無量って感じで突然泣き出してしまったので、私は青年の背中を優しく摩ってあげた。


「これからは自分達の力で生きて行ってくださいね」

「え、あ、何といえばいいか。本当にありがとうございました」


 信じられない事が次から次へと起こった事で脳の処理能力の限界を超えたようだが、それでも男は泣きながら感謝を口にした。


 +++++


 男は去っていく神官一行を見送っていると、立派になった家からばあさまが飛び出してきた。


 そしてエタンの顔を覗き込むと、顔に手を触れてきた。


「本当にじいさまなの?」

「ああ、そうじゃ、儂じゃ」

「でも、夫婦になった時の姿になっているわよ」

「本当か、だが、お前も同じくらい若返っておるぞ。気付いておらんのか?」

「へ、本当に?」


 そう言って自分の頬に手を当てて確かめている妻の姿を眺めながら、夫婦になった頃の事を思い出していた。


「え、ちょっと、これ、もっちもちよ、もっちもち」

「ああ、シワシワじゃなくて良かったな」


 自分の肌の感触にとても嬉しそうな妻は、俺の顔を見て微笑んでいた。


「ふふふ、じいさまの顔もあの時に戻っているわよ」

「ああ、やっぱりそうか。なんだか体が軽くてな、そんな気がしていたんだ」


 エタンは立派になった家を眺めた。


「ばあさまよ、俺達は森の神様に感謝するため、この家に住み畑を耕さなければならなくなったぞ」


 エタンが真面目な顔でそう言うと、妻も何かを察したようだ。


「本当にねえ。こんな事が出来るのは神様以外、居ないわよねえ」

「ああ、そうだな」

「そうなのね。ところでじいさま、神様のお名前には、お尋ねになったんだろうねぇ?」


 エタンは、そう言えば名前を聞き忘れていた事に気が付いたが、神様が連れていた人語を喋る馬が名前を呼んだのを覚えていた。


「ああ、アリソン様というらしい」

「アリソン様か、ありがたや、ありがたや」


 エタンは妻と一緒に去って行った森の神様に向かって祈りを捧げると、早速畑に行って収穫作業を行った。


「ねえ、これだけあるんだから孫にも食べさせてあげましょうよ」

「ああ、そうだな」


 若返った2人にとって収穫作業は楽しいものになっていた。



 そして収穫した丸芋を持って懐かしい村に戻って行ったが、アリソン様が言われた通り魔樹に襲われる事も無かった。


 そして懐かしいエタンの村が見えてきたが、そこは相変わらず重苦しい空気に包まれていた。


 +++++


 その日密林に入り食べられそうなキノコや野草を採集して戻って来たイレールは、森の中で感じた違和感の正体がようやく魔樹が居なかった事だったと気が付いた。


 今日は幸運だったな。


 そんな事を思いながら家に帰ると、採集してきた食材を妻に渡した。


 妻はイレールの採集物に加え、家に残っている数少ない食材も混ぜて鍋の中に入れて、少しでも子供達のお腹が膨れるようにと何とか工夫していた。


 そして具の少ないスープを食べていると、子供達が突然消えた祖父と祖母の事を聞いてきた。


「ねえ、じいじとばあばは何処に行ったの?」

「2人は森の中に食べ物を探しに行ったんだよ」

「何時、戻って来るの?」


 イレールはその質問に答える事が出来なかった。


 そんな食事の最中に、扉を叩く音がきこえてきた。


 来客の対応にでた妻の驚きの声にイレールが立ち上がると、そこに居たのは自分の両親の若かりし頃の姿だった。


 ぎょっとしたイレールはそれが亡くなった両親の幽霊なのだろうと思ったが、口から出てきたのはとんちんかんな言葉だった。


「えっ、えっと、どちら様?」

「何を馬鹿な事を言っておる。お前の父親じゃろうが」


 だが、どう見ても目の前の男は自分と同じか少し年下にしか見えなかった。


 そして隣に女を見ると、これまたどう見ても若い頃の母親の姿に似ていた。


「なんだい、自分の母親も見忘れたのかい?」


 そして面食らっている俺と妻に大きな丸芋が入った袋をみせた。


「ほら、丸芋だ。孫達に腹いっぱい食べさせてやれ」


 妻は丸芋を見て狂喜乱舞すると、早速袋を持って台所に行ってしまった。


 男は、両親を家の中に入れると、困惑顔の子供達に祖父と祖母だと教えた。


 子供達は祖父と祖母の若い頃の姿を見たことが無かったので、満面の笑みを浮かべる2人にあんぐりと口をあけたのは当然である。


 だが、沢山の食べ物を持って来た人達に好意を向けるのは当然で、鍋の中の沢山の芋を見て歓声を上げた。


 久しぶりにお腹いっぱいになった子供達が隣室で寝静まると、若返った両親に事情を聞くことにした。


「親父それにお袋、これは一体どうなっているんだ?」

「ああ、驚かせたな。実は森の神様に出会ったんじゃ。そして俺達を若返らせてくれたんだよ。そして家と畑を貰った。あの丸芋はその畑で収穫した物だ」

「収穫って、出て行ったのは一昨日だろう?」


 そう言って怪訝そうな顔をする息子にエタンは笑いかけた。


「神様が連れていたしもべがあっという間に家と畑を作ったんじゃ。そして畑に種を撒いたらみるみるうちに育っての、このとおり丸芋が収穫できたわけじゃ」


 聞いただけだとほら話にしか思えないが、目の前に若返った両親と袋一杯の丸芋があるので、信じない訳にもいかなかった。


 まだ混乱しているイレールに、父親はとても良い話をした。


「それよりも、喜べ、森の神様はもう畑に雑草は生えないと言ってくれたぞ」

「え、なら、畑を作っても大丈夫なのか」

「ああ、お前も森の神様、アリソン様に感謝をしなければならないぞ」

「ああ、分かった。ところで神様はどんなお姿だったのだ?」

「ああ、緑髪に緑眼の女神様だ」

「「「ありがたや、ありがたや」」」


 +++++


 シリルとカーリーは、ボロボロの姿でバシュラールに戻って来た騎士団の姿を眺めていた。


 そんな騎士のうち、足を引きずっていた男がよろけたのを見て直ぐに助けに入った。


「大丈夫ですか? 大分やられたようですが、何があったのですか?」


 シリルが支えてやると兵士は痛みに耐えながら微かに笑みを浮かべた。


「ああ、ありがとう。見たことも無い魔樹が現れたんだ。そいつらは俺達よりも小さかったんだが、連携して攻撃してくるんだ。結果は御覧のとおりさんざんな目にあったよ」

「うへぇ、それは大変だ。一体何処でそんな魔樹が現れたのですか?」

「ああ、ここからモステラ方面に少し行くと謎の小道があって、そこで待ち伏せしていたんだ」


 シリルは貴重な情報を手に入れると、直ぐにカーリーの元に戻った。


「カーリー、モステラだ」

「えっ、どうして分かるんですか?」

「どうやらモステラへ続く道があるそうだ。アンスリウムからバシュラールまで道を造ったのがあの神官だとすると、同じ事をしたと考えるのが普通だろう?」


 シリルは返事を待つこともなく、カーリーの腕を掴んでモステラに向かうべく走り出した。


「えっ、ちょっと、そこには魔樹が居るのではないのですか?」

「だからと言って、大事な情報源を見失う訳にはいかないだろう」


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