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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第2章 ユッカ
45/61

45 密林の中

 

 ユッカの結界装置を破壊しその中から疑神石を取り出した私達は、元の洞窟に戻り、あたりを付けていた裂孔の場所まで来ていた。


「この穴の中に疑神石を埋めるのか?」


 頭上からグロウ様が質問してきたので、私はそうだと返事を返した。


 そしてポケットの中から疑神石を取り出し裂孔の中に放り投げた。


 穴の中からは途中で側壁に当たった「カン」という音が聞こえてきたが、深い穴の中に落ちると静寂が訪れた。


「ガイア様、裂孔を破壊して埋めてもらえますか?」

「ああ、任せるのだ」


 そしてガイア様がやや抑え気味にブレスを放つと、裂孔が崩壊して穴を埋めていった。


「これで一安心ですね」

「そうじゃなぁ、こんな場所を掘り起こして見つけるような奴はおらんじゃろう」


 グロウ様も納得してくれたようなので、後は洞窟を出てモステラに向かうだけだ。



 前にこの洞窟から地上に出た時エルフ達に攻撃されたので、念のため警戒したのだが、木々の間から矢が飛んでくる事も無く、誰かが剣を振り上げながら襲い掛かって来ることも無かった。


「どうやら撒いたようですね」

「ふむ、だが油断は禁物だぞ」

「ええ、そうですね。グロウ様、モステラとの国境はどうなっているのでしょうか?」


 頭上のグロウ様に質問してみると、直ぐに答えが返ってきた。


「大裂孔じゃな。上空からなら直ぐに分かるぞ」

「分かりました。ありがとうございます」


 私は上空に鷹の目のマジック・アイテムを投げると、モステラとの国境という大裂孔の場所を探した。


 すると密林の先に突然大地の裂け目が見えたが、モステラ側はかなり靄っているようで、何も見えなかった。


「方向が分かりました。ガイア様あちらの方角です」


 私が手で方向を指し示すと、ガイア様は頷いた。


「分かった。アリソンは背中の乗るのだ」



 私は頭の上に帽子に擬態したグロウ様を乗せ、ガイア様の背中で揺られながら一路モステラ地方に向けて密林の中を進んでいた。


 倒木を飛び越え邪魔な木を避けながらの行動は遅々として進まず、また、景色が全く変わらないのでどれだけ移動したのかも全く判断できなかった。


 私がガイア様の背中で身じろぎすると、頭上のグロウ様が話しかけてきた。


「アリーちゃん、なんか苦労しているのか?」

「はい、道が無いので歩いている方向が合っているのか不安になりますし、何より時間がかかるのでとても疲れます。それにこの状態だと不意打ちを受ける危険もありそうですよね」

「ふむ、それならわらわが手を貸そうぞ」


 私が思わず愚痴ってしまうと、グロウ様が救いの手を差し伸べてくれた。


「え、よろしいのですか?」

「ふふふ、アリーちゃんのためなら問題無いぞ。わらわを具現化するのじゃ」

「はい、分かりました」


 私は言われた通りブレスレットの神緑石に触れると、目の前にグロウ様の分身体であるアルラウネが現れた。


「まずは、危険感知じゃな」

「それで敵の位置が分かるのですか?」

「そうじゃ」


 そして私はグロウ様の手ほどきでその方法を学んでいった。


「ありがとうございます。これで不意打ちを避けられますね」


 私がお礼を言うと、グロウ様はちょっと照れているような気がした。


「次は道迷いの方じゃな。モステラとの国境となっている大裂孔まで道を作るぞ」

「はい、お願いします」


 私はどうやって道を作るのだろうとグロウ様の様子を見ていると、ゆりのつぼみのような腕をまっすぐ前方に向けると、先端が開き何か光線のようなものが走った。


 すると目の前の樹木が突然猛烈な動きで成長し、やがて枯れて立ち枯れると粉々に砕けて行った。


 地面の下草も同じで成長して枯れるとその場所は黒い土が見えるようになった。


 そしてまっすぐに伸びる黒い小道が遥か彼方まで続いていた。


「どうじゃ? そこのトカゲよりもわらわの方が頼りになるじゃろう」

「な、なんだと、人間の女の子は蛇が嫌いなのを知らないのか?」

「馬鹿を申すな、トカゲの方が嫌いにきまっておろう?」


 だんだん2人の雰囲気が険悪になって行くのを察知した私は、直ぐに間に割って入った。


「道が出来ましたので直ぐに移動しましょう。それに疑神石を廃棄したので怒った人達が追いかけてくるかもしれませんし」

「ふん、追っ手など、一撃で粉砕してやる」

「待て、ここはユッカじゃ、わらわの許可なく暴れるでないわ」

「なんだと」


 そういって再び喧嘩しそうな2人の間に入った。


「お2人とも、ここで諍いを起こして戻って来るのが遅れる方が嫌ではないのですか?」


 すると面白いほど2人の表情が変わった。


「直ぐに出発しよう」

「そうじゃ、さっさと用事を済ませて帰って来るぞ」

「はい、分かりました」


 ふう、なんとなくだけど、このお2人の扱いが分かってきたような気がするわ。


 グロウ様が作って下された道をモステラに向けて進んでいくと、突然グロウ様が立ち止まった。


 前を歩いていたグロウ様が立ち止まったので、自然とガイア様も止まった。


「お2人とも、どうかなされましたか?」

「追っ手が来たようじゃな」

「ここはユッカだからな。蛇がそう言うのなら間違いないだろう」

「ふん、トカゲじゃ感知もできんじゃろうて」

「なんだと」

「まあ、まあ、お2人とも、それよりも追っ手のほうです」


 王城で疑神石は環境破壊の元凶だと進言したのに、どうやら分かってもらえなかったようね。


 いや、了承も無く強引に疑神石を廃棄したから怒られても当然か。


「何か時間稼ぎが出来るものでもあれば良いのですが」


 私がそう零すと、直ぐにグロウ様が手を上げた。


「分かった。わらわに任せるがよい」

「え、あの、お任せしても大丈夫なのでしょうか?」

「なんじゃ? そんな心配そうな顔をして」

「いえ、ガイア様にお任せしたら、バシュラールまでドラゴンブレスで道を造られていましたので」


 それを聞いたグロウ様は何故か「ふふふ」と笑い出した。


「あれはやっぱりトカゲのせいか。大丈夫じゃ。わらわは手加減というものを知っておるからな」

「おい、ちょっと待て、それでは私が手加減も出来ない馬鹿と聞こえるぞ?」

「本当のことじゃ」

「なんだと」


 また、言い争いが始まりそうなのを間に割って入って何とか止めると、グロウ様に話しかけた。


「グロウ様、それで何をするのですか?」

「アリーちゃんは、ここが迷いの森と人が呼んでいるのを知っているな?」

「はい」

「迷いの森には恐ろしい魔樹はつきものじゃな」

「えっ?」


 だがグロウ様は私が制止するよりも早く、地面に小さな粒をばら撒いていた。


「グロウ様、それは何ですか?」

「植物の種じゃ」


 こんな所に種なんか撒いて何か意味があるのだろうかと思っていると、ゆりのつぼみのような腕を地面に向けその先端を開いた。


 先端から放たれた光が種を撒いた地面を照射すると、あら不思議、地面から植物が顔を出すと直ぐににょきにょきと伸びて、あっという間にあのアルラウネの集団が出来上がっていた。


 グロウ様は出来上がったアルラウネ達に命令を発した。


「お前達、わらわ達を追いかけてくる不届き者の足止めをするのじゃ。あ、そうそう、痛めつけるだけで殺すでないぞ」


 グロウ様は、私の顔を見て追っ手を殺さないように付け加えてくれた。


 アルラウネ達はこくりと頭の部分を下げると、森の中に消えて行った。


 私は禁忌の地での戦闘を思い出しながら、敵だと厄介だけど味方だととても頼もしい事に気が付いた。


「それでは私達はモステラに向かいましょう」


 +++++


 緑眼緑髪の神官の行方を追うファシュは、緑髪の神官が逃走に使ったと思われる地下道から地上に出ると、そこでどの方面に向かったのか慎重に痕跡を調べる事にした。


「バリアンテ、緑眼緑髪の神官の痕跡を探すぞ」

「えっ、まっすぐアンスリウムに向かったのでは?」


 ファシュはバリアンテに人差し指を左右にふった。


「良いか、連中はユッカから国宝の疑神石を盗んだんだ。当然追っ手がかかることは百も承知だろう。そんな状態で素直にアンスリウムに戻ると思うか?」

「・・・追っ手を避けて、少し回り道をする可能が高いですね」

「分かったのなら、痕跡を探すのだ」


 普通に考えればアンスリウムに向けて逃走したと考えるが、結界装置を破壊しエネルギー源である疑神石を奪えば大々的な追っ手がかかる事は百も承知なはずなので、そのままアンスリウムへ逃れるルートを取るとは思えなかったのだ。


 そして見つけた痕跡はアンスリウムとは真逆のモステラ方面だった。


 念のため1つの分隊をアンスリウム方面に捜索に行かせると、残りの部隊を率いてモステラ方面に向けて捜索を開始した。


昨日は他作品の誤投稿すみませんでした。


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