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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第2章 ユッカ
35/61

35 神獣グロウ3

 

「それならこれを持って行くがよい」


 そして差し出してきたのは、グロウ様がリレークリスタルと言った水晶だった。


「え、同じ物ですか?」


 私がそう言うと、グロウ様は唇をすぼめてちょっと嫌そうな顔になった。


「よく見るのじゃ、うっすらと綺麗な緑色になっておるじゃろう?」


 そう言われて手に持った水晶を光に翳すと、透明だと思っていた石に僅かに緑色をしているのが分かった。


 そこでもしかしてと、ガイア様の水晶を光に翳してみるとやはり僅かに黄色を含んでいた。

「これをモーフの神域に置いてくるのじゃ。そうすればモーフの所から瞬時にわらわの神域に戻って来られるぞ」


 グロウ様はどうしても私をここに留めておきたいらしい。


 リレークリスタルを受け取るため近寄ると、グロウ様が抱きしめてきた。


 すると私の中に何か暖かいものが流れ込んでくるのを感じた。


「グロウ様?」


 グロウ様が拘束を解くと何やら出来栄えを確かめるように私を見つめていたが、やがて満足したのか笑みを浮かべた。


「ふむ、これでアリーちゃんはわらわのものじゃ」

「え?」


 グロウ様が何を言っているのか分からなかったが、説明してくれなかった。


 すると今度は両手を胸の前で合わせると光が現れ、やがてその光が収束して綺麗な緑色の石が現れた。


 あ、これってガイア様からもらった神黄石に似ていると思っていると、グロウ様がその石を差し出してきた。


「アリーちゃんのカルテア行きにわらわも協力するぞ。わらわの美しい神緑石を持って行くがよい」


 この行動はガイア様と同じだったので、神緑石を腕のブレスレットの窪みに嵌めてみた。


 予想通りぴったりと窪みに収まり、神緑石に触れるとグロウ様の分身体が現れた。


 現れた分身体は、禁忌の地で行く手を阻んだあのアルラウネそっくりだった。


 その姿を見た途端これは人間達の前で具現化できそうもないと思ったが、表面上は感謝を示すことにした。


「グロウ様、お力を貸していただきましてありがとうございます」

「ふむ、直ぐに戻って来るのじゃぞ」


 グロウ様が満足している顔を見て、最後に1つ尋ねてみる事にした。


「グロウ様、ここに私の母リンジー・リドルが来ましたか?」

「リンジーはわらわの記憶では最後に来た調力師じゃったな」


 即答だった。


「その時、何か言っていませんでしたか?」

「いや、旅のついでに寄ったとだけ言っていたぞ」

「そうですか」


 私はグロウ様に暇乞いを告げると、分身体を伴って神域から外に出た。


 そこではガイア様の分身体が待っていた。


「む、アリソンよ、その髪と目は何だ?」


 突然不機嫌になったガイア様がそう言ってきたが、一体何を言っているのかさっぱり分からなかった。


「ガイア様、突然どうしたのですか?」


 だが、ガイア様は私の質問には答えず、私の後ろにいたグロウ様の分身体を睨みつけた。


「む、お前はグロウの分身体か?」

「ああ、そうじゃ。久しいのう、ガイアよ」

「何、呑気な事を言っている。アリソンは私の調力師だ。お前のじゃない」

「何を言っておる。既にわらわの調力師ではないか」


 そう言って今にも喧嘩しそうな2人の間に割って入った。


「ちょっと、お2人ともお止めください。それにどうして私を自分のものというのですか?」

「アリソンよ。自分の髪の色に気付いていないのか?」


 ガイア様にそう言われて自分の髪を摘まむと、見える位置に持ってきた。


 すると黄髪のはずなのになぜか緑髪になっていた。


「えっ、髪の毛が緑色になっています」

「髪の毛だけじゃない。瞳の色も緑色になっておるぞ」

「えっ、どうして?」


 すると今度はグロウ様の分身体が腕組みしてドヤ顔をした。


「当然であろう。わらわの色に染めたのだから、アリーちゃんはわらわのものじゃ」

「何を言っている。アリソンは私の調力師だ。お前のじゃない」


 訳が分からず2人が口喧嘩するのを黙って見守るしかなかった。


「そんなのは知らぬ。既にわらわの色になっておるじゃからわらわのものじゃ。それにアリーちゃんも朴念仁なトカゲよりわらわの方が良いに決まっている」

「なんだと、自分勝手な蛇よりも私の方がかっこいいに決まっている」


 目の前で私の事をまるで所有物扱いする2人に、ちょっと腹が立ってきた。


「ガイア様、グロウ様、私は誰のものでもありません。それに同じ神獣様なのですからそんな目くそ鼻くそのような議論は止めて下さい」

「「なっ」」


 私がイラついてちょっとだけ文句を言ったつもりだったのに、2人はまるでとんでもない攻撃でも受けたようにのけ反っていた。


 あれ、私って、言ってはいけない事を口にしたの?


 そして不安になって慌てて弁解しようとすると、2人が口を開いた。


「アリソンよ、私が目くそであの蛇が鼻くそであろう?」

「何を言うのじゃ。わらわが目くそでそなたが鼻くそじゃ」

「鼻くそはお前だ」

「いいや、そなたじゃ」


 ちょっと2人とも、私が自分の失言に慌てたと言うのにその反応は何なのですか?


「お2人ともお止めください。それよりも、どうして目くそは良くて、鼻くそは駄目なのですか?」


 そう言うとガイア様とグロウ様が、さっと大きく目を見開いて私を見てきた。


「アリソンよ、鼻くそだぞ。偉大なる大地の王たる私に、鼻くそがあるわけが無いだろう」

「そうじゃ、華麗なる森の女王たるわらわの鼻に、鼻くそなんて物があるわけないじゃろう」


 時折、神獣様は変なところでこだわる癖があるようね。


 そしてこういう時は話が拗れる前に話題を変えないと大変な事になると、私の本能が告げていた。


「ところでバシュラールにある疑神石はどうするのですか?」


 私がそう言うと2人に言い争いがぴたりと止んだ。


「疑神石じゃと? アリーちゃん、それがバシュラールにあるのか?」

「はい、何とか中に入ってユッカの人達を説得して疑神石を廃棄したいのですが、既に私があの町でお尋ね者になっていて入った途端捕まってしまうのです」

「ふむ、そうだったな。グロウよ、疑神石がユッカにあるのは問題だろう?」

「そうじゃ。あんな物があると、力が奪われてしまう。そうじゃ、アリーちゃんこっちに」


 そう言ってグロウ様の分身体がつぼみになっている手をくいくい動かして手招きしていた。


「何でしょうか?」


 私が、グロウ様の分身体に近寄ると、つぼみになった両手が私の体を挟んできた。


 すると視線がだんだん上に移動していった。


「えっ? えっ?」


 私が驚いていると、グロウ様が再び出来栄えに満足したような顔になっていた。


「どうじゃ、アリーちゃんの体を成長させたぞ」


 ついに我慢できなくなった私は神力で鏡を作り、自分の姿を確かめてみる事にした。


 するとそこには緑髪緑眼の20歳過ぎの女の顔があった。


「どうじゃ、それなら同一人物には見られないじゃろう」


 た、確かにそうですね。


「これはグロウ様のお力なのですか?」

「そうじゃ、わらわには物体を成長させる能力がある。それならバシュラールに入って、疑神石の危険性を説いて廃棄させることも可能じゃろう?」

「分かりました。何とか説得してみます」

「ふむ、交渉過程はわらわも聞いてみたい」

「で、でも、そのお姿だとそれもむずかしいです」

「それなら大丈夫じゃ」


 そう言うとグロウ様は姿を変えて帽子になった。


 私はフードを外してその帽子を被ってみた。


 すると突然頭の中にグロウ様の声が聞こえてきた。


「どうじゃ、この姿なら一緒にバシュラールに入れるじゃろう?」

「えっ、この声、グロウ様ですか?」

「そうじゃ、この姿なら神眼を開いていなくても帽子として存在出来るし、こうやってアリーちゃんと話もできるのじゃ」

「へえ、便利ですね」

「それに帽子のままでもアリーちゃんの姿を元に戻す事も可能じゃぞ」


 確かにそう言われると便利な帽子だった。


「ところで、グロウ様が正気に戻ったのですから、森の中に沢山いる魔樹は消えるのでしょうか?」

「魔樹からは余分な力を回収したので樹木に戻っておるじゃろうし、わらわが正気を保っていれば新たに現れる事も無いぞ」


 それならエルフ達も食べ物に困る事も無くなって安心して暮らせるわね。


「それでは、バシュラールにある疑神石を処分しに行きましょう」

「アリソンよ、わらわの為に苦労をかけるな」


 グロウ様がちょっと心配そうな声になったので、直ぐに否定した。


「いえ、大丈夫ですからお任せ下さい」


 私は手に持っていたグロウ様の水晶をガイア様に保管してもらうと、神力だまりから外に出て行った。


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