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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第2章 ユッカ
33/61

33 神獣グロウ1


 ガイア様に吹き飛ばしてもらった跡地には、探していた神力だまりがあった。


 私は、得意げな顔で声をかけてきたガイア様に神力だまりを指さした。


「ガイア様、神力だまりを見つけました」

「ほう、ようやくグロウの住処を見つけたか」



 ガイア様の背中の乗った私は、柔らかく黒い地面を神力だまりに向けて進んでいくと、沢山の人が倒れているのを見つけた。


 魔樹が集まっていた場所に大勢の人が倒れているってどういう事?


「魔樹にやられたのかしら?」


 神官という表の顔があるアリソンは義務として倒れている人達を救護するつもりだったが、倒れている人達が身にまとっている鎧を見て固まった。


 彼らが着ている鎧が、王都バシュラールで私を地下牢に投獄した兵士が身にまとっていた物と同じだったからだ。


 この人達の救護をしたら、目的を達成できないばかりか再び拘束されてしまうだろう。


「ユッカの騎士団がこんな所まで来るなんて、何が目的なのかしら?」


 念のため倒れている兵士を調べてみると、意識は無いが生きてはいるようなので放置しても大丈夫だろう。


 それよりも彼らが意識を取り戻す前に、グロウ様を正気に戻してとっととこの場から立ち去りましょう。


 更に神力だまりの方に進んで行くと、今度は顔にマスクをした人達が倒れていた。


 この人達は鎧を身に着けていないので兵士ではないようだ。


 この人達は黒い土を掘って、何を探していたのでしょう?


 だが、意識を取り戻して質問する訳にもいかないので、放置することにした。


 そして辿り着いた神力だまりの前で、ガイア様が言っていた事を思いだした。


「ガイア様、グロウ様は正気を失っているのですよね? この神力だまりの中にあるかもしれないグロウ様の神域に入って大丈夫でしょうか?」

「うむ、拙いかもしれないな」


 え、それって、入ったらいきなり攻撃されて終わってしまうという事ですか?


「それじゃあ、どうしたらいいのでしょうか?」

「とりあえずグロウに攻撃されて致命傷を負わないように、神力で鎧を具現化してみるのだ」


 私は言われたとおり、先ほど見た兵士達の鎧を参考に全身鎧を具現化してみた。


「ガイア様、殆ど視界が無いです。これではグロウ様の動きが分かりません。万が一攻撃された場合、それがどんな攻撃なのか分かりませんし、対策も立てられないと思います」

「なら目の周りだけ大きく開けてみたらどうだ?」


 私はガイア様に言われた通り細いスリットになっていた目の部分を、大きく開けてみた。


「ガイア様、これでどうです?」


 私は出来栄えをガイア様に見てもらった。


 ガイア様はじっと私の全身をチェックすると、やがて頷いた。


「いいんじゃないか」


 よし、ガイア様から合格も貰えたし、これでグロウ様に会ってみよう。


 目の前の神力だまりの中に入って行くと、その先にグロウ様が居ると思われる神域が現れた。


 私は神域の前で一度立ち止まると、呼吸を整えてからその中に入って行った。


 神域の中は、ガイア様のものとほぼ同じだった。


 そしてその中央に上半身は人間の女性、下半身は蛇という存在がいた。


 あれがグロウ様で間違いなさそうね。


 だが、グロウ様と思われる存在は、眼窩が窪み、口が左右に裂けそこから牙のような歯が突き出し、髪の毛は逆立っていた。


 そして蛇の下半身はとぐろを巻き鋭い先端が神経質そうに地面にぴしぴしと叩いて侵入者である私を威嚇しているようだった。


 その姿を見て全身に鳥肌が立った。


 あれが、本当に神獣グロウ様なの?


 その姿に一瞬怯んだが、これもリドル一族の大事なお仕事だと気合を入れ直すと、両足に力を込めてその場に留りグロウ様に来訪の目的を告げた。


「私はリドル一族のアリソンと申します。これからグロウ様のお世話をさせて頂きます」


 グロウ様は何の反応も示さなかった。


 そこで改めて神眼でグロウ様を見ると、調べる必要も無いほど神力が乱れていた。


 これは大変だわ。


 私は神力でコームを具現化して一歩前に出た途端、グロウ様の尻尾の先端が飛んできて全身鎧を激しく叩いた。


「うぐっ」


 その一撃は強烈で、その場から吹き飛ばされると神域の外まではじき飛ばされた。


 私が仰向けに倒れていると、ガイア様が心配そうな顔で覗き込んできた。


「アリソン、大丈夫か?」


 その言葉で状況を思い出し、グロウ様に叩かれた鎧の脇腹部分を手で触ってみたが、どうやら破壊されてはいないようだった。


「大丈夫、ちょっと驚いただけです。グロウ様は相当怒っていて、こちらの話も聞いてくれそうもありませんでした」


 私がグロウ様を見て感じた事を、ガイア様に話してみた。


「完全に正気を失っているな。一度思いっきりぶっ叩いて正気に戻さないと駄目だな」


 え、叩くっていっても、神獣様にそのような無礼を働いてもいいのでしょうか?


「あの、叩くのですか?」

「ああ、神力でハンマーを作って、あやつの脳天を思いっきりぶっ叩いてやれば正気に戻るだろう」

「こう、ですか?」


 私はガイア様に言われるまま、神力で全身鎧とウォーハンマーを具現化してみると、ガイア様から感嘆の声が聞こえてきた。


「その姿はまさに戦乙女だな。かっこいいぞ」

「あの、揶揄っていますよね? 神力で具現化しているからそんなに重くありませんが、これ恥ずかしい恰好ですからね」

「大丈夫だ。この恰好を見られるのは私だけだからな」


 確かに神力で具現化しているものは、神眼でしか見えないのでしたね。


 そこでガイア様に言われた通りこのウォーハンマーをお見舞して、グロウ様が頭から血を流して倒れているお姿を思い浮かべてしまった。


「え、そんな事をしても本当に大丈夫なのですか?」

「なに、神獣はそんなやわな存在ではないから大丈夫だ。それよりも手加減なんかしたら、逆にアリソンがやられてしまうぞ」


 あ、はい、既にあの尻尾でやられました。


 確かに私が神獣様に手加減するなんて、おこがましい考えでした。


 ここはガイア様の承認もあることから、本気でいかせてもらいましょう。


 私は神力で作った全身鎧を解除すると、動きやすいように肩や胸、肘や膝等部分的な防具に変えていった。


「アリソンよ、そんな軽装にしてどうするのだ?」

「ガイア様はお忘れかもしれませんが、私達リドル一族は体の大きなガイア様のお世話をするため、神域内に限りますが、自在に動ける能力を持っているのですよ」

「ほう、そうだったのか」

「はい、なので、神獣であるガイア様からお許しを頂きましたので、全力で対処させて頂きます」


 そして再び神域内に入ると、グロウ様があの恐ろしい顔で待ち構えていた。


 改めてグロウ様の顔を見ていると、その恐ろしい顔が痛みで歪んでいるのではないかと思えてきた。


「グロウ様、痛みがあってそれで暴れているのですね。大丈夫です。私がしっかりとお世話をさせて頂きます。それから少々手荒な真似をいたしますが、どうぞお許しください」


 私がそういうとまるでやってみろとでもいうかのように、グロウ様の尻尾が鋭い勢いで襲い掛かって来た。


 私はそれをひょいと飛んで躱すと、そのまま神域の壁を駆け上がった。


 リドル一族は、神獣様から神域を見る事が出来る神眼を授けられた時に、同時に神域内で効率よく活動するための身体能力も授かっているのだ。


 今も神域の壁を斜めに駆け上がり天井からグロウ様を見下ろす位置まで来ると、そこでグロウ様の頭目掛けて、神力弾を撃ち込んでいった。


 だが、攻撃を察知したグロウ様は髪の毛を広げて神力弾を弾くと、天井に居る私に向けて硬化させた髪の毛の束を槍のように突き刺してきた。


 その攻撃を素早く避け、天井に突き刺さったグロウ様の髪の毛をそのま拘束具で絡めとり天井に固定していった。


 グロウ様が髪の毛を引き抜こうと力を込めている隙に天井に突き刺さった1本の髪の毛の束を掴み、螺旋を描きながらグロウ様の頭目掛けて降下していった。


 降下しながらもガイア様に言われた通り脳天をぶっ叩くため、ウォーハンマーを具現化した。


 グロウ様一撃加えますが、どうぞお許しください。


 そして頭目掛けてウォーハンマーを振り下ろそうとすると、こちらの行動を読んでいたかのようにグロウ様の尻尾が襲い掛かって来た。


 まるで串刺しにしようとでもするかのようにまっすぐ向かって来る尻尾を、神力で具現化した盾で防ごうとしたが、尻尾の勢いが強くそのまま弾き飛ばされた。


「アリソン、大丈夫か」


 ガイア様が再び心配そうに私の顔を覗き込んでいた。


 ガイア様の顔の周りには樹木とその隙間から覗く青空があった。


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