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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第2章 ユッカ
32/64

32 禁忌の地

 

 アルラウネは胴体部分から枝を伸ばすと、まるで蔦のように伸びてこちらを串刺しにしようと迫ってきた。


 エルフ達は本体への攻撃を諦めて短剣で蔦を防いでいたので、私が神官服に魔力を流して防御力を強化すると神力弾を敵の本体に撃ち込んだ。


 アルラウネは見えない攻撃に戸惑っているようだが、蔦を巧みに操って木を集めるとそれで即席の盾を作り上げていた。


「無駄よ」


 私は即席の盾で身を守るアルラウネに向けて神力弾を撃ち込むと、盾もろとも本体が粉砕した。


 だが、防御魔法をかけた神官服への蔦による攻撃はさらに激しくなってきた。


「ガイア様、敵の数が多すぎませんか?」


 私がちょっとぼやくと、ガイア様は凄くいい笑顔を見せた。


「おお、なら私が一掃しようか」

「いえ、駄目ですからね」


 ガイア様がブレスを放ったらここら辺一体が廃墟になってしまうし、ここにグロウ様の神域があったらどんな影響があるか分かったものじゃないわ。


 ここは私が頑張らないと。


 アルラウネの蔦が矢のように鋭く突き刺さる中、こちらも神力弾を撃っていると、突然体が持ち上げられ地面に叩きつけられた。


 何が起こったのかを把握しようとすると自分が神域の中にいるのに気が付いた。


「ガイア様、この神域は?」

「連中が足元の地面から根っこで攻撃していたのでな、アリソンを神域で包んでおいたぞ」


 えっと、確かこの分身体はただの荷物運びだと言っていましたよね。


 それが人語を話し、ブレスを撃って、今度は神域ですか。


 もう、何も言わない事にしましょう。


「ありがとうございます」


 そして態勢を立て直した私は、アルラウネ達への攻撃を再開した。


 アルラウネ達の注意が私に向くと、余裕が生まれたエルフ達は魔法の矢で攻撃を行ってくれた。


 こちらが優位になったと思った途端、アルラウネ達は幹から伸びている2本の腕を前に突き出した。


 その腕の先端にあるゆりのつぼみのような部分がぱかっと開くと、瘴気のようなものを噴霧してきた。


 今度は何なの?


 すると傍で戦っていたミストラルが倒れた。


「ガイア様、あの霧まずいです」

「なに、神域の中にいれば問題ないぞ」

「ガイア様、それは私は平気でも、一緒に戦っているエルフの皆さんは駄目なのでは?」

「神域に入れないんだから、それは仕方が無いだろう?」


 あっ、そうだった。ガイア様は他の人達に興味がないのだ。


 これ以上エルフ達に被害が出る前にアルラウネ達を退治しないと。


 更に瘴気を噴霧しようとしたアルラウネ達に神力弾を撃ち込んで黙らせていった。


 その間も、キニャール、ブライヤールと次々と倒れて行った。


 全てのアルラウネを倒して瘴気が消えると、私の近くで倒れているキニャールの元に急いだ。


「キニャールさん、大丈夫? 動けますか?」

「体が痺れて動けません。アリソンさんは麻痺耐性もお持ちで?」


 まあ、アマハヴァーラ教では神官見習いは皆治癒や防御のほか、状態異常に関する魔法も習うのだが、アリソンは劣等生でシーモアさんに呆れられていた事は言わないでおいた。


「何とか、やってみますね」


 そして魔法を掛けてみると、簡単に麻痺を解除できた。


 ああ、そうだった。今は神眼を開いていたわね。


 他の2の麻痺も直して動けるようになったのを確かめた。


「禁忌の地までの案内ありがとうございました」


 私が此処までの案内に感謝の意を示すと、3人のエルフ達はぽかんとした顔をしていた。


「えっと、それはどういう意味でしょうか?」


 戸惑うブライヤール達に私はにっこり微笑んで、お別れを告げた。


「元々おばば、失礼、アルチュセール様から命じられていたのは禁忌の地までの案内だったでしょう。ここが禁忌の地なら貴女達の任務は完了したことになりませんか? だから、ここから先は私達だけで行きます。気を付けてお帰り下さい」

「え、しかし、先ほどまでの魔樹共の攻撃を見たでしょう。1人で切り抜けるのは厳しいのではないですか?」


 ここが危険な場所なら、なおの事エルフ達を危険に晒すわけにはいかないし、私だけならガイア様の神域に逃げ込んでしまえば何とかなるのだ。


「禁忌の地に来たかったのは私達です。ここから先は私達の問題なので、貴女達を危険に晒すわけにはいきません」


 エルフ達は何やら話し込んでいたが、直ぐに結論が出たようだ。


「それでは同行はしませんが、少し距離を置いて見守らせてもらいます」

「え、見守るのですか?」

「はい、アリソン殿がここで何をするのか興味がありますし、その結果をおばばに報告しなければなりませんので」


 まあ、離れていれば大丈夫でしょうね。


「分かりました。くれぐれも周囲には気を配って下さいね」

「はい、ではお気をつけて」


 エルフ達と別れた私とガイア様は、神力だまりを探す事にした。


「さて、ガイア様、神力だまりを探しましょう」

「分かった。ここは危険だからアリソンは私の背中の乗るのだ」


 ガイア様は地面を前足で踏みながらそう言ってきた。


「はい、ありがとうございます」


 そして神力だまりを探して捜索を始めると、前方にこぶのように膨らんだ場所が見えてきた。


 興味を持った私は、ガイア様にお願いしてその場所に行くことにした。


 近づいていくと、そこは沢山の魔樹が集まりドーム型になった場所だった。


「ガイア様、ここって魔樹が生み出される場所だったりしますか?」

「いや、そんな筈はないと思うぞ。それにあの場所からは嫌な感じがするな」

「嫌な感じ、って何ですか?」

「これは疑神石だな」

「え、なんでこんな所に?」


 疑神石は、神獣様がこの世に顕現した時に全部廃棄されたんでは無かったのですか?


「分からぬが、気配があるのは確かだ」

「疑神石は、神獣様からお力を奪うのでしたね。ガイア様は大丈夫ですか?」

「ああ、これは分身体で、アリソンから力を受け取っているから問題無いな。だが、ここにグロウが居るのなら影響は受けているだろう」

「分かりました。それでは可能なら排除してみましょう」


 魔樹が集まっている場所の地面は黒く変色していて、なんだか嫌な感じがした。


 私は少し離れた場所から魔樹の集合体に向けて神力弾を撃ってみた。


 命中した部分は魔樹が爆散したが、密度が高いせいかさほどダメージを与えたようには見えなかった。


 しかも、破孔は直ぐに新しい枝が伸びて塞いでしまったのだ。


 あの状態では全部やっつけるには、一度に強力な力撃ち込まないと駄目みたいね。


 そこで私はガイア様を見た。


「ガイア様、周囲に被害が及ばないように、あの部分だけ狙ってブレスを放つ事は出来ますか?」

「アリソンは難しい事を要求するなあ」

「あ、やっぱり駄目ですか?」

「上空から地面に向ければなんとかなりそうだが、意外と大きいからなあ。あの上空まで飛べるかどうか分からんが、まあ試しにやってみるか」


 ガイア様は相変わらずノリが軽いですわね。


「アリソンは窪地に身を潜めているのだぞ」

「はい、分かりました」


 私は、此処まで来るときに見つけた窪地に駆けだした。


 そして私が窪地に身を潜めたのを確かめたガイア様が、力をためたかと思うと一気に上空にジャンプした。


 上空にジャンプしたガイア様が光ったのを見て、私は直ぐに窪地の中で伏せた。


 やがてすさまじい轟音が聞こえて来ると、その後から暴風と一緒に粉砕された魔樹の破片が飛んできた。


「ごほっ、ごほっ」


 窪地の中で半場埋まった状態の私は背中の積もったがれきを払い落とすと、周囲に広がる埃を両手で払って視界をなんとか確保すると、仕事を終えたガイア様が意気揚々とこちらに戻って来る姿があった。


「どうだ。きれいさっぱり吹き飛ばしてやったぞ」


 ガイア様の得意げな顔を見ながら後ろに視線を向けると、そこには先ほどまであった魔樹の塊はすっかり消えていた。


 そして綺麗になった場所に私の神眼があるものを捕えていた。


「あ・・・」


 +++++


 地面にうつ伏せに倒れていたファシュは、耳をつんざく大音響と結界が激しく振動しているのを感じて意識を取り戻した。


 ぼんやりする頭では、自分が今何処にいて何が起こっているのか思い出せなかった。


 そこから徐々に頭がはっきりしてくると、今自分が禁忌の地に居て、魔樹に包囲されて窮地に陥っていたこと。


 そして調査隊が黒い地面を掘削する事によって発生する瘴気のせいで、自分が意識を失っていた事を思い出した。


 するとそれまで結界の外周を魔樹に覆いつくされ、真っ暗になっていた空が明るい事にも気が付いた。


 ファシュが魔樹からの攻撃を防ぐため展開した結界に対し、魔樹はドーム状になった結界を覆いつくし押し潰そうとしてきたため、外光が遮断されて暗くなっていたのだ。


 当初は照明魔法で照らしていたが、それも黒い地面から湧き上がる瘴気で魔法兵が意識を失うまでだった。


 それが今、周囲には日差しが降り注ぎ明るくなっているのだ。


 考えられる希望的観測は、自分達が帰らない事に心配した第2軍のジェレミー・ソレル将軍が救援に来て、包囲していた魔樹を討伐してくれたというものだった。


 重たく感じる体をなんとか動かして懐の中にあるマジック・アイテムを取り出した。


 そして援軍が結界の中に入れるように解除すると、再び意識を失った。


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