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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第2章 ユッカ
27/62

27 誤解による戦闘

 

 私はガイア様に視線を移すと、力強い頷きが帰って来た。


 そうね、いざとなったらガイア様のお力を借りましょう。


「族長さんの場所まで案内してもらえますか?」

「分かった。その前に私の仲間の状態を確かめても良いか?」


 エルフは地面に転がる2人を見ていた。


「ええ、良いわよ」


 攻撃を受けた残り2人がどうなっているのか分からなかったが、調べてみると直ぐに意識を取り戻したようだ。


 そして3人が話し込んで頷きあったので、どうやら話がまとまったらしい。


「分かった。おばばの元に案内しよう」

「ありがとう。そういえば自己紹介がまだだったわね。私はアリソン、そしてこちらはガイア様です」

「ああ、よろしく頼む」


 事情を知らない2人のエルフは、ガイア様が突然人語を話した事に驚きぽかんと口を開けたまま固まっていた。


「私はブライヤール、そして後ろはミストラルとキニャールだ」



 3人のエルフはうっそうと茂る森の中を、木から木へ飛び移りながら移動していった。


 それをガイア様の背に乗った私が、3人を見失わないように注意しながら後を追っていた。


 あちらは木々の枝に飛び移りながら楽に移動しているが、こちらは道も無い下草が生い茂った地面をガイア様が強引に前足で絡みつく下草を蹴散らしながら走っているので、乗り心地は最悪だった。


 必死にガイア様に掴まっている私の状況を見て、エルフ達は時折こちらを振り返っては休憩するように立ち止まってくれていた。


 今も私達が追いつくまで木の上で待機していると、突然慌てたように別の木に飛び移った。


 なにが起こったかと目を凝らすと、先ほどまでエルフ達が休憩していた木が爆発した。


 木の破片が巻き上がって視界を遮る中、エルフ達はこちらからは見えない何か向けて矢を放つと、そんなエルフ達に向かって何本もの蔦が3人を串刺しにしようと襲い掛かっていた。


「ガイア様、あの者達を助けたいのですが?」

「分かった。神眼であちらの方向を見つめるのだ。さすればグロウが生み出した魔樹の居場所が見えるだろう」


 言われた通り神眼で見ると、敵がいると思われる場所が赤く光って見えた。


「ガイア様、あちらに赤い光が見えます」

「うむ、それが魔樹の本体だな。神力弾で打ち抜くのだ」

「はい、分かりました」


 私は神力で作った杖を具現化すると、その赤い光の方向に杖の先を向けた。


 杖の先から神力弾が放出されると、赤い光が消滅した。


「ガイア様、赤い光が消えました」

「うむ、魔樹は消滅したぞ」


 魔樹が突然消えた事に3人にエルフも気が付くと、ブライヤールがこちらにやって来た。


「アリソン殿、見えなかったが魔樹を退治してくれたのか?」


 こちらを探るような目をしているが、あまり情報を出すのも拙いと思いごまかすことにした。


「そんな事よりも障害が消えたのなら、先を進みましょう」



 それから何度も襲撃を受けたが、全て退けて進んで行くとようやくおばばが住むというエルフの里に到着した。


 と言っても景色が全く変わらないので、そうだと言われない限り全く分からなかったが。


「本当にここがエルフの里なの?」

「ああ、枝と枝の間に迷彩を施された通路があるし、幹の間には扉や窓もあるだろう」


 そう言われてじっと見つめると、葉で巧妙に隠された窓や扉らしきものが見えてきた。


「ねえ、この木は魔樹に変化したりしないのよね?」


 これまで襲ってきた魔樹を思い出しながらそう言うと、ブライヤールは住居としている木には神聖樹の枝を埋め込んであるので大丈夫だと返してきた。


 そして里の中に入って行くと、直ぐに他のエルフ達が武器を片手に現れた。


「待て、ブライヤール、こいつは誰だ?」

「おばばへの客人だ」

「客人だと? お前は外部の者を勝手に連れて来たのか?」


 その声が大きかったのか、いつの間にか周りにはエルフの子供達が集まって来ていた。


 その目を見れば、里への来客が非常に珍しい事だというのが直ぐに分かった。


「ああ、先におばばに話すから通してくれないか? ミストラル、キニャール、お客様の面倒を頼む」

「「はい」」


 +++++


 ブライヤールはエルフの里に戻って来ると、客人を2人に任せ自分はおばばが居る大樹の元にやって来ていた。


「おばば、話がある」


 そして中に入ると、そこに居たのはおばばではなく世話役のロカンクールだった。


「ロカンクール、おばばに面会したい」

「アルチュセール様は体調を崩されて休んでおられますよ」


 それを聞いたブライヤールは一瞬言葉を失った。


「悪いのか?」

「暫く休んでいれば大丈夫だと思うのですが、アルチュセール様は高齢ですから大事を取っただけです」


 そこでブライヤールは、連れてきた女が神官だったのに気が付いた。


「実は人間の神官を連れてきたのだが、具合を診てもらおうか?」


 だが、ロカンクールの顔色がさっと変わった。


「ブライヤール、里に部外者を連れ込んだのか?」


 ロカンクールの口調にしまったと思ったが、発した言葉を無かった事には出来ないのだ。


「私はおばばから森の異変について調べるように言われたのだ。そしてその原因を見つけて連れてきたのだ」


 ブライヤールがなんとか取り繕うとしたが、その言葉は更に悪化させるだけだった。


「何ですって、お前は里を危険に晒したのか? ルーセル、ルーセル」


 するとバタバタと足音がしてドアが開くと、そこには戦闘隊長の顔があった。


「何だ、呼んだか?」

「ルーセル、急いで戦える者を集めてちょうだい」


 ブライヤールはそこで大声を上げた。


「待ってくれ。相手は戦いを望んでいない。おばばと交渉に来ただけだ」


 だが、その言葉は更にロカンクールを刺激した。


「我々に服従を要求しにでも来たのですか?」

「なんだと、あの人間はやっぱり敵だったのか」


 激高したロカンクールを見たルーセルが完全に誤解すると、そのまま部屋を出て行ってしまった。


「あ、ルーセル待て」


 焦ったブライヤールが、ルーセルを追いかけようとするとロカンクールに手を掴まれた。


「ブライヤール、何処に行こうというのです?」

「何処って、ルーセルを止めに行くのよ」


 +++++


 私とガイア様は、エルフ達に連れてこられた部屋で用意されたお茶を飲みながら、ブライヤールが戻って来るのを待っていた。


 そして2人のエルフはというと、何か言いたそうな顔でチラチラとこちらを見ていた。


 まあ、ゴーレム馬が突然人語を喋ったら気になるわよね。


 そしてついに我慢できなくなったのか、声をかけてきた。


「ねえ貴女の魔法は、どうして見えないの?」


 うん、興味を持ったのはガイア様じゃなく私の方だったの?


「あれは魔力ではなく、神力を使っているからよ」

「神力? なに、それ」


 まあ目に見えないものを理解するのは難しいよね。


「ねえ、貴女達エルフはこの世界の環境を整えているのは誰だと思っているの?」

「え、何故アマハヴァーラ教の神官がそんな事を聞くの?」


 う~ん、やっぱりこの神官服を着ていると話がややこしくなるわね。


 さて、神獣様の事をどうやって説明しようかと考えていると、突然2人のエルフが緊張した面持ちで耳を動かしたかと思うと、無言でうなずき合って部屋を出て行ってしまった。


 なんだろうと耳をそばだてていると、ガイア様が危急を知らせる警告を発した。


「アリソン、危ないぞ」


 その言葉に神眼で周囲を見ると、輝点が沢山現れた。


「ガイア様、赤い輝点が沢山見えます」

「その赤い輝点は、敵意ある者だ。私が薙ぎ払おうか?」

「ガイア様、こんな場所でブレスは駄目ですよ」

「ん、そうか」


 なんだかガイア様ががっかりしているような気がするが、こんなところでブレスを撃ったらエルフの里でどれだけの人に被害が及ぶかを分かって欲しいです。


 私は神官服に神力を流し防御力を高めてから、攻撃用の杖を具現化した。


 そして「バン」という音と共に扉が破壊されると、怒気を含んだ男の声が聞こえた。


「我がエルフ族に仇なす害悪はここで排除すべし」


 部屋に飛び込んできたエルフは、そう言って両刃剣をこちらに向けてきた。


 その目はじっと私を見つめていて、隣にいるガイア様には一切注意を払っていなかった。


 そして剣を手にまっすぐ私に向かってくると、その無防備な脇腹をガイア様に蹴り飛ばされた。


 一瞬エルフの顔に驚愕の表情が現れたが、直ぐに壁まで吹き飛ばされ動かなくなった。


 あ~あ、あれだけ見事な蹴りを受けたら、相当なダメージだろうなぁ。


 死んでいなければいいのですけど。


 先頭の男がガイア様に吹き飛ばされたのを見た後続のエルフ達は、事態が飲み込めず混乱していた。


 私はその隙を見逃さず、呆然と立ち尽くしているエルフに向けて神力弾を撃ち込んでいった。


 何が起こっているのかさっぱり理解できないというエルフ達が次々と倒れていく中、ガイア様も容赦なく残りのエルフを蹴飛ばしていった。


 そして静寂が訪れると、部屋の中には沢山のエルフが横たわっていた。


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