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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第2章 ユッカ
26/61

26 新たな手掛かり

 

 森の中で追跡してくる連中から放たれた矢は、私の目の前で結界に弾かれていた。


「この結界はガイア様が?」

「ああ、神域をこちら側に顕現してみたのだ」


 つまりこちら側からの干渉を受けない神域を展開したから、敵の矢が弾かれたのですか。


 矢が飛んでくる方向から敵は3人だと分かったが、こちらの遠距離攻撃の手段がガイア様のブレスだけでは威力が強すぎてどうしようもなかった。


「ガイア様、相手が諦めるまで待つしかないのでしょうか?」

「いや、神域をぶつけてやればいいんじゃないか」

「え、そんな事をしたら相手が消滅しませんか?」


 ガイア様の攻撃はどれも過激すぎるのだ。


「なら、アリソンがやってみるか?」

「え、私が出来るのですか?」


 私が驚いて聞き返すと、ガイア様はまるで当たり前のように返してきた。


「神域で調力のための道具を作るだろう。その応用だよ」

「はあ、それでどうすればいいのですか?」

「神力の玉を3つ作ってみるのだ」

「分かりました。ちょっと試してみます」


 私は調力具を作り出すのとおなじイメージで、神力で玉を3つ作り出した。


「ガイア様、これで良いですか?」

「おお、良いぞ。それを矢が飛んできた方向に向けて押し出してみるのだ」

「はい、分かりました」


 私は言われた通り3つの玉をそれぞれ矢が飛んできた方向に向けて両手で押し出してみた。


「バン」


 それは物凄い勢いで飛んでいったので、私もその反動で後ろにひっくり返った。


「いたた、ガイア様、一体に何が起こったのでしょうか?」


 私がガイア様に質問すると、直ぐに状況を教えてくれた。


「アリソンが撃った神力弾が連中に見事に命中したぞ」

「え、そうなのですか?」

「ああ、連中は木の上から落下して地面に転がっている」


 そう言われて地面を見ると、そこには私を攻撃してきた3人が転がっていた。


「ガイア様凄い反動だったのですが、もう少し何とかなりませんか?」

「それなら杖でも具現化してそこから撃ち出すイメージをすれば良いのではないか?」

「ああ、成程、確かにそうですね」


 そして私は調力具を作るイメージで杖を作り、そこから魔法弾を撃ち出すイメージでもう一度試してみた。


 すると、先ほどの神力弾が杖の先から凄い勢いで飛んでいったが、私への反動はほとんど無かった。


「ガイア様、成功しました」

「ふむ、アリソンは覚えも早いな」


 そこで私はこの能力があればリドル一族が里を焼かれた時、アマハヴァーラ教の強制懲罰部隊に対抗で来たのではないかと思いついた。


「ガイア様、この力があればリドル一族は里を焼かれる事も無かったのではありませんか?」

「なんだ、お前達は里を焼かれたのか?」


 その一言に私は脱力した。


「ガイア様は、この力を他のリドル一族の者達には教えなかったのですか?」

「うん、お前達は守られる存在なのだから必要無いだろう?」


 駄目だわ。


 ガイア様の認識は、大昔のリドル一族が皆から尊敬されていた時代から全く変わっていないみたいね。


「ガイア様、先ほどの神力を撃ち出す攻撃は神力弾という名前なのですね」

「うん、先ほど思いついたのだ、別にアリソンが名付けても良いぞ」


 え、私が名前を付けるのですか?


 ちょっと考えてみたが、ガイア様の言葉を上書きするのも恐れ多いと思い、やめておくことにした。


「いえ、これは神力弾で良いと思います」

「そうか」

「なんだが、どうでも良いと思っていませんか?」

「いや、そんな事はないぞ」


 ガイア様はどこ吹く風といった感じだが、これ以上突っ込んでもはぐらかされるだけなので意識を地面に倒れている3人に向ける事にした。


「それではこの3人が何者なのか調べてみましょう」


 私はガイア様にそう断ってから、頭からフードを被り姿を隠している相手を調べる事にした。


 だが、それは簡単に分かった。


 フードを剥ぐと、その特徴的な耳が現れたからだ。


「えっ、何故エルフが私達を襲うのでしょうか?」


 私はバシュラールからの追っ手かもと思っていた相手が、エルフだった事に困惑していた。


 彼らとは初対面だし、恨みを買う理由が分からなかった。


「ガイア様、これは話を聞いてみる必要がありそうですね」

「うむ、そうだな」



 地面に転がっている1人のエルフを起こすと早速質問した。


「何故、エルフが私達を攻撃するの?」


 エルフはぼんやりした顔をしていたが、次第に意識がはっきりしてくると私を睨んできた。


「森を焼いたのはお前だろう?」


 その一言で、私はガイア様の顔を見た。


 あのブレスは、予想もつかない方向にも影響を与えていたようですね。


「それがどうかしたの?」

「森を破壊する連中は全て私達の敵だ」


 こんな悪意に満ちた森を守ろうとする種族も居たのね。


「何故貴女達は、この悪意に満ちた森を守ろうとするの?」

「お前は魔樹には見えないな。一体何者なのだ?」


 私は何故そんな質問をするのか分からなかった。


「私は人間ですよ」


 私がそう言うとエルフはじっと私の顔を見ていたが、やがて視線を外した。


「そうか」

「それで、何故、こんな森を守ろうとするのですか?」

「何を言っている。森をこんな状態にしたのはお前達人間の仕業だろう。私達は昔からこの森を守って来たのだ。それは森がこんな状態になっても同じ事だ」


 元々この森に住んでいたのなら、森を守ろうとするのは当たり前か。


「ガイア様、この森がこんな状態なのはグロウ様が原因なのですよね?」

「ああ、グロウのやつ、正気を失っているからな」

「では、グロウ様の神域を見つけて、お世話をすれば森が元に戻るのですね?」

「ああ、そうだ」


 私達の会話を聞いたエルフが目を丸くした。


「待て、何故その馬みたいな生物は、人語を話しているのだ?」

「この方はガイア様と言います。神獣様ですので人語を話しても何ら不思議ではありませんよ」


 正確には神獣様の分身体だが、そんな細かい事を説明しても話がややこしくなるだけなので止めておいた。


「神獣、だと? では、そのグロウ様というのも神獣なのか?」

「ええ、このユッカの環境を整えている神獣様ですよ」


 相手はエルフだから、真実を伝えても問題ないわよね。


「何を言っている。お前達神官は、この世界の環境を整えたのはアマハヴァーラ神だと吹聴しているではないか?」


 おっと、この神官服を着ているとやっぱりややこしくなるわね。


 ならば、ここは神獣様の事を分かってもらわなければ。


「違うわ。神獣様のお力よ。ユッカの環境を整えているのはグロウ様という神獣様なの。その方が今困った状態になっているから森がおかしくなっているのよ」

「はぁ? 何を言っている?」


 まあ、素直に信じてくれないか。


「何故、アンスリウムの環境は整っていると思うの?」

「それをアマハヴァーラ教の神官が言うのか?」


 エルフがとても困惑した顔で、首を横に振った。


 どうやらそんな事、考えたことも無かったようね。


「神獣ガイア様がアンスリウムの環境を整えているからよ。同じようにグロウ様という神獣様が、ユッカの環境を整えているの」

「よく分らないが、その神獣様の機嫌を取れば森が大人しくなるというのか?」


 ちょっと違いうけど、あまり言っても混乱するだけよね。


「ええ、そうよ。だから私達はグロウ様の居場所を探しているの」


 突然真実を伝えられた相手は、頭が混乱しているようだ。


 混乱したエルフが私の言葉を全否定するかと思ったが、このエルフはちょっと違った。


「私達もそれに協力する事はできるのか?」


 そう言ってきたエルフの目は真剣だった。


 それなら情報を出してもらいましょうか。


「ユッカの地で、特別な力を持つ場所を知らない?」

「特別な力って何だ?」

「そうねえ。例えば、その場所にいくと元気になるとか、癒されるとか、他とは違う感覚を生じる場所とか」


 エルフは何やら考え込んでいたが、何か思いついたのか顔を上げた。


「そういう場所は知らないが、エルフにとって禁忌の地というのはある」

「禁忌の地?」

「ああ、昔からその場所には立ち入ってはいけないと言われている場所だ」


 グロウ様の神域がバシュラールにあるとは限らないし、あの騎士団に見つかったらまた面倒な事になってしまうだろうから、先にその禁忌の地というのを調べてみる価値はありそうね。


「へえ、面白そうね。私達に協力したいというのなら、その場所に案内してくれないかしら」

「物見遊山で行くような場所じゃないぞ」

「そんな事は私達には関係ないわ。案内してくれるの? それとも駄目なの?」

「まて、その場所に立ち入るには、おばばの許可が必要なんだ」


 私の圧に負けて、いや、私じゃないわね。ガイア様の圧に負けたようね。


「おばば?」

「エルフ族の族長だ」


 そんな場所への立ち入りを、よそ者に快く許可してくれるかしら?


「1つ聞くけど、そこはエルフにとって神聖な場所という意味じゃなく、危険な場所だから立ち入り禁止にしているのよね? 」

「ああ、そうだ。ただし、おばばが許可を出すかどうかは分からないぞ」


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