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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第2章 ユッカ
24/61

24 罠

 

 王都バシュラールにあるアマハヴァーラ教の神殿で、ユッカ出身のエミール・オダン下級神官は適当に仕事をしていた。


 この神殿で昇進したければ責任者であるカール・エマースト上級神官に気に入られる事が絶対条件だったが、このエマースト上級神官はユッカに偏見を持っているので、ユッカ出身のエミール・オダンにその見込みはなかった。


 そんな事だから仕事への情熱も低く、今日もどこでサボろうかと考えていると見習いがオダンの所にやって来た。


「オダン様、ユッカ王家から使いがやってきました」


 見習いが差し出した書類は、身元を確かめるための照会状だった。


 そこにはアンスリウムから下級神官がバシュラールにやって来たので、身元を確かめて欲しいと書かれてあった。


 アンスリウムから異動でバシュラールにやってくる神官も居るが、そんな場合はそのままこの神殿までやって来るので、王家から照会が入る事はなかった。


 すると、偽物がアマハヴァーラ教の神官を名乗っている可能性があるという事か。


 オダンは、部屋にある時計を確かめた。


 エマースト上級神官はお茶の時間で、この時間をとても大事にしていて邪魔をされると機嫌が悪くなるのだ。


「急ぎなのか?」

「はい、大至急と言っておりました」


 仕方が無いな。


 本来は、外部から人物照会があった場合は必ずエマースト上級神官に報告することになっていたが、態々上司の逆鱗に触れたくはないので自分で処理することにした。


 そこでオダンはその照会状を手にすると、最新版のアマハヴァーラ教の神官リストがある図書室に入って行った。


 そしてリストを開き下級神官の欄で、アリソンという名の下級神官を探した。


「アリソン、アリソン・・・んんん、そんな名前何処にもないな」


 さて、どうするか。


 やっぱり、規定通りエマースト上級神官に報告するか?


 そこで、これまでアンスリウムから下級神官が異動でやって来た事が無い事や、自分より後に神殿に雇用されたアンスリウム出身者が出世競争で自分を追い越して、見下すような目で自分を見てきた事を思い出した。


 ふん、アンスリウム出身者を名乗る不届き者がどうなったって関係無いか。


 オダンは、「その者はアマハヴァーラ教の神官ではない」と回答を記載した照会状を見習いに手渡した。


「これが返事だ。渡してこい」

「はい、分かりました」


 +++++


 騎士団本部の団長室で団長と面会していたファシュは、手にした照会状の回答欄に、該当者なしと書かれてある事に満足していた。


「神殿側もアリソン下級神官は存在しないと言ってきました」

「ほう、それで不審者はどうするのだ?」


 団長にそう聞かれたので、ファシュは元々の案を口にした。


「地下牢に閉じ込めます。魔樹だって日も当たらない、食い物もないあの場所なら、そう長くはもたないでしょう」

「ああ、確かにそうだな」


 +++++


 私は鍵をかけられた殺風景な部屋で、ファシュが神殿側に先触れを出して誤解が解けることを願いながらじっと待っていた。


 ここでガイア様を呼び出して強引に脱出する事は可能だが、そんな事をしてお尋ね者になってしまえば、この町でグロウ様の神域を探す事が出来なくなるので自重していた。


 お茶も出してくれないので、歓迎されていない事は明白だった。


 それにこの部屋には普段は使われていないのか、なんだかカビ臭い嫌な臭いがしていた。


 やがて、扉の向こう側に人の気配がすると、鍵が開いてファシュが部下を伴って入って来た。


「神殿側から返事があったので、これから神殿まで送りましょう」


 私は、この男に不信感を抱いていたので、首を横にふった。


「いいえ、自分で歩いて行きますので、ここから解放してください」


 一瞬、ファシュの顔が歪んだので、何か裏がありそうだった。


「分かりました。それでは裏門まで案内しますので、付いてきてください」


 私はファシュに案内されて騎士団宿舎の中を歩き回った後、ようやく立ち止まったのは扉の前だった。


「ここが裏門に通じる扉です」


 ファシュはそう言ったが、今度は自分から扉を開けてはくれなかった。


 もう勝手に出て行けという事でしょうか?


「そうですか。それではここで失礼します」


 私はそう言って扉を開くと、そこには暗闇が広がっていた。


 えっ?


 一瞬、何が起こったのか分からず固まると、直ぐに背中を強く押されてそのまま暗闇の中に飲み込まれた。


 それでも抵抗しようと暗闇の中に足をつきだすと、あると思っていた地面が無く、そのまま前のめりになっていた。


「きゃっ」


 態勢を崩した私はそのまま地面に頭を打つと、坂道になった地面を転がって行った。


 反射的に神官服に魔力を込めて防御力を高めたので、体に強い衝撃を受けたが、どうにか怪我をせずに済んでいた。


 冷たくごつごつとした地面から何とか上体を起こすと、頭上からファシュの勝ち誇った声が聞こえてきた。


「わははは、そこは地下牢だ。冷たくじめじめとした空間で岩肌が露出している特別な場所だ。そこで朽ち果てるまでゆっくり逗留していってくれ」


 黙っていると負けを認めたようで反論を試みた。


「私はアンスリウムの大神殿から正式に派遣された神官なのよ?」

「ぶははは、諦めろ。お前の事は、アマハヴァーラ教の神殿も知らないと言ってきたぞ。特別に部屋代は無料にしておいてやるよ。じゃあな」


 そう言うと「バタン」という扉を閉めた音が聞こえてきた。


 あの男とは初対面のはずなのに、どうしてここまで敵意を持たれているのか分からなかった。



 頭上の扉が閉まると、そこは真っ暗な場所になった。


 そこで大神殿で習った照明魔法で周囲を照らすと、そこはごつごつとした狭い岩壁に囲まれて空間だった。


 この狭さではガイア様を呼び出す事は無理ね。


 私はある程度の広さがある空間を探して岩の通路を移動していくと、ようやく広い空間に出た。



 ここならガイア様を呼び出しても大丈夫そうだ。


 そしてブレスレットの神黄石に触れてガイア様を呼び出した。


「アリソンよ、此処は何処だ?」


 呼び出されたガイア様は、岩がむき出しの周囲の空間を見て困惑しているようだった。


 こんな何もない場所からは一刻も早く退散したかった。


「ガイア様、ユッカの騎士団に地下牢に閉じ込められました」

「ここで足止めされるのはちと困るな」

「ええ、そうでしょう。そこでお願いなのですが、脱出口を作れませんか?」


 するとガイア様は周囲の岩を何やらじっと見つめていたが、奥の岩壁の前までいった。


「ふむ、問題ないな。アリソンよ、私の後ろに隠れるのだ」


 そして私が後ろに回ると、ガイア様のブレスが放たれた。


 強烈な閃光とすさまじい轟音が響くと、その後はもうもうと埃が舞い小石が雨あられと降り注いだ。


 小石が降りかかるのを神官服に魔力を通して防御したが、流石に息が苦しくなってきた。


「ガイア様、そろそろ限界なのですが」

「大丈夫だ。直ぐに収まる」


 舞い上がった埃や降り注ぐ小石が収まり前を見ることができるようになると、そこには岩盤にぽっかりと開いた穴があった。


 その穴の先は延々と続く洞窟のように見えた。


「ガイア様、念のためお聞きしますが、何をしたのか教えてもらってもよろしいですか?」

「何、ブレスを撃って穴を開けただけだ。破片やらは分身体の中に取り込んでおるぞ」


 成程、それでこれだけ大きな穴を開けたのに、私達が埋もれてないのね。


「アリソンよ、背に乗るのだ。ああ、少し狭いから前かがみになるのだ」

「はい、分かりました」


 私が背中に乗りガイア様の首に捕まって前かがみになると、そのまま穴の中に入って行った。


 ガイア様が開けた穴は、延々と続く暗闇になっていた。


「ガイア様、この先、地上に出る事は可能なのでしょうか?」

「ああ、やや上向きに撃ったから、最終的には地上に出られると思うぞ」


 ガイア様がその中を進んで行くと、やがて何かを感知したのかぴたりと足を止めた。


「ガイア様、どうかなさいましたか?」

「この向こう側から疑神石の気配がするな」


 ガイア様はそう言って岩壁に鼻先を向けた。


 疑神石といえは神獣様達の力を削ぐ危険な石で、人間達がこの石を無分別に使い始めた結果、環境が悪化して人が住めなくなったとお祖母ちゃんがいっていましたね。


 その結果、神域から出てこないはずの神獣様が人間界に顕現し、疑神石がいかに環境に悪影響を与えるかを認識させたうえで、疑神石を作る工房を閉鎖し、疑神石は全て地中深くに埋めたと聞かされていた。


 それが何故、ここにあるのでしょうか?


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