表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神獣の調力師  作者: サンショウオ
第2章 ユッカ
22/61

22 遭遇した人達

 

「おい、アリソン、大丈夫か?」


 私はガイア様の声で意識が戻った。


 瞼を開けると、そこにはうっそうと茂る木々の枝と葉の間から僅かに見える青い空があった。


 その景色と背中に伝わるごつごつとした固い地面の感触から、自分が地面に仰向けに倒れている事を理解した。


 私は上体を起こしてガイア様を見た。


「一体何が起きたのでしょうか?」

「いや、すまん。アリソンの神力を使いすぎた」


 ちょ、なんて事するんですかぁ。


「えっとガイア様、神力切れになったから、私は気絶したという事でしょうか?」

「ん、ああ、そう、だな」


 歯切れに悪いガイア様に「はぁ」とため息をつくと、それよりも気になった事を聞くことにした。


「さっきのアレは何だったのですか?」

「ああ、道を作ったのだ」

「え」


 そう言われた私が周りを見回すと、真っ黒く焼け焦げた跡が森の遥か向こう側まで続いていた。


「これが道、ですか?」

「ああ、木々に邪魔されることも無く、下草も無いから歩きやすそうだろう?」


 そう言われて私は焦げ跡の地面に手を触れてみた。


 確かに下草は全て燃えて黒い土だけで歩きやすそうだけど、これって環境破壊なのではありませんか?


 私は遥か彼方まで続く焼け跡を見て、胸に不安がよぎった。


「あの、ガイア様、ひょっとしてこの先にある町まで、吹き飛ばしていませんよね?」

「ん、ああ、大丈夫じゃないか。多分」


 ちょ、そんな適当な事で町が吹き飛んでたらどうするんですかぁ。


 慌てた私は再び上空に鷹の目のマジック・アイテムを放り投げた。


 鷹の目からは、まっすぐ伸びる黒い焦げ跡が町まで到達しているのと、町が無事存在しているのが見えた。


 ま、まあ、ガイア様の言った通り丁度良く町までの道が出来ているので、大丈夫だと考えましょう。


 そこでまた、新たな疑問が頭をよぎった。


「ガイア様」

「なんだ?」

「この馬は分身体で、荷物運び用だと言われていましたよね?」

「うん、ま、まあ、そうだったな」

「分身体が喋るのは、まあ良しとして、でも、どうしてブレスまで撃てるんですかぁ?」

「うん、それは、なんていうか、アリソンの神力を吸収しているうちに、何か出来るようになったとしか」


 それはつまり私から勝手に神力を吸収してレベルアップした、という事でしょうか?


 私がガックリと肩を落としていると、ガイア様が声をかけてきた。


「アリソンよ。何時までもこんな所で油を売っていても仕方が無いだろう。神力切れで疲れているだろうから、私の背中に乗るのだ」

「え、ガイア様に乗ってもよろしいのですか?」

「ああ、構わんぞ」


 確かにまだ足がふらふらしているから、乗せてもらえるのは助かるわね。


「では、失礼します」


 私がガイア様の背中に乗ると、ガイア様は自分で作った焼け跡の道をぽくぽくと歩いて行った。


 少し元気になったところで、ガイア様が立ち止まった。


「アリソンよ。そろそろ食事と眠る準備をした方がいいんじゃないのか?」


 そう言われて上空を見ると少し暗くなっていた。


 周囲が木々で景色がずっと一緒だったので、時間の経過が分からないのだ。


「そうしましょう」


 ガイア様の背中から降りた私は、竈にする石を集めているとガイア様は口一杯に枯れ枝を集めてきてくれていた。


「あ、ガイア様、ありがとうございます」

「何、アリソンが元気でなければ私も困るからな」


 竈で火を起こし小さな鍋に水筒から水を入れ、細かく切った根菜と干し肉を入れた。


 出来上がったスープを1人で食べていると、なんだかちょっと寂しかった。


「ガイア様もお食事が出来れば良かったですね」


 私が思わずそう言ってしまうと、ガイア様はふっと鼻で笑ったような気がした。


「食事相手が欲しければ、友達を作ればよいだろう」


 私はその図星の一言が恥ずかしくて、つい声を荒げてしまった。


「こんな命の危険がある旅に、連れて行けるわけないでしょう」

「そ、そうか」


 そこで冷静になった私は、直ぐにガイア様に謝った。


 食事を終えるとアンスリウムで購入した虫よけの香炉を焚き、座り込んだガイア様を枕に神官服を纏って眠りについた。



 翌朝、目を覚ました私は昨日の残りのスープを温めて頂くと、再びガイア様の背に乗って出発することになった。


 ここは入ったが最後迷子になって遭難するという迷いの森なのだが、ガイア様が作ってくれた目的地までまっすぐ伸びる黒焦げの道のおかげで安心して歩みを進める事が出来た。



 この森には旅人を捕食する魔樹がうようよいると聞いていたが、とても静かでまるで生き物がまるでいない死んだ森のような錯覚を覚えた。


「ガイア様、皆が言っていた恐ろしい森とはまるで別物のように静かですね」

「ああ、きっとアリソンの神力が漏れて出て、警戒されているからだと思うぞ」

「え、ガイア様のお力ではないのですか?」

「アリソンが神眼を開くと神力があふれ出るからな。それで警戒されているのだろう」


 という事は、森の中を移動している間は神眼を閉じられないという事だから、この赤い瞳を見られないようにしないといけないわね。


 私がゴーグルで目を隠したのを見たガイア様が再び口を開いた。


「この森で神眼を閉じたいのなら、グロウを正気に戻して乱れた神力の流れを整えてやればよいだろう」


 ユッカ地方の環境を担当するグロウ様の見た目はラミアのようで、その髪の毛を梳いてやることが調力行為になるそうだ。


「ユッカはどこもかしこもうっそうと茂る森ばかりで、視界がまったく効きません。中央にある町の中にグロウ様の神域があればいいのですが」


 ガイア様は中心地に神域があると言っていたが、マジック・アイテムの鷹の目では神力だまりを見つける事は出来なかったのだ。


 王都バシュラールにグロウ様の神域があればいいのだが、もしなかったら、どうすればいいだろう?


「ガイア様なら、グロウ様の神域を感知出来たりしませんか?」

「う~ん、無理、だな。あ奴の神力が暴走しているので、居所がさっぱりつかめないんだ」

「それは残念です」


 まあ、あまり期待はしていなかったけど、分からないと断言されるとちょっとはがっかりするわね。


 私は遭難確定を言われている迷いの森を、ガイア様の背に揺られながら全く平穏に進んでいた。


 そして、この延々と続くブレス痕を見て、その威力が尋常でない事に気付くとだんだん怖くなってきた。


「ガイア様」

「なんだ?」

「このブレスは、今後禁止してもらっていいですか?」

「何故だ?」


 私のお願いが意外だったのか、ガイア様はその歩みを止めてこちらを振り返っていた。


 そこで自覚がないようなので、更にお願いしてみる事にした。


「ガイア様のブレスは威力が強すぎます。こんなものをポンポン撃たれたら大変な事になります」

「そうなのか?」


 私は自覚がないガイア様へ色々お願いして、なんとか撃つ時は事前相談するところまで妥協してもらった。


 そして更にバシュラールに近づいていくと、突然森の中から男が飛び出してきた。


 +++++


 ファシュは騎士団から選抜した調査隊を率いると、ドラゴンブレスの跡に沿って黒焦げの道を進んでいた。


 その歩みは森の中から聞こえて来る音に反応して、防御態勢を整えてからその音の根源が何なのか確かめながらだったので、とても順調とは言えなかった。


 そんな緊張を強いられる行軍に兵士は疲弊していったが、それでも最も危険な魔樹からの攻撃が無かったので、何とか士気は保っていた。


 魔樹が居ないのは、より上位種の魔物が近くにいるからだろう事は、ファシュも重々分かっていた。


「いいかお前達、ドラゴンの姿が見えたら騒がず、慌てず、見つからないように後退するのだぞ。ドラゴンに見つかったらまず間違いなく命は無いぞ」

「「「はい」」」

「それから、魔樹の中には、アルラウネとかいう人間に擬態したような奴もいるから人を見かけたとしても安易に近づくんじゃないぞ」

「「「はい」」」


 ファシュが注意しなくとも、兵士達もそれは分かっているようで緊張がこちらまで伝わって来た。


 森の悪意は日々強化されているのだ。


 ドラゴンまで生み出したのなら、人間そっくりに化けてこちらを騙してくる事も平気でやって来るだろう。


 そして見えない敵への緊張が極限まで達したところで、前方から何者かの足音が聞こえてきた。


「おい皆、森の中に入って隠れるんだ」


 兵士達にも恐怖があったのか、その行動は迅速だった。


 直ぐに黒く焼け焦げた道の両側の森に入ると、茂みの中に姿を隠した。


 そして息を殺して待っていると、やって来たのは馬に乗った女の子だった。


「将軍、あれは人間でしょうか?」

「待て、ドラゴンが居るかもしれない場所からやって来たのだぞ。普通の人間だと思うか? とにかく警戒は解くなよ」

「はい」


 だが、兵士の中にはその緊張に耐えられなかった者がいた。


 1人の兵士が女の子の前に飛び出すと、その行く手を遮ったのだ。


「止まれ、お前は一体何者だ?」


 あの馬鹿、魔物に人間の言葉が通じると思っているのか。


 それでも部下を見殺しにする事も出来ないので、剣を手にすると何時でも飛び出せる態勢で待機した。


 やって来た女の子は行く手を邪魔する兵士の前までやってくると、そこで立ち止まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ