君と一緒に、知りたくて。
少しずつ進展してほしいですね。
ある日の昼休みいつものように小鳥遊と一緒に昼食をとっていた瑛は彼から見せてもらった写真に目を輝かせた。
それは街の水族館のもので様々な魚や海の生き物たちの写真だった。
「真白くんがよければ次の休日に一緒に行きませんか……?実は今、期間限定のシロクマアイスなるものを販売しているらしくて」
シロクマの形を模したアイスなのだという。気になるから一緒にどうかと柔らかい笑みで聞いてきた小鳥遊に瑛は頷こうとして、そして迷った。
どうしようと。
瑛は水族館に行ったことがなかったから。
「真白くん?」
「あ……えっと……その」
「もしかしてこういう所は苦手でしたか?」
「いや違っ……」
”普通“はいったことがあるのではないだろうか。だって言われた事があるのだ、知らないなんておかしいと。知らないことが怖くてきゅっと唇を結ぶ。
けれども今一緒にいるのは優しい小鳥遊で……そう思うと今も自分を尊重するように待ってくれている彼には正直に伝えたいと思った。
深呼吸をして、ゆっくりと伝えた。
「……僕……水族館、行ったことなくて……その」
「あっそうだったんですね……えっ、てことは真白くんの初めての水族館が私と……むしろそちらの方が申し訳なくなってしまいますね」
「え」
そんなこと、言われるなんて思っていなかった。だから戸惑いから口が滑った。
「小鳥遊さんだったら、僕、嬉しいです!」
「えっ……本当ですか?」
こくこくと何度も正直に頷いた。
「よかった……私も真白くんと行きたいです。」
優しくそんな言葉をくれる彼に声が震えそうになるもひたすらに耐えた。
「多分、小鳥遊さんや他の人が知ってることとか……行ったことのある場所とか、普通のことを人より知らないことの方が多いと……思うんです僕」
だから、でもと言葉に詰まるが
優しく制するように小鳥遊は握ってくれた。
「真白くん、知らないことは悪いことではありません。むしろ……私は今すごく嬉しいと言いますか……」
「うれ、しい?」
「もし真白くんがよければですが、私と一緒にいろんなところに行って、いろんなことを経験してみませんか?もしかしたら君が知っていて私が知らないこともたくさんあるかもしれません。」
ああなんて、なんて優しい人なのだろうか
一瞬だけぎゅっと目を瞑った瑛は笑顔を溢した。
「ふふ、小鳥遊さんと一緒ならどこに行っても楽しそうですね」
「っ……えぇ、そうなるように努力しますよ」
そうして二人は次の休日に水族館に行くことになった。
次回は水族館デートです。