それは、一目惚れ。
今回は小鳥遊さん視点で進みます。
一目惚れだった。
確証はないけれどあの日あの時のあの笑顔に目を奪われた景色は何度も夢で見るほどには脳裏に焼きついていた。
「真白瑛くん……」
ひとときあっただけの青年にまた会いたい、そう律は思った。そしてそれはすぐに叶うことになる。
まさか隣のビルの会社で働いているなんて思わなかった。
一緒にお昼も食べられて、自分だけとの時間を共有してもらえるだなんてもう顔がにやけていなかったか心配してしまうくらいには楽しい時間であった。
それなのに。
手の中のスマホを見る。
「すぅ………………はぁぁぁぁぁ」
夢ではないだろうか。
真白瑛くん
登録された連絡帳を何度も確認する。
電話番号、そしてメッセージチャットの方も交換させてもらった。
今まさにメッセージを何て送るか考えに考えているところだ。
何度も深呼吸をして、そしてぽこん、と書いて書いて書き直したメッセージを送った。
ソワソワソワソワ、落ち着きがないのは自分でもわかっている。けれどもこれが落ち着かないでいられようか。
ぽこん。
ぽこん。
二度ほど通知音が響いた。ここで気を抜いて真白くんではなかった時の落ち込み度が半端ないことはわかっているから平静を装ってタップした。
「!!!!」
どちらも瑛からのメッセージだった。
小鳥遊さん、こんばんは。これからよろしくお願いします。
と一件目。
二件目には
「アイコンもそのキーホルダーなんですね、かわいいですね」
ニコニコしている絵文字付きでそんな文字が。
「っ!姉さんありがとう……!」
おふざけで姉にアイコンを設定されてから変えたい画像もなかったので仕方なく使ってはいたが、今この時までこのままにしておいてよかったなと心底思った。
姉に勝手に設定されてからずっとこのままなんです、可愛らしすぎましたかね
そうなんとか返信すれば、すぐに返信が来た。
お姉さんがいらっしゃるんですね。律さんらしい気がします。
とのこと。
嬉しすぎて瑛とのやりとりを眺めニヤける律の姿があったとか。
**
明日は仕事が休みだから瑛に会えないことを思い出して律はため息を吐いた。
休みの日も会えたら……そう思ったら自然と手は動いていた。
「もしよかったらなんですが、真白くんさえよければお休みの日に少し遠出したところのカフェも行ってみませんか?」
気持ち悪くならないようにと拵えた文章を送れば割とすぐに返信が来た。
「楽しそうですね、律さんさえよければご一緒したいです。か……どうしよう、嬉しすぎる」
返事を読み上げて嬉しさが込み上げてくる。
「真白くんは次のお休みはいつですか?」
「明日です」
「えっ……これって」
もう誘うチャンスではないだろうか、後から後悔するよりはいいだろうと律は決心してメッセージを打った。
「真白くんがよければ──────────」
次の日、律は瑛とカフェデートをすることとなった。まあもちろんデートだと思っているのは自分だけなのだが。
次回はデート(?)の予定です。
読んでくださってありがとうございます。