エリアでトラウティズム
エリア...。
エリアとは、管理釣り場のこと。
管理釣り場とは、文字通り釣るための魚を管理して放流してある釣り場のこと。
素人でも釣れる時はよく釣れる。
はたまた、玄人でも、状況が悪ければ釣れない時は全く釣れない。
初心者でもベテランでも、おひとり様でも家族一同でも、垣根なく一日まるまる遊べる場所、それが、
エリア=管理釣り場=管釣り
早朝、辺りは雪景色。
文乃は会社の同僚、横川依子と、共に白銀の世界で車を走らせている。
ここは広島県北部の安芸高田市、高宮町だ。
県内でも屈指の豪雪地帯であり、ここに至るにはスノータイヤの装着と、十分な雪上運転の練度が必要となるだろう。
...
文乃「ふかふかの雪だね〜、今日は期待持てそうじゃん♪」
依子「ですね。この雪なら人も少ないでしょうし、警戒も鈍りやすいと思います。」
文乃「もうじき着くね。」
山に向かう坂道を駆け上がり、登り切ると駐車場やトイレの施設がある。現場へと到着だ。
二人は手早く準備を始める。
外は少し風があり、雪が舞っている。
凍てつく外気温もさることながら、視界を埋め尽くす環境により、体の芯まで底冷えする程にとても寒く感じる。
実際まともな防寒具を着用していなければ、速やかに低体温症となり凍死してしまってもおかしくない。
そんな中、二人は極寒対応の防寒服に身を包み、足元はスノーブーツで固める。
文乃「よりちゃん、カイロいる?貼ろうか?」
依子「良いんですか?ありがとうございます、お願いします。」
首、肩、腰、お腹。
カイロをしっかりと張りまくり、強靭な耐寒装備で全身を固めれば、寒さ対策はこれでバッチリだ。
二人はそれぞれのギアを整え、フル装備で奥の建物へと向かう。
視界には白化粧し、雪に深く包まれた山々。
そして、それに囲まれた広大な湖がひろがっている。
粉雪が舞う湖はとても幻想的で、つい見入ってしまうほどだ...。
二人は建物の中で手続きを済ませ、更に奥のエリアへと向かう。
依子「思ったとおり、人、全くいませんね♪うひょひょひょひょ〜♪」
文乃「景色も良いし最高だねぇ♪よーし、場所取りじゃ!いざ、討ち入りじゃーー!!」
二人はテンアゲMAX限界突破状態でエリアの奥側に陣取り、さっそくタックルの準備を始める。
.....
今日は釣りの趣向の一つである、エリアトラウトゲームに来ている。
いわゆる管理釣り場、知らない人にすごく簡単に言えば、
トラウト=マスの釣り堀だ。
だが釣り堀と違うのは、エリアによってレギュレーション、ルールが細かく決められており、大前提としてルアーやフライを用いたゲームのみが認められており、エサを使ってはいけない。
それゆえに、初心者や素人にはなかなか入りにくい所ではあるが、ある程度やり慣れた釣り人ならば、このゲーム性にハマってしまうだろう...。
(あくまで個人の見解であり、実態を保証するものではありません。)
依子「五ヶ瀬さん、見てください♪」
そう言って依子が手を差し出す。
その手にはプラグが乗っている。
依子のお気に入りの、あずっこシリーズだ。
依子「3色追加したんですよ〜♪今日は絶対この3色全部で釣り上げてやるんです。」
文乃「嬉しそうだねぇ、ぜひ達成してね!私は今日は、10尾くらい釣れたら良いなぁ」
依子「五ヶ瀬さんFRSでぼうずでしたものね、リベンジですね。」
文乃「うぐっ...、傷が開くからやめて....。今日は大丈夫!だって、この天気と環境で釣れなかったことなんてないんだから!」
依子「ロケーションは良い感じですよね、では、お互い楽しくいきましょう。」
ヒュッ!!チャプッ...
文乃「おー!」
ピュンッ! チャポッ...
ザシュッ!!!ジジジーーッ!!
依子が早々に風を切り、竿を立てる。
文乃「早っ!!と、うわぅっ!!」
ジジジジジーーーッ!!
文乃も竿が引き込まれる!
依子「ダブルヒットですね、幸先が良いです♪」
文乃「だね〜♪てか、びっくり合わせしちゃったよw」
二人はほぼ同じタイミングでランディングし、続いてキャストする。
文乃「この調子で、朝のうちに数を稼いでおきたいな。」
依子「今は魚が浮いていそうですね。私もメインミッションはコンプしておきたい所です。」
そして数投...、依子の竿が空気を裂く!
ヒュッ!ジッ!
依子「よし!2あずっ♪」
文乃「よりちゃん調子ええねぇ♪わたしも追っかけたいけどぉ....。.............、来ないか、タナを少し下げるか。」
1...2...3...4...5!
スーーーーッ.....グン!!!
....
ジジジジッ!
文乃「やたっ♪タナマッチ♪」
依子「いいですね、どんどんいきましょう。ん...!」
シュルシュルッ!!ジジジジジジッ!!
文乃「あは♪またダブルヒットだねぇ♪」
依子「うひひひ♪早々に3あず達成です♪やはりあずっこは最強!あずっこの技術力は世界一ぃぃぃっ!うひょひょひょひょ〜♪」
文乃「よりちゃん才色兼備なのに親しみ易いのよねぇ♡今日はたっぷりと楽しもうぞ、親友よ♪」
文乃は愛ある生暖かい目で、親友依子を見やる...。
依子「あずっこの威力も証明したので、忠さんに切り替えます。」
文乃「もうミッション達成か...、さすよりっ♪出来る才女は違うね♪私も追っかけるよぉ〜!!」
依子「五ヶ瀬さんなら出来ますよ。私はあなたのレスポンスの高さと懐の深さに、尊敬と敬意を抱いていますから。」
文乃「?なに?なんか言った?」
依子「ええ。次はbiteを使おうと思います。(`・ω・´)キリッ」
文乃「あ、バイト!後で買いに行こうね〜、アウトレット品出てるかなぁ♪」
依子「ですね、キンキンキラキラ宝石箱〜♪!!んっ!!」
ビュッ!!!ジッ!!
文乃「!」
バシャバシャバシャバシャバシャ!
依子「フォールできました♡絶好調です♪」
文乃「食い気ええねぇ♪よりちゃん絶好調♪お客さんも少ないし、場荒れも少なそうだねぇ♪」
依子「うひひひ♪あずっこもちゅーさんも、最高のルアーですぅ♪ふひひひっ♪」
文乃「.....、いいねぇ、こういう所がよりちゃんの本当の魅力なのですよぉ♪世の男どもは見る目がないねぇ。こんなにかわいい娘がいるのに♪」
そんなこんなで、二人はいわゆる爆釣というものを堪能しながら、お昼に至る....。
文乃「あぁ〜、腕疲れるねぇ♪今日はすごいな!」
依子「五ヶ瀬さん、何尾いきました?」
文乃「ん〜43尾だね、んっ!!ジジッ!!44だね♪」
依子「入れ食いですねぇ、お客さんも増えないし、雪降った日は、やっぱり最高ですね♡」
依子はいつものクールな顔はなく、柔らかい可愛らしい顔で文乃に話しかける。
文乃「おほっ♪よりちゃんきゃわわ♪じゃなくて、今日はいっぱい釣ったからお昼であがって、温泉にでも行く?」
依子「良いですね。腕も疲れてきたし、お昼から来るお客さんにあとはお任せしましょうか。」
文乃「お、よりちゃん 温泉いくぅー?あったまろ〜♪んで、温泉入ったら帰り田園でご飯食べようね〜♪グ・ラタン♪グ・ラ・タン♪」
依子「五ヶ瀬さん、もう食い気に比重が全投資ですね。」
文乃「食べるは生命のいとをかし、ですからねぇ♪...」
依子「意味がわかりません。語呂は悪くないですが。」
文乃「よし!残り時間、しっかり釣るよ〜。」
...
そして釣りを終え、受付にてスプーンを物色する。
依子「あ、新色!いいなぁ、これは買うしかない!アウトレットの方は...、あ、これカタログにはないやつだ...、実験色かな...、いただきっ..!」
文乃「ほー...、コパー単色...、初めて見る。形もこのタイプは実績高いのよね〜。めずらしっ!綺麗だし、買っちゃお♪」
二人はそれぞれに、自分の趣向に沿って宝石でも選ぶかのように吟味する。
依子「良いのありました?」
文乃「うん、よりちゃんも満足そうだね。」
依子「ええ。これでまた、次の釣行が楽しみになりました。」
二人は大満足の中、温泉に向かった。
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文乃「うほほ♪美味しい〜♪」
しばらくの後、二人は昭和の風味を色濃く残す、ドライブインレストランで食事をしていた。
依子「良い温泉でしたね。神楽もちょっとですが初めて観れたし、普段行かないので良い経験になりました。」
文乃「外風呂気持ちいいよね、時間取れたら一日ゆっくりしてみたいけどねぇ。釣りも行きたいから悩みどころよねぇ♪」
依子「あれもしたい、これもしたいで、優先度がありますからねぇ。今日みたいな爆釣日があるから、釣り優先はなかなかやめられませんね〜、」
文乃はエビフライグラタン、依子はハンバーグ定食に舌鼓をうちながら、今日の思い出話に花が咲く。
少し遅いご飯を食べたなら、そのままティータイムへと移行し、終わらない話を楽しむ。
店の外は雪景色。
昼下がりの太陽が、積雪と、ほんのりと漂う綿雪に反射されて、黄金色の世界を作り出す。
普段なら気怠い時間帯だが、今日みたいに幻想的な風景の中で、楽しい友と過ごせれば、思い出の一幕として残っていく。
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そして、今。
文乃「あんときは楽しかったなぁ〜....。あー、管釣り行きたいっ。」
文乃は山に据えた石テーブルに座り、缶コーヒーを飲みながらかつての思い出を懐かしんでいた....。
文乃「きっとまた、一緒に行けるよね...。よりちゃん。」
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二人で満足いく釣果を得て一日を満喫した。
今となっても、とても楽しかった思い出だ。
いつかまた新しい時を、遠い親友と重ねる日を夢見て、文乃は今日も過ごして行く。




