ファーストにんにくのお話
実家に戻りしばらく経ったある日。
そろそろにんにくの植え付け時期が近くなっていた。
にんにくの種を手に包み、優しく見つめながら文乃は昔の思い出にひたる...。
ドドドドドドドドドドドドドドドド....!!
10月某日、トラクターが畑を耕している。
文乃「ふぃー、終わり!これで来週には植え付けもできるわね〜。一安心♪」
耕運が終わりトラクターをおさめる。
文乃は保管してあるにんにくの元へ行き、拾い上げて見つめる。
にんにくの一欠片、下部に、小さなぷつぷつが現れている。
文乃「ぷつぷつ出てきたね〜、今年もお目覚めのようね。このぷつぷつを初めて見た時に、お前たちも生きてるんだって、実感が湧いたんだよねぇ。」
文乃「そういえば...、お前達って、政美が持ってきた3粒から始まったんだよねぇ...。あの時は、BBQやろうってアイツが言い出したんだっけ....」
.....
......
........
数年前のある日。
文乃が用事で、友人の政美の家に訪れた時だった。
政美「焼肉しようぜ!」
開口一番政美が言い放ち、文乃が何やらわからずにキョトンとしていると、政美は続ける。
政美「空気もええし、あんたん家の庭で肉食う会しよ!」
文乃「はぁ、そりゃまた。ええけど、急やね?なんかあったん?」
政美「アニメみとったら、スキレットで肉焼いてたからさ、それ見てたら食べたくなったんよ♪」
文乃「ああ、もしかしてあのキャンプアニメ?」
政美「そうそう、知ってるなら話が早い、やろう!やるしかない!乗るしか無い!このビッグウェーブに!」
文乃「圧が強いww、そうやねー。んーと...、この日はちょいとキツイからこの日辺りかなー。ここどう?」
政美「ウチはええよ、決まりでええ?」
文乃「ん。じゃあ決まりね。この日にしよう。」
政美「買い出しはどうする?」
文乃「先に打ち合わせしとこうか。そしたら私用意しとくから、後で請求させてもらうよ。」
政美「おっけー♪あぁ〜、BBQじゃぁ、酒じゃぁ!お肉じゃぁ♪」
...
....
......
.......そして当日。
スマホに政美からのメッセージが入る。
政美:おはよー、もう行っていい?
文乃:良きよー。
政美:では参るぞ!首を洗って待っておればよいわっっ!
文乃:スタンプ( ´_ゝ`)
文乃「政美は家を出たか、火起こしとくかな。」
今朝は早朝からテーブルや器具を並べ、お肉や野菜を皿に盛り付け、準備をしていた。
文乃「よーし、だいたいおけ!今日は朝から飲むぞ〜♪」
用意したお酒は、ビール500ml×4本、赤ワイン1本、白ワイン1本レモンサワー6本。
文乃「まさみ〜、早く来い!私はもう飲みとうてうずうずしておるのじゃぁ〜、はよううう〜」
少し経ち、遠くからバイクの音が響いてくる。
その音は次第に大きくなり迫ってくる。
文乃「来たか!まちかねたぞ!」
文乃の家の庭にバイクが現れ、搭乗者が降りてくる。
政美「よっ、おまた〜♪」
文乃「準備は出来てるわ、さあ、はじめましょ♪はいはい、これビールねー♪」
文乃は立派なグラスを渡し、ビールを注ぎ込む
トクトクトクトクトクトク....♪
政美「いきなりかい!私ヘルメットもジャケットも着たままぞw...、お!こりゃ泡が全然たたんね、さてはお主、過冷却寸前まで持っていっておるな?」
文乃「よくぞ気づかれました♪ピルスナーは冷たくてなんぼですよ♪とくとご賞味あれ♪」
政美「わかってる〜♪文乃は...もう持っとるねwじゃあ遠慮はいらんね〜、さっそく...ちあ〜ず♪」
コツンッ-⭐︎
軽くグラスを当て、乾杯をし、二人はビールを流し込む。
限界寸前まで冷やされたビールが喉を駆け抜ける!
文乃・政美「うんま〜〜〜♪!!」
政美「たまらんね〜♪」
文乃「うむ♪たまらんわ〜♪」
政美「バイク降りた直後に飲まされたの、生まれて初めてやろうねww」
キレのある旨みが体中を満たし、二人を体の奥底から
シビれさせる。
政美「は〜♪あ!さっそく肉焼こ、肉ぅ!」
文乃「はぃよ〜♪じゃじゃんっ!トップバッタ〜はこのお肉です〜♪」
文乃が出したのは、厚さ3cmほどもあるジャンボなステーキ肉だった。
政美「うはっ♪良いの用意してんじゃぁん!たまらんねぇ♪はよ焼こ♪すぐ焼こ♪」
文乃「ふふふ、スキレットもしっかり温めてありますぜ、旦那♪」
政美「うはっ♪用意いいじゃぁん♪」
文乃「頃合い、良し!お肉、良し!いざ!討ち入りじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
政美「スキちゃん、やっておしまい!!」
じゅわぁぁぉぁぁぁぁぁぁっっっ!!
厚みのあるステーキ肉が音を立てて焼ける。
政美「なんという、食味をそそるメロデーでせうか....。」
文乃「この立ち昇る香りも、脳を溶かしてしまいそう...。」
二人して、よだれを垂らしながらファースト肉が焼けるのを待つ。
政美「あ、そうだ!家からこれ持ってきたんよ。」
そういうと、大きなニンニクを取り出す。
政美「うちのマッマが育てたにんにく〜♪焼肉にはにんにくでしょ♪スタミナつけよ♪」
文乃「おっきいねぇ、こんなにんにくあるんだ〜!さっそくスライスして、一緒にソテーしようか。」
にんにくを手早くスライスし、肉の周りに敷き込む。
にんにくが脂で炒められる鮮烈な香りが二人を貫く。
文乃「うひゃっ!やっばっ!」
政美「うひー!これこれこれこれぇ〜!」
二人はにんにくの香りに食味をそそられ、さらにビールが美味しく進む。
文乃「待ってる間にビールを楽しむ。そして...、」
政美「お肉が焼けたらぁ、あっかワイン〜♪」
別で焼いているウインナーや、海鮮類を軽くつまみながら、ステーキを待つ。
文乃「あー、幸せ♡何がって、まだ午前中よ?朝っぱらからお肉焼きながらお酒飲むとか背徳だわぁ...、サイコーじゃない♪」
政美「このウインナーうっま♪やっぱお肉屋さん直売が一番だわ♪ポリッポリッ♪」
文乃「ドイツのイメージもあるけど、ビールとウインナーって、相性最高よね♪クピクピクピ〜♪」
文乃「お!もう良さそうかも〜」
トングでステーキを掴み、木でできたステーキプレートに乗せる。
ステーキは湯気を上げ、煌めきと香りをあたりに振り撒く。
政美「うひゃ〜、文乃さんこいつはやばいやーつですよぉ!」
文乃「切るよ〜、スッスッ...、ジュワァー...うは!肉汁すごっ!」
文乃は一切れづつ切り取り、皿に乗せる。
文乃「さあ、いただきますよ〜、自分の好きな調味料で食べてね♪」
テーブルには牡蠣醤油、ステーキソース、マキシムスパイス、岩塩、ブラックペッパー、ミックスソルト、わさびを用意してある。
文乃「まずは、シンプルに、岩塩かな♪」
政美「うちは牡蠣醤油とわさび♪」
うまーーーーーーーっ!!!
文乃「お姉さん♪こちらをどうぞ♪」
文乃は薄作りのワイングラスを政美に渡し、デキャンタした赤ワインを注ぐ...
政美「雰囲気ええやん〜♪これ、ええワインなん?」
文乃「ふっふーん♪600円の高級ワインですわ♪」
政美「高級wwwwwクピッ、あ、でもさ、なかなかいい感じ♪」
文乃「ねー、お肉に合うよね〜♪...それにしても...」
政美「うん?どしたん?」
文乃「このにんにく、存在感あるね〜、大きいから調理もしやすいわぁ〜♪」
文乃「ぱくっ、さくさくっ、んん〜〜、いい匂いが口の中に広がるぅ〜♪」
政美「ふみの〜、明日気をつけてね〜、匂いやばいから♪」
文乃「明日休みだから大丈夫♪さあさあ、どんどん行こー!」
そして二人で楽しく過ごし、夕方...。
文乃「あー、めっちゃ食べたねぇ〜」
政美「うふふ、お空が回ってるぅ〜( ´∀`)-⭐︎」
文乃「あ、にんにく余ってるよ、どうする?」
政美「あー、文乃にあげるよ〜。なんか料理にでもつかって〜⭐︎」
政美は地面に寝っ転がり、手をぱたぱた振りながら喋っている。
文乃「ほらほら、地面で寝ちゃダメだよー?お家入って。」
文乃は政美を抱き抱えて、布団に寝かせる。
政美「ふみの〜、ありがとー。楽しかったぁ♪」
文乃「うちもよ♪ええけ寝んさい。」
政美「あーきもちぃー.....♪............すぅ、すぅ....」
政美は安心し切った様子で、眠りに落ちた。
文乃「友達って....やっぱええねぇ。...楽しかったよ♪」
文乃「ふわぁぁぁ....、さてと、眠いけど...軽く片付けとくかぁ。」
文乃「あ、にんにく...、とりあえず片付けがおわるまでここに置いとくか。」
文乃は家の外の棚に、にんにくを置く。
その後、酔いもあり、その存在をすっかり忘れてしまっていた。
そしておよそ半年後....。
文乃「あ、にんにくだ!これ...、あの時焼肉のやつじゃん!めっちゃ芽が出てる...。」
3かけらのにんにくは、先端から青い芽が伸びていた。
文乃「こうしてみると、ちゃんと生きてるんだなーって思っちゃうよね。...菜園あるし、植えといてみるか、このままよりマシでしょ。」
それが、最初の植え付け。
文乃の人生に大きく影響を与える存在達であった...。
翌年、初夏頃....。
文乃「ふーむ、せっかく植ってあんなに青々してたのに、最近枯れてきたなぁ。もうだめかなぁ、引っこ抜いとくか...。」
文乃はシャベルを差し込み、引っこ抜く。
と、目の前に現れたのは、巨大なにんにくだった!
文乃「わわっ!何これ!でっかいニンニクになってるー!!」
文乃が掘り出したにんにくは、想定とは違い立派に育ち、大きなジャンボにんにくとなり、いずれも大きな粒を5粒ほどつけていた。
文乃「へ〜、こんな感じなんだねー。一粒が5粒かぁ。自然ってすごいなぁ。」
その日の夜、にんにくは料理され文乃は堪能する。
気づいた時には残り1株となっていたが、その種をつなぎ、今日に至る....。
...
.....
......
文乃「また政美とBBQやりたいなぁ。いつか、こっちに招待しちゃおう。そのときは...、この畑、一面にんにくでいっぱいにして驚かせてやるかな♪」
文乃はほのかな野望を胸に、今日も山に畑に動き回る...。
少しの種が未来を繋ぐ。
友との小さな思い出が、未来を型作る大きな礎となった。
文乃は思い出を抱きしめ、手に持ったにんにくを我が子を見るような気持ちで、いつまでも見つめていた...。




