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文乃のグルメ

一箇所に存在する、一庶民の、ただの暮らしの一コマ。

なんでもない一コマこそ、人生そのもの。

文乃は歩いている...。


特別に仕事とかいうわけでもなく、興味本位でG`sマップを開き、山村部にある商店街に目をつけ訪れていた。


そして、歩いている。


来たこともない、とある古びた商店街を歩いている。


普段は来ない土地のせいか、なんでもない風景もなんとなく面白い、だが、それ以上に、


私はお腹が空いていた....。


文乃「商店街だから喫茶店くらいあるのかと思ってたけど、床屋さんと美容室と八百屋さん、あとはお洋服屋さんしかないわ...。」


そのうえ、雨にまで降られてきた。


文乃「濡れちゃうと思った?残念、折りたたみ傘でした〜♪」


なぜか無駄に嬉しそうに傘を取り出し、広げる。

雨に浮かぶ街並みは、鼻心地の良い雨の匂いと相まって、とても幻想的に見える。


しかし、お腹が空いていることに変わりはなく、傘の下でひとしきり落ち着くと、途端に思い出してしまう。


文乃「お腹ペコリーノだわ、何か食べれる所はないかしら...。」


ふと前方を見ると、古い民家のような建物におじさんが吸い込まれていく。


文乃「....、今はお昼時、もしや....。」


文乃はその前まで行き確認すると、暖簾が下がっていることを確認した。


文乃「こ、これは...、この佇まいは!伝説の...町のお母さん食堂的存在では...?」


文乃は、自分の地域ではもはや絶滅してしまっている、おかあちゃんや、おばあちゃんがやっている系の、地域密着型食堂に目がなかった。

そして、これ好機とばかりに躊躇いもなく暖簾をくぐる。


中に入ってみると店構えに比べ割と広い。

そして、


昭和だ...。


文乃「これは...、俄然面白いことになってきましたよ〜?」


文乃は席に座ると、昭和な内装を見渡し、ほのかなる興奮に包まれる。


おばあちゃんが話しかけてくる。


おばあちゃん「あんたぁ初めての人やねぇ、若い女の子が一人で来るこたぁなあけぇ、珍しいのぅ。」


文乃「ええ、初めてです。マップでこの町を見つけまして、こういうお店大好きなので、飛び込んじゃいました♪」


おばちゃん「そりゃぁええ。くたびれたところじゃけ、花が咲いたようになるわぁ」


おばあちゃん「決まったら呼んでな。あとお水とお茶があるけぇ、自分でとりんさいや、いくらでも飲んでええけぇね」


おばあちゃんはそう言うと、調理場へと入っていく。


文乃は軽く見回し、壁のメニュー札を見やる。


文乃「ふむ。ここはメニュー表じゃなくて、壁に貼ってあるやつから選ぶタイプね。」


文乃は豚肉が大好物だ。

特に豚の脂身の風味と食感、ジューシーな味わいがたまらない。

そうなれば、もちろん最初に目に入るのは豚料理だ。


文乃「なるほど、生姜焼きか。お汁も欲しいわね。」


地元のおっちゃんα「こっちええかぁー、豚汁とライス大くれやー」

地元のおっちゃんβ「おー、ワシも同じもん頼むわー」


おばあちゃん「あーい、豚汁大ライス2ねー」


文乃「豚汁.....、お汁にいいわね♪」


文乃「こちらもお願いしまーす、生姜焼きと、豚汁とライス大で〜」


おばあちゃんが少し目を丸くする。


おばあちゃん「あんたぁ、娘さんにしちゃぁよお食うねえ、うちの豚汁はえっと入っちょるがええんかいね?」


文乃「はは、お腹ぺこぺこなので、大丈夫です♪」


おばあちゃんは最初こそ目を丸くしていたが、なんだか嬉しそうにキッチンへと入っていく。


注文も終えたので一息つき、店内をじっくりと見渡す。


使い込まれた簡素なテーブルと、パイプ椅子、

多少の頑固そうな汚れはあれど、よく拭き掃除されている店内。

ところによっては色褪せた手書きのメニュー札、

あたまが少し変色している福助や招き猫、

そして、三角タペストリー♪

どれをとっても、昭和だ。

良い♪


見入ってる中、ふと思い出した私はお茶を取りに行く。

ボタンを押したらお茶が出る機械だが、こちらも年季が入っている。ボタンを押すと、結構な勢いでお茶が打ち下ろされる。


文乃「せっかちさんにはうってつけの仕様ね♪」


昨今の安全性に配慮したのろのろ給湯とは違い、惚れ惚れとするパワフルさに、尊敬の念さえ感じてしまう。


席に戻る途中、棚におかずが収められている。

なるほど、ここでは作り置きのおかずは自分で取るのだな....。


文乃は棚を覗き、おしんことトンカツを取り出す。


文乃「ふふ、とっちゃった♪」


そうこうしていると、おじさん達に豚汁らしきものが運ばれていく...、が。


デカい。


なんかラーメンの器で提供されてる..。


それを見た文乃は、


文乃「さすがね、やるじゃない♪望むところよ♪」


と、涎を飲み込みながら待つ。


おばあちゃん「はいはい〜、待たせたね〜。豚汁と、豚しょうが焼きね〜」


おばあちゃん「あらぁっ!?あんたぁ、トンカツまでとりんさったんね?これはたまげたお嬢さんやねぇ♪」


先に食べていたおじさん達も、思わず見やり、驚嘆の顔をしている。


文乃「ちょっと調子に乗ってしまいました♪豚、好きなんで♪」


おばあちゃん「よお頼んでくれたけん、食べた後まだ入るようなら、おばちゃんの手作りおやつあげるけぇね、ほじゃ、ゆっくり食べんさいねぇ♪」


文乃「はい♪いただきま〜す♪」


文乃は全体を見渡す。


豚汁(ラーメン丼サイズ、お肉も野菜もたっぷり)

生姜焼き(照り照り焼きたてアツアツ、肉厚め)

トンカツ(やや小ぶりだが、肉がしっかりしている)

おしんこ(まさにお新こ、たっぷりきらきら♪)

とても大盛りな白ごはん(炊き立て、粒立ちつやつや)


文乃「う〜ん、豚に豚と豚を重ねてしまった....。なるほど、ここは基本的には、豚汁だけでおかずになるのだな...。」


文乃「...サイコーじゃない?うほほっ♪ぶったづっくし♪」


文乃は喜びを身体から滲ませてしまい、周りから温かい目で見守られていることなどつゆ知らず、箸を持つ。


さっそく文乃は豚汁をすする。


文乃「うん♪見た目通り、原寸大に美味しい♪そして、このおっきな豚肉も嬉しい♪」


出汁のよく効いた旨みの濃い味わいだが、味噌はあっさり目で、非常に文乃好みの味だ。


次は生姜焼きを口に運ぶ。

そしてお茶碗を掴み、炊き立てご飯をぱくっ!!


もぐもぐもぐもぐもぐもぐ...、.....♡


文乃「ぐ、...グレートですよ、こいつはぁ♪反則級に美味しい♪」


文乃は生姜焼きの合間にトンカツを口に運ぶ。


ザクッ!さくっさくっさくっ♪もぐもぐもぐもぐ...♪


文乃「あーーー〜〜♡これ好き♪脂身さっくさく!おいしい〜〜♪」


そしてご飯!パクッ、もぐもぐもぐもぐもぐもぐ...♪


文乃「し、至高すぎる...、豚の旨みがご飯の旨みと絡み合って、脳を溶かしてしまいそうだわ〜♪うん、うん♪うまいお肉でご飯がパクパク食べられる幸せ〜♪」


そして、お新香を口に運ぶ。

パリ...、パリッパリッポリッポリッ♪


文乃「うふふふ〜♪歯応えが嬉しい♪豚づくしの中でお口に涼風を運んでくれるぅ〜♪」


文乃「そして、豚汁、クピッ、ズズ....。...うまし...。やっぱ美味しいこのお汁♪これはおかずを超えしおかずだわ♪」


文乃は楽しそうに、料理に舌鼓をうち続ける。

周りからは、幼子を優しく見守るような目で見られ続けながら...。


文乃「ふ〜♪感動的満腹...!美味しかったぁ〜♪」


文乃はお茶を啜りながら一息つく。

するとおっちゃん達が話しかけてきた。


おっちゃんα「お嬢ちゃん、えっと食べよりんさったねぇ、見よって惚れ惚れしたわぁ♪」


おっちゃんβ「あがいにうまそうに食べよる娘さんは、わしゃぁ初めてみたで。ここんけいちゃんも作り甲斐んあったじゃろうなぁ♪」


おばあちゃんあらため、けいちゃん「ほんまねぇ♪男ん子でもあげんは食えんじゃろねぇ♪しかもあげんにうまそうに食うてもろうて、おばちゃんも感動したわ♪」


文乃「あ....、あはは..、お恥ずかしいところをお見せしました.....。でも、ほんと美味しかったです。また来ますね♪」


けいちゃん「うんうん、またきんさい、サービスするけぇね♪まっちょるけえ。あ、そうそう、おやつにコーヒーゼリー食べていきんさい、まだ食べれるじゃろ?」


文乃「おほっ♪コーヒーゼリー大好物です♪」


一同は盛大に笑い、文乃はもうしばらくの間、和やかな時間を優しく暖かい人達と楽しんだ...。


...

....

.....


ぐ〜っ

お腹がなっている。


引越し直後のある日。

文乃は必要な荷物を解いたり、自分が入る部屋の片付けをしていたが、気付けばお昼を回っている時刻だった。


文乃「そういえば...、なんやかんやバタバタで、けいちゃんにお別れ言いに行くの忘れてたなぁ。...、まぁ、またいく口実も出来たと言えるし、落ち着いて広島に行ける時には挨拶に行こうかな。」


広島に置き忘れてきたものは、まだ、あるかもしれない。

じっくり思い出して、また回収に行かなければ...。


...


文乃は、掘り起こした思い出に笑顔を浮かべる。

そして、また会える日が楽しみで、体にやる気が漲ってくるのを実感する。


文乃「よし!まずはお昼ご飯食べよ!そうしたらもうひと頑張りすっぞーっ!」


そんな、なんでもない、とある日の一コマ。

見知らぬ土地、見知らぬ人々。

それでも確かに、そこに在って、息づく人々。

ちょっとの垣根を越えればかけがえのない、大切な心の故郷となる。

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