次なるバトルロワイヤルの舞台
陽向は深呼吸を一つ。目の前にいるフィーネの笑顔が、いつもより眩しく見えた。
「フィーネ。」
「ん? どしたの?」
フィーネは首を傾げ、くりっとした猫のような目で陽向を見つめる。その仕草に、陽向の心臓がひときわ強く脈打った。
「ちょっと、真面目な話をしてもいい?」
「うん。陽向くんが真面目な顔すると、ちょっとドキッとするけど、聞くよ?」
フィーネは冗談っぽく笑ったが、すぐにその表情が柔らかくなった。陽向の空気が、いつもと違うことを敏感に察したのだろう。
陽向はまっすぐフィーネの瞳を見据える。
「俺…この世界に来てから、いろんなことがあった。突然の異世界転移に、謎の神様に、バトルロワイヤルってルール。そして、フィーネたちみたいな個性的なみんなに出会った」
「うん」
「最初は、元の世界に帰ることしか考えてなかった。でも…今は少し違う。俺、この世界で――」
言いかけた言葉を、陽向は一度飲み込む。心臓の鼓動がうるさいくらいに響いていた。
「俺…お前と、ちゃんと向き合いたい」
「え…?」
「フィーネ、俺……お前が、好きだ」
一瞬、風が止まったように感じた。
森の木々がさやさやと揺れていたはずの音が、ぱたりと途絶える。その静寂の中で、フィーネはまばたきを一つした。
「――っ」
次の瞬間。
「にゃああああああああああっっ!!」
フィーネが顔を真っ赤にして飛び上がった。
「ほ、本気!? 本気のやつ!? マジなやつ!? えっ、えっ、なにそれ今の、ちょっと待って心の準備が…いやもうずっとしてたけど、してないっていうか!!」
動揺しまくるフィーネは、尾っぽをぶんぶん振り回しながらその場でぐるぐる回り始めた。まるで爆発寸前の炭酸猫である。
「わ、私が告白するってずっと思ってたのに、なんで陽向くんから来るの!? ずるい! タイミングずるい! でもうれしい! にゃーっもう!!」
陽向はその様子に苦笑しながらも、どこかホッとした顔でつぶやいた。
「よかった…ちゃんと伝わったみたいで」
フィーネは数秒ほど暴走し、ぴたっと止まると、ぽすっと陽向の胸に顔をうずめた。
「……あたしも、大好きだよ。陽向くん」
小さな声だったけど、それは確かに彼の胸の奥に響いた。
その瞬間、フィーネの身体からふわりと光が立ち上った。
「――っ!? これ、まさか…」
「『恋愛ポイント、最大反応』って……アモーラの声が聞こえた…気がする!」
まばゆい光の中で、フィーネの耳と尻尾がふにゃっと揺れる。途端に、周囲の空間が反応し、宙に無数の光の花が咲いた。
その光景は、まるで――
「……エンディングの演出かよ」
陽向は思わずツッコんだが、次の瞬間、彼の背後に聞き慣れた声が降ってきた。
「おめでとー! 第一段階、突破でーす!」
「アモーラ……!」
そこに現れたのは、ハート模様のステッキを振り回す愛と運命の神・アモーラ。なぜかアイドル衣装だった。
「うふふ、フィーネちゃんとの『告白成功』が認証されました! ということで、陽向くんには――」
「え、なに? まさかこれでバトルロワイヤル終了とか?」
「――次のラウンド進出決定です!」
「やっぱ続くのかよ!!」
アモーラはぴょんと飛び跳ねながら言う。
「でもでも、特典として、フィーネとのペア参加権が発動でーす! おめでとー!」
「ペアって…つまり、次の試練はフィーネと一緒に?」
「その通り! これからは、恋人としての相性バトルです! ラブラブしてね!」
「強制ラブラブ展開……!」
陽向が天を仰ぐと、隣でフィーネがニヤニヤしていた。
「えへへー、陽向くん、ラブラブバトル楽しみにゃ?」
「ちょ、そんな笑顔で言うな…!」
こうして、陽向の告白サバイバルの第一章は――
大成功(?)のうちに幕を下ろした。
だが、試練はまだ続く。次なるバトルロワイヤルの舞台は、すでに準備されていた――!