デートバトル、開始!
陽向はフィーネと共に、デートバトルの舞台となる庭園へと足を踏み入れた。見渡す限り、色とりどりの花が咲き誇り、小道には幻想的な灯りがともっている。まるで異世界の楽園のような光景だ。しかし、その美しさに反して、陽向の胸の中は不安と緊張でいっぱいだった。
「うーん、どうしてこうなったんだろう…」
陽向は肩をすくめて、フィーネに視線を向ける。
「大丈夫だよ、陽向くん! 楽しもうよ! これも一つの試練だから、きっと良い結果が待ってるよ!」
フィーネは明るく笑顔を浮かべながら言った。
その言葉に、陽向は少しだけ元気をもらう。でも…心の中で何かがひっかかっていた。
「試練って言っても、恋愛の告白を成功させなきゃいけないって、結構ハードル高くないか…?」
フィーネは何も答えず、ただ楽しそうに歩きながら陽向の手を軽く引っ張る。
「まずは、いろんな場所を回って、お互いを知るのが大事だよ! だから、まずはこっち!」
陽向が少し戸惑いながらも、フィーネに引っ張られて歩いていくと、突如として声が聞こえた。
「ふん、そんな悠長なことをしていていいのか?」
陽向が振り返ると、そこにはイシュタが立っていた。どうやら陽向とフィーネを監視していたらしい。
「イシュタ、また来たのか…?」
イシュタは鼻で笑いながら歩み寄ってくる。
「俺はただ、君たちがどんなデートをするのか興味があっただけさ。でも、暇つぶしに少しだけ付き合ってやるよ」
「付き合うって、何を言っているんだ…」
陽向はイシュタの不敵な笑みに少しだけ警戒しながら言った。
「デートバトルなんだから、戦いの一環だろ? それに、俺もここに来たからには、もちろん負けないつもりだ」
イシュタは不敵に笑いながら言った。
その瞬間、フィーネが突如としてイシュタに近づき、顔をぐっと近づける。
「勝つつもり? でも、私は陽向くんのために絶対に負けないよ!」
その姿に陽向は、またもや心の中で「どうしてこうなった…」と思わずにはいられなかった。
「おいおい、そんなに熱くならないでくれよ」
イシュタはちょっと引き気味になりながら、フィーネを軽く押し返す。
「熱くなんてなってないよ!」
フィーネはムキになって言い返した。
その様子を見ていた陽向は、少しだけ肩の力が抜けた。
「こんな感じでいいのかな…。いや、こんな感じでいいのか…?」
ふと足元に視線を落とした陽向が、あまりにも次々と起こる出来事に心底呆れていると、突然、後ろから声がかかった。
「ふん、楽しそうだね」
陽向は驚きのあまり、振り返ると、そこにはリュミナが立っていた。彼女はいつもの冷静な表情で、何もなかったかのように言った。
「リュミナ…!?」
「まぁ、デートバトルだもの。無駄に時間を取らないで、さっさと試練をクリアしないとね」
リュミナはあまり興味がないように言いながらも、陽向とフィーネの方に一歩近づいた。
「…お前も参加するのか?」
陽向は少し戸惑いながら聞いた。
「当たり前だろ」
リュミナは顔をしかめることもなく言った。
「最初からこのゲームには、乗るつもりだったんだ」
その時、また別の声が聞こえてきた。
「はぁ、何なのよ、この空気…」
陽向が振り返ると、そこにはセレナが立っていた。彼女はまるでうんざりしたような表情をしている。
「セレナも参戦するのか?」
「当たり前でしょ、何言ってんの」
セレナはぶっきらぼうに答えると、足元の水面にちらりと目をやった。小さな水の精霊が彼女の周囲に集まり、無意識に水面が揺れている。
「どうせ私は陽向に告白される予定だから、無駄にバトルしても意味ないわ」
セレナはにっこりと微笑んだ。
その言葉に陽向は、一瞬言葉を失う。
「な、なんでそんなこと…?」
「だって、私、陽向が好きなんだもの」
セレナは少し恥ずかしそうに言ったが、その目は真剣そのものだった。
「えぇぇ!?」
陽向は完全に硬直した。
「これも一つの試練なんだから、あまり焦らない方がいいわよ」
リュミナが冷静にアドバイスした。
その時、アモーラが突然現れ、陽向たちの周りを一回転して言った。
「さあさあ! デートバトル、始めちゃってくださいな!」
陽向はますます訳がわからなくなり、心の中で小さく叫んだ。
「これ、どうやって乗り切るんだ…!」