表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/37

新たな仲間、試練の先に

「はぁー、やっと終わった……って思ったのに、また次かよ!」


陽向はへたり込むように腰を落とし、空を見上げた。先ほどまでの激闘で服はぼろぼろ、髪は風で乱れ、顔は土と汗でぐしゃぐしゃだ。


だが、隣でナラが満面の笑みで手を振っている。


「ねえねえ、楽しかったでしょ?風の精霊たちも喜んでたよ!」


「お前のテンション、どこから出てくるんだよ……」


ナラ・リズヴィア――フェアリー族の少女。自然と精霊を操る天真爛漫ガール。陽向にとってはありがたい仲間だが、そのノリについていけないこともしばしば。


「っていうか、今後もこんなバトルが続くのか?オレ、体育の授業でもこんなに動いたことないぞ……」


「んー、それはどうだろ?アモーラ様の気分次第、だよね〜」


「この世界、神がフリーダムすぎるんだよ!」


陽向が嘆いていると、空気がピリッと変わる。風が止み、木々が静まり返り、まるで森全体が息を潜めたかのようだった。


「……ナラ、なんか、来るぞ」


「うん。今度は、精霊たちがざわざわしてる。強い何かが近づいてるかも」


ナラがいつになく真剣な表情になったそのとき、森の奥から足音が響いた。


コツ…コツ…と、まるで舞台に登場する女優のように、気品ある足取りが近づいてくる。


「おやおや。お疲れのところ、申し訳ありませんわね。こんな森の中で、野蛮な魔物と戦わされて……」


現れたのは、紅の瞳に漆黒のドレスをまとった一人の少女。


「あなたは……吸血鬼族……?」


「ええ。私の名はヴァルシア・ナイトスカ。今後のライバル――いえ、共演者として覚えてくださってかまいませんわ」


「演劇みたいな挨拶だな……」


陽向が苦笑すると、ヴァルシアはくす、と口元をゆがめる。


「ふふ。余裕を見せているつもりでしょうけど……私、あなたの匂いが気に入りませんの」


「匂い!?え、ちゃんと風呂入ってるぞ!?入ってたはず!」


「そういう意味ではなくて。あなたの中にある感情よ。それが……どうにも惹かれる」


ナラが一歩、陽向の前に立ちふさがった。


「もしかして、陽向を狙ってるの?」


「狙う?ふふ、それはどういう意味で?」


「バトルロワイヤルってことは、ライバルでもあるってことでしょ。戦うの?」


陽向が焦って止めに入る。


「ちょ、ちょっと待って!仲間割れは良くないって!しかもまだ回復してないし、俺、たぶん全治二週間レベル!」


だが、ヴァルシアは戦う気配を見せない。ただ静かに、意味深に言った。


「今は戦わないわ。でも……あなたの本音を、少しだけ知りたかっただけ。あの神様が退屈しない理由、やっと分かってきたから」


その言葉を残し、彼女は森の闇に再び姿を消していった。


「……なんだったんだ、あの人。吸血鬼って、あんな演出過剰な種族なの?」


「いやあ、むしろ彼女は控えめなほうかも……」


ナラが小声でつぶやく。陽向は思わず青ざめた。


「え、これで控えめ……?」




その夜、陽向とナラは森の中でキャンプを張った。


「……やっぱこの世界、不思議だな」


焚き火の炎が、パチパチと音を立てる。ナラは木の実を串に刺しながらうなずいた。


「うん。でも、私たちが出会ったのも、不思議な縁だと思うよ」


「そっか……ま、悪くはないな」


「ねえ、陽向。私、もっと強くなるよ。そしたら、今度は私が陽向を守るからね!」


「え、今も十分守ってもらってる気が……」


「違うの!恋愛ポイント的な意味で!」


陽向が口にしていた水を思いっきり吹き出した。


「げほっ、ごほっ!おま、突然何を言い出すんだよ!」


「だって、バトルロワイヤルってことは、告白しなきゃいけないんでしょ?だったら、今のうちからポイント稼がないと!」


「そんなポイント制、ソーシャルゲームみたいに言うなよ!」


ナラは笑いながら、陽向の隣にぴたっとくっついた。


「だから、これからもよろしくね、陽向♪」


「う、うん……こっちこそ、よろしく……」


焚き火の炎が揺れる中、ふたりの距離はほんの少しだけ縮まった。


だが――その裏では、別のヒロインたちが密かに動き始めていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ