異世界、告白バトルロワイヤル!
「ん…? ここ、どこだ…?」
陽向は頭を抱えながら目を覚ました。目の前には、見たこともない奇妙な風景が広がっていた。周りを見回すと、空はまるで色を変えたような幻想的な紫色に染まり、どこからか聞こえてくる風の音が、まるで歌を歌っているかのようだった。
「え? これって…夢、じゃないよな?」
とりあえず周りを見渡すが、誰一人として陽向の知っている顔は見当たらない。代わりに、キラキラした衣装を身にまとった美少女たちがそれぞれ異様な雰囲気を放って立っていた。
「あれ? 君たち…もしかして…」
陽向が声をかけようとした瞬間、頭上から突然、どこからともなく響く声が降り注いだ。
「ようこそ、異世界『アモーリア』へ!」
その声に驚いて見上げると、浮遊する少女が現れた。彼女は小さな翼を広げ、優雅に空中で回転しながら降りてくる。その姿はまるで天使のようだが、どこか不気味な感じもする。
「わ、私、アモーリアの神、アモーラです!」
「え…? 神様…?」
陽向は目をパチパチさせて、信じられない思いでその少女を見つめる。だが、アモーラはしれっと笑いながら続けた。
「この世界で行われるのは、告白バトルロワイヤル! 君が勝者になるためには、最終的にひとりの異性に告白し、見事成功させなければならないのだ!」
陽向の眉間にしわが寄った。告白バトルロワイヤル…?
「いや、ちょっと待ってください。告白って、そんな大事な…」
陽向が疑問を投げかけると、アモーラはにっこりと微笑んで言った。
「もちろん、告白に失敗すれば、元の世界には戻れませんよ!」
「ええっ!?」
「さらに、ゲームが進むにつれて、他の参加者とのバトルで恋愛ポイントを奪い合わなければならないのだ!」
陽向は呆然とする。異世界に飛ばされて、知らない美少女たちと戦いながら、告白して恋愛ポイントを奪い合う? そのうえ、失敗したら元の世界には帰れないって…どう考えてもおかしい。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! そんな話、聞いてないぞ!」
「まあまあ、そんなに驚かなくても大丈夫よ。みんな、戦うのは恋愛のため! 君もきっと楽しくなるわよ?」
アモーラは、陽向の肩に手を置いて、やけに楽しそうに言った。
「うーん…まあ、頑張るしかないのか?」
陽向は困惑しながらも、異世界の女神に向かってぼそっと呟く。しかし、その時、周りの美少女たちが一斉に陽向に向かって歩み寄ってきた。
「ねぇ、あなたが主人公の陽向くんかしら?」
声をかけてきたのは、冷静で優雅な雰囲気を持つエルフの少女、リュミナ・フェルゼリアだった。彼女は無表情ながら、優雅に一歩踏み出す。
「そうだ、君が参加者の中で一番の異世界人間なんだってね」
その後ろから、甘えたような声が響く。
「陽向くん、私と一緒に過ごしたいなぁ…♡」
振り返ると、そこには可愛らしい猫耳の獣人、フィーネ・ルゥがいる。陽向は一瞬で顔が赤くなる。
「う、うん? ちょ、待って…何言ってんだよ…」
「どうしたの? 恥ずかしがらないで、私がちゃんと面倒みてあげるから♪」
フィーネがぐいっと陽向に手を伸ばしてくる。その手を避けようとする陽向だが、そのとき、少し離れた場所から冷たい声が聞こえてきた。
「ふん、私はこのゲームを真剣に戦うつもりだから、無駄に感情を使うつもりはない。邪魔しないでくれる?」
振り返ると、そこには高飛車な悪魔の少女、イシュタ・バルグレイヴが立っていた。彼女は小さな手を振り、陽向を一瞥する。
「それより、あなたが他の参加者とどう戦っていくか、興味があるわ」
「わ、わかってるよ…! でも、どうしてこんな状況になってるんだよ…?」
陽向はさらに困惑し、頭を抱えた。
「私が説明するわ!」
と、穏やかな声がして振り返ると、そこにはおっとりした人魚族のセレナ・マーレが優しく微笑んでいた。
「あなた、これからいろんなことがあるけれど、心配しないでね。私たちがちゃんとサポートするから…」
その言葉に、陽向はなんだか心強いような、でも不安を感じるような気持ちになる。
「うーん…もう、何がなんだか…」
そんな陽向の心情をよそに、アモーラは満面の笑みで言った。
「さぁ、準備は整った! これからが本番よ! 恋愛ポイントを集めて、最後に告白する相手を決めなさい! 最終的には、君が選ぶ人に告白しなければならないからね。どんな試練が待っているか、楽しみにしていて!」
「試練って、具体的にどんな…?」
陽向が問いかけたところで、アモーラは意地悪く笑った。
「それは、君がゲームを進めながら気づいていくことよ。さぁ、始めましょう、ラブアリーナ!」
──と、同時に突然、周囲の景色が一変し、陽向は新たなステージへと足を踏み入れた。
「俺…、こんな異世界で告白バトルロワイヤルに巻き込まれるなんて…」
陽向は深いため息をつきながら、目の前に並んだ異種族の美少女たちと共に、無謀な戦いの幕を開けたのだった。