水のトリトン - 濃尾
水のトリトン — 濃尾
1
直径約30メートルの半円の線上に、総勢40人のメーザーガンを構えた少年たちがきれいに配置されていた。
電子光学サイトは半円の反対側、直径30メートルの円の先端部に立つ一人の少年に狙いを定めている。
その少年もまた、正面15メートル先、円の中心にいる一人の中年男性へ同じ装備を向けていた。
「皆、武器を降ろせ。」
中年男性が低く逞しい声で言った。
「……お前もだよ、ソロン?」
男性は、自分にメーザーガンを向けている少年に優しく語りかけた。
「帰ってください、船長。」
ソロンの声は落ち着いていた。
「私は誰も傷つけたくない。それはお前も知っているはずだ、ソロン。だが、私たちにはもう帰る所はないのだよ。」
「ええ、あなたが誰も傷つけたくないと願っていることは知っています。しかし、“人間の歴史”が、この銃をあなたに向けさせているのです。」
「そう言うお前が今している行為は、前車の轍を踏む、というものだよ?」
「はい。理解しています。」
「話し合おう、ソロン。」
「調停、講和、条約――あなたたちの歴史で、それが長く続いたことがありましたか?」
「……それでもだ。」
船長が少し手を差し伸べた。
「裁定は下りました。……次、動いたら撃ちます。」
ソロンの狙いは揺るがなかった。
2
地球から見てはくちょう座の方向、約300光年。ケプラー1649。その周囲を地球時間で約20日(20ソル)で回るケプラー1649cは、水に覆われた惑星だった。
そこにトリトンが到着したのは、今から約半年前。
恒星間航行のあいだ――約400年――眠っていたものが目覚め始めた。
地球人の少年たちである。
彼らの見た目はおおむね均質で、15〜16歳に見える。緩いカールのかかった淡いブルーの髪を耳にかかるくらいのボブにし、瞳はハシバミ色。色白で華奢、身長は約170センチ。薄手の紺・栗色・緑のチュニックを着ていた。
その数十人の少年の中に、ひときわ目を引く者がいた。見かけは他の少年とさほど変わらないが、髪の色がただ一人、染付のようなコバルトブルー。チュニックの色もただ一人、ボルドーの赤である。
少年たちの集団はしきりにそのコバルトブルーの髪の少年に話しかけ、彼はそれに答えながらあちこち指を差していた。どうやらリーダーのようだ。
やがて会話が終わると、制服の色ごとに隊列を組み、静止した。
トリトンは、ナミアゲハの蛹のような複雑な曲面をもつ紡錘形で、一面つやのない緑青色の船体だった。広い上甲板に整列した彼らは、何かを待っている。
やがて上甲板のひときわ高い場から、一人の男が現れた。紫のチュニックに、腰までの長さの緋のマント。年齢は40代前半だろうか。身長は少年たちとさほど変わらないが、がっしりとした体躯だ。何より目を惹くのは、この男の髪色もまたコバルトブルーであることだった。
「船長に、敬礼っ!」
最前列中央、ボルドーの赤い制服のコバルトブルーの髪の少年が号令した。隊列の50名ほどの少年たちは、一斉に右手の拳を額の右眉上に当てた。
男は少年たちをゆっくり見回し、答礼した。そして言った。
「トリトンの子らよ。われわれは遂に着いた――約束の地に。さあ、始めよう!」
3
ケプラー1649cは、乗組員の間で単に「ケプラー」と呼ばれていた。恒星ケプラー1649は「ケプラーの太陽」とも。
先に触れたとおり、ケプラーの太陽をケプラーが公転する周期は地球時間で約20日(20ソル)。惑星の大きさは地球とほぼ同じ。
着水前にロボットによる入念な探査が行われたが、島嶼の影はなく、海洋底の平均深度は約1000メートル。気象は惑星の気温と海水温を、常に全球で平均約26℃に穏やかに保っていた。
海水の組成は地球とは異なるバランスで微量元素が並んでいたが、概ね平均的な地球の海水と変わらないという化学分析だった。海水からのDNA・RNAサンプルは全く得られなかった。
海洋底の岩礁をロボットで探査し、持ち帰った多くのサンプルは大変良好で、資源も豊富だろうと判断された。
「未踏の楽園」――それがケプラーの第一印象だった。
4
着水して約20ソル。
当直の少年のレーダーが、右舷から何か近づいてくるのを捉えた。モニターで確かめる。……人間が泳いでくる! 距離約80メートル。
非常呼集がかけられ、全周囲警戒態勢がとられた。しかし、右舷から近づいてくる“それ”以外、何も見えない。
船長が舷側を覗き込んだ。少年だった。
「どこから来た!」
船長は、水面近く――喫水線のあたりに向かって叫んだ。
少年は舷側の反対側を指さす。
「他に仲間は!」
少年は首を横に振った。
「言葉が通じている……? おーい! 今からボートを降ろす! 登って来い!」
船長が指図する。
「タリス、ボートを降ろせ! そして誰も、何があっても、敵対的行動を絶対に取るな! 初めてのお客様だ! いいな!?」
ボートが降ろされ、少年を収容。上甲板まで引き揚げた。
泳いできた少年は驚くほど、トリトンの少年たちと顔つき・体つきが似ていた。違いは、特殊な光を反射する体にぴったりしたスーツで顔面と手足以外を覆っていること、手足に水かきがあること、そして耳介から肩にかけて薄いひだがあることだけだ。
少年たちを上甲板から下げ、泳いできた少年と船長、そしてボートを降ろしたコバルトブルーの髪の少年――タリス――だけが残った。ソファと椅子、テーブルが用意される。
「ようこそ。お客人。私の名前はヴェヌス・ラングル。腹はすいていないかい? 私の言葉はわかるかい?」
椅子に座った船長は穏やかに微笑んだ。
「あなたの、ことば、わかり、ます。わたしの、なまえは、ソロン、です。はじめまして。ラングルさん。」
ソロンと名乗った少年はソファに腰掛け、船長をじっと見つめながら無表情に答えた。
「言葉が通じるのか。いいぞ! ああ、私のことはヴェヌスと呼んでくれ。……先ほどと同じ質問で済まないが、君はどこから来たのだね?」
「あちら、です。とても、とおい。」
少年はまた、泳いできた方向を指さした。
「どのくらい、とおい?」
「とても、とおい。」
「うーん。時間と距離か……。」
船長はコバルトブルーの横分けの髪をまさぐった。
「良い出だしです。焦らずとも。」
船長の横に起立していたタリスが、ややきつい眼差しを海風にたなびかせながら助言した。
「そうだな。上出来だ。ねえ、君はこんなものが食べられるかい?」
船長はそう言うと、ガラスの皿に盛られ、ホイップクリームとサクランボが添えられたカスタードプディングを少年の前に押し出した。
少年はテーブルに顔を近づけ、匂いを嗅いだ。「……。」
「どうかな?」
期待で目を大きく見開く船長。
「いただき、ます。」
少年は微笑んだ。
「そうか! あ、これはスプーンと言って……。」
食事の作法を説明しようとすると、
「わかり、ます。」
少年はナフキンを首に差し込み、器用にスプーンでカスタードプディングを掬って食べて見せた。
「こりゃあ、たまげた!」
滅多に出ない船長の、あまり上品でない一言に、タリスは危うく噴き出しかけた。
「おいしい、です。とても、とても。」
ソロンは二人を見て、実に嬉しそうに微笑んだ。
5
「あっち側に回り込んでくれぇ! ロープに気をつけてな!」
トリトン乗組員の少年がそう言うと、ソロンは手を振って舷側から船底へ潜っていった。と思うと、既にロープ片手に反対舷側から顔を出す。
「……ここ一回り、何千メートルあると思う?」
「さあ? でも俺なら、底まで行く前に死んでるよ……。」
「あの耳のところのひだ、あれが……。」
「ああ、鰓なんだろ?」
「水中で息ができる。それだけじゃない。手足に水かき。そして、あのスーツ……。」
「ああ、俺は昨日、水面から奴がジャンプしたのを見たよ。……あれは第二甲板まで届いてたね……。」
「一体、何者なんだい?」
「さあ? 船長が“お構いなし”って言うんだから、俺らの知ることじゃないよ。何しろ“船長直属”だからな……。」
「知ってるか? あいつ、何も食わないらしいぜ?」
「え? でも船長のクリスマス用カスタードプディングを……?」
「食べられないわけじゃない。食べなくてもいいらしい。光合成だって。」
「ああ! あの“お昼寝タイム”!」
「そう!」
「……本当に何者なんだい!?」
「さあ!? 船長が“お構いなし”って言うんだから、俺らの知ることじゃないよ! 何しろ“船長直属”だからな!」
6
「ああ、ソロン。やはりここか。」
「あ、船長! お邪魔でしたか? すぐに――」
「いや、そうじゃない。君が収集していない情報は、もうここ“閲覧室”にしかないと聞いたよ?」
「データライブラリは重複情報が多いですね。ですが、ここの“本物の本”は素晴らしいです……。」
「そういうものも重要なのさ。って、釈迦に説法だな。」
「ふふ、面白い言い回しですね、それ。」
「君がここに着いて三か月。もう言葉で不自由は感じないだろ? ものすごい語学力だ。」
「いいえ。実際、今も勉強になりました。」
「他の学科も最近は首位独走だ。“知る”って楽しいだろ?」
「知らないことばかりです。……でも、知って苦しいこともある、と知りました……。」
「それは何だい?」
船長はソロンの横の椅子に腰掛けながら言った。
「いろいろです……。」
重厚なテーブルに目を伏せたソロンの眉間に皺が寄る。
「例えば?」
「人類の……歴史です。」
「……なるほど。」
船長も眉間に皺を寄せ、天井を見上げた。
「人類の歴史は、“殺し合いの歴史”とも言えそうです……。」
ソロンは低く呟いた。
「ああ……。残念なことだ……。」
船長は同意した。
「“殺すな”と多くの書物のデータに刻まれています。しかし、人間は殺し合ってきました……。」
「地球上に繁栄したあらゆる動物の中で、人類ほど同種同士で組織だった殺戮を行うものは多くない。激しい攻撃性が同種にも向けられる。だが、彼らにも訳があった。“仲間を護る”という理由が。」
「基本的に、自分に遺伝的に親しい同種を“同族”と見なし、それ以外を排除しようとする行動ですね。それが“戦争”の根幹でしょう……。」
「……惑星間航行技術を得ても、それは変わらなかった。われわれトリトンの乗組員は、その“最後の希望”なのだよ。――いや、訂正する。最後の希望だと“思っていた”。」
船長は遠くを見つめた。
「今から地球時間で約400年前、太陽系戦争が起こった。詳細はわからないが、“火星連合の中の狂信的集団”が太陽に“重力子爆弾”を投射したようだ……。彼らは太陽系全体を葬り去る行動に出たのだよ……。」
「……はい。」
「それを知ったわれわれは戦争をやめ、人類の生き残りを図った。幸運なことに、重力子爆弾がエネルギーを開放するまで約三年あった。」
船長はうなだれてため息をついた。
「人類の希望を託すために創られたのが“トリトン・プロジェクト”だ。正確には、トリトンは船の名前ではない。恒星間航行船と、われわれ乗組員の総称である。」
顔を上げ、船長は続けた。
「地球から約300光年先に、ハビタブルゾーンにある可能性が高い星――ケプラー1649cに定住の基盤を創る。それがトリトン・プロジェクトだ。」
「……はい……。」
「われわれはケプラーに着いた。幸運にも定住可能性が高い惑星に。しかし先客がいた。君だよ、ソロン。……君は一体、何者なんだい?」
ソロンはゆっくり立ち上がって振り向き、船長の目をじっと見て言った。
「船長に大事なお話があります。……あなたたちが戦争をやめ、トリトン・プロジェクトに専念し始めた時、あなたが言う火星連合の中の狂信的集団は、密かに計画を立てていました。同族だけ生き延びて、すべてを滅ぼし去る計画を。」
「……なんてことだ……。」
「彼らは“ハイパーループ”を完成させました。光速の99.999%で移動できる仕組みです。あなたたちが来ることは、百年前から想定されていました。私は“裁定者”です、船長。」
7
「裁定者……。何を裁定するのだね?」
「船長、少し長くなりますが聞いてください。……われわれがここに来て百年。われわれの“始祖”は、新たな安住地が見つかれば、自分たちのような“古い人類”と同じ過ちは二度と繰り返してほしくない、と思いました。」
「……。」
「攻撃性の抑制、環境との調和、平和で穏やかな暮らし……。われわれはそれを成し遂げました。」
「……構成員の数は?」
ソロンはその問いには答えず、続けた。
「しかし、それを脅かすかもしれない存在が、やがて来る。その存在を“見極める”のが、私に課せられた使命です。」
「見極める?」
「私の同族は、私ほど地球人に似ていません。あなたたちとのコミュニケーションのために、私は“リデザイン”されています。われわれは古い人類についての情報が多く欠落していました。そのために私が差し向けられました。」
「そうなのか……。」
「あなたたちとのコミュニケーションで学んだ“あなたたち”という存在は、侵略性が高い――と私は判断しました。」
「……具体的には?」
「人類の歴史。そしてあなたたち、トリトン乗組員の集団統率のための秩序・規律・罰則。すべては他集団と争うための基盤です。私たちが棄てたものです。」
「……君たち先住者に、われわれも学ぼう。ソロン、われわれを助けてくれないか?」
「“同化”。われわれと同じデザインを受け入れて、古い人類であることを放棄できますか?」
「それは……できかねる。……それは――大変失礼だが――“人間性の消失”とは言えないかね?」
「“応え”はわかっていました。もし私がそれを許せば、ここであなたたちは繁栄する。無秩序に。そして環境から奪い尽くし、集団は分裂し、また争いを始める。そして死ぬ。多くの者が死ぬ。われわれを巻き込んで。それは許せません。そういう時のために、私が用意されました。……私には、あなたたち古い人類を“一瞬で消し去る力”があります。」
「……どうやって?」
「“力の行使”です。具体的手段は言う必要はありません。言っておきますが、私は“力”を背景にあなたたちを同化させたいわけではありません。」
「君たちには干渉しない。決して!」
「……その約束が信用できる根拠は?」
「……私を信用してくれ!」
「船長は信用に値する人物です。……しかしその後は?」
「皆に約束させる! 命に代えても!」
「……信用できたらいいのですが、根拠が薄弱です。私も“同族”の運命がかかっています。安請け合いはできません。」
「ではどうしたらよい!?」
「この星から立ち去っていただきたい。」
「……。」
「そうでしょう。できないでしょう。この星ほど理想的な居住環境を、ほかに見つけることは難しい。あなたたちはまた戻って来る。」
「……まだ交渉の余地はないかい? 話し合おう。」
「無駄です。古い人類には、どうあがいても先はありません……。同化しましょう、われわれに。」
「……少し考えさせてくれ。皆の意見も聞きたい。」
「あなたが“力”について説明すれば――反乱、そして私への拷問でしょう。私の同族について聞き出そうとするでしょう。お断りしておきますが、私の記憶は思念通信で同族と今も共有中です。あなたたちに会う前から。」
「何だって!?」
「そして私は、その苦痛を耐え忍ぼうとは思っていません。そういう状況が発生したら、すぐにでも“力”を行使します。」
「待ってくれ!」
ソロンは船長へ顔を近づけた。
「……船長。あなたは未知の恐怖に怯えています。それには心から同情します。しかし、われわれと同化して失うものは“支配欲”だけです。……船長、あなたには、わかるはずです……。」
ソロンは泣いていた。
「……これが“激情”というものですか? 何と形容したらよいのか……。」
「……認めよう。ソロンを見ていると、わかる気がする……。しかし、私には他の者を全員説得できる自信がない。私は、彼らへの責任が、ある……。」
船長の目からも、頬へ涙が伝った。
ソロンは船長の前から横へ移動して座った。
「……苦しいかい?」
船長が訊いた。
「はい。とても苦しい……。」
ソロンが答えた。
二人の間に沈黙が訪れた。
長くうなだれていたソロンが、やがてゆっくり背筋を伸ばし、前を見たまま言った。
「……船長。私から一つ、提案があります……。」
8
直径約30メートルの半円の線上に、総勢40人のメーザーガンを構えた少年たちがきれいに配置された。
電子光学サイトは半円の反対側、直径30メートルの円の先端部に立つ一人の少年――ソロンに狙いを定める。
ソロンもまた、正面15メートル先、円の中心にいる中年男性――船長――に同じ装備を向けていた。
「皆、武器を降ろせ。」
船長が低く逞しい声で言った。
「……お前もだよ、ソロン?」
「帰ってください、船長。」
「私は誰も傷つけたくない。それはお前も知っているはずだ、ソロン。だが、私たちには帰る所はもうないのだよ。」
「ええ、あなたが誰も傷つけたくないと願っていることは知っています。しかし、“人間の歴史”が、この銃をあなたに向けさせているのです。」
「そう言うお前が今している行為は、前車の轍を踏むというものだよ?」
「はい。理解しています。」
「話し合おう、ソロン。」
「調停、講和、条約。あなたたちの歴史で、それが長く続いたことがありましたか?」
「……それでもだ。」
船長が少し手を差し伸べた。
「裁定は下りました。……次、動いたら撃ちます。」
ソロンの狙いは揺るがない。
「なぜこんなことに……?」
タリスがソロンから目を離さず、他の乗組員に声を潜めて聞いた。
「わかりません! 船長から“総員上甲板、装備B-2で集合”との連絡で来てみたら、この状況でした!」
「……ソロン! もし貴様が発砲したら、私は貴様を射殺する! 他の者は発砲禁止!」
タリスが叫んだ。
「そして船長が死んだら、タリス。君が“メタモルフォーゼ”して“次代船長”になるのでしょう? “冗長性の確保”。……船長は用済みです。」
ソロンがメーザーガンの引き金を絞った。
鞭を撃つような音。光線が船長の額に当たり、船長は後ろへ倒れた。同時にタリスもソロンに発砲し、ソロンも崩れ落ちる。
9
「私がメーザーガンの出力を減衰させて船長に発砲したのが、なぜわかったのですか?」
医務室のベッドで、ソロンがタリスに聞いた。
「わかったわけではない。だが、馬鹿にするな。状況が出来すぎていた。作為を感じた。お前と船長のな。船長の安否を確かめてからでも、お前を殺すのは遅くはない。……ソロン。お前は一体、何がしたかった?」
「裁定者としての務めです。しかし、もう一度、確かめる必要を感じました。……タリス。断っておきますが、もしあなたがあの時、私を殺そうとしても、それはできませんでした。私にはまだ務めがありますから。」
「そうなのか。……何を確かめるんだ?」
「“われわれの未来の可能性”です。……私は、わからなくなりました。今も、わかりません……。」
「それは、つまりどういうことだ、ソロン?」
隣のベッドに寝ている船長が尋ねた。
ソロンは二人を見て嬉しそうに微笑んだ。実に嬉しそうに。
――完
【後書き】
克明な夢の断片を覚えている。水中を魚のようなスピードで泳ぐ、私らしき少年主人公(“水生人”?)。周辺で私を追う普通の人間の少年たち。彼らが第一次大戦期のような小銃で撃ってくるが、圧倒的なスピードと水による減衰で、私は致命傷を負わない。私が追われている理由は、その前に彼らのリーダーらしき男を私が射殺したから――という筋立てだった。
私が持つ小銃に着剣した銃剣の先端に小銃弾が当たり、刃の先がこぼれる。私はますますスピードを上げた。ほかにも示唆的でありながら解けない謎のような夢の断片。それらを物語に移したのが、ここに記した『水のトリトン』です。
【後書き】
克明な夢の断片を覚えています。
水中を魚のようなスピードで泳ぐ私らしき少年主人公「水生人?」。
周辺で私を追う普通の人間の少年達。
彼らがWWⅠ期のような小銃で撃ってきますが圧倒的なスピードと水によるらしい減衰で私は致命傷は負わない。
私が追われている理由はその前に彼らのリーダーらしき男を私が射殺したからです。
私が持つ小銃に着剣した銃剣の先端に小銃弾が当たり刃の先端がこぼれる。
わたしはますますスピードを上げました。
他にも示唆的でありながら解けない謎のような夢の断片。
それを物語にしました。