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公園にあるペン
それは、気付けばそこにあった。
誰が落としたのかもわからない。何故そこに在るのかもわからない。誰かに踏まれて折れてしまうか、風に攫われて転がっていけば、それで終わりの筈だった。
たまたま俯いて歩いていた小学生がそのペンを拾った。彼は導かれるようにそれを拾い上げて、いたずらに、無作為に地面に線を描いた。
ぐちゃぐちゃなその線を書き終えた彼は、ペンをそのまま戻して置いて、立ち去って行った。
次にペンに気づいたのは仕事に疲れたサラリーマンだった。彼はペンに呼ばれるように手に取って、地面にギザギザな線を描いた。
ある時気づいたのはお腹の大きな女性だった。彼女は重たい体でしゃがみ込んで、震える手で地面に線を描いた。不格好だけど、大きなハートマーク。
ペンはまだそこにあった。
気づいた者は手に取って、想いのままに線を描いた。
ぐるぐる。ギザギザ。ふわふわ。かくかく。
ペンは、誰かのためにそこに在る。