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63 家族

夏も半ばになると、それまでほとんど予定が入ってなかった私もにわかに忙しくなってきた。

幸い、敷地内で挙げるような気楽極まりない式なのでそんなに難しいこともないけど、お姉様の挙げてた式のような準備が必要なら私は永遠に結婚できなかったかもしれない。


打ち合わせにわざわざ司教様が来てくれたのには驚いたが、良い人そうなおじいさんでほっとした。「普段堅っ苦しい集まりにばかり呼ばれているので、わしにとっては久々に楽しげな仕事ですな。お二人の結婚式は自分も楽しむくらいの気持ちで執り行いますわ」とか言ってたが、前向きに参加していただけるみたいでありがたい。全体的にゆるい感じにはなりそうだけども。


エルディの参列は当初から予定されていたが、スピカとザビも式の後に行われる庭でのパーティからなら参加できるんじゃないかとサイラス様が言ってくれた。スピカは行儀が良く、仔犬らしからぬおっとりさんで、普段常にサイラス様の足下で寝ている。私が来ると私のところへも来てくれるが、やっぱり私のところでも寝ている。ザビに周りをうろちょろされるとうるさそうにしているが、気が向けば一緒に遊んでくれてる良い子だ。ザビもまあ、リードにつながれてればいけるかな……。


エルディたちがパーティに参加することを家族に伝えると、お姉様は「じゃあ、キャシーとデイジーとリジーも連れて行こうかしら」とか言ってるし、ロイ君も「連れて行って良いならグリフォンも行くよ」と言っていた。犬と猫と鳥が勢揃いか、大丈夫かな。


「楽しそうだし、良いんじゃないですか」


さすがにだめだろうと思って聞いてみたらあっさり許可してくれた。


うちの親族はだいたいこういうノリだし、友人達もうちがこういう家だとはわかっているけど、サイラス様の親戚の方たちが驚くのではないか心配したが、サイラス様ご本人によればサイラス様は身内の間では少し変人扱いされているので多少突飛なことをしても周りは全く気にしないらしい。一応事前に周知しておけばなんの問題もないだろうってことだった。

自分のことながら、すごく自由な式だと思うが、なんとなくそれも私とサイラス様らしい気もする。



サイラス様の情緒は最近は完全に落ち着いている。他人の結婚式でマリッジブルーになった時は焦ったが、多分、私の、その、好意も伝わっているんじゃないだろうか。


「ところでマリー、今日は何か持ってきているみたいですけど?」


「はい、これなんですけど。結婚前にお渡ししたくて」


一年くらい前からずっとサイラス様の机の上にいる淡い灰色の犬のぬいぐるみ。持ってきた包みから取り出して、その隣に同じようなサイズの淡い茶色の犬を置いた。


「これが私で」


「エルディとスピカとザビです!」


続いて少し小さめの犬を三体周りに置く。


「これから皆ずっと一緒なので、サイラス様の犬のぬいぐるみにも家族を連れてきたくて」


「ずっと何か作っていたと思ったら、これだったんですか。しかし本物そっくりですね! マリーもなぜかそっくりですが」


「元々作るのが遅いのと、ちょっとずつ作ってたのと、四匹分っだっていうのでお渡しがすっごく遅くなりましたけど」


冬から着手していたのでさすがに遅すぎな気がするけど、仔犬たちの分はちょっとイメージが固まってから作り始めたので仕方がないと思おう。


「あなたの手を通すと全てがあたたかくなる。家族なんていうものを知らなかった私にも雰囲気が伝わってきます」


サイラス様がライトブラウンの犬を抱きしめてそう言ってくれた。一年前もそうやって喜んでいてくれたのを思い出す。


「いつか私たちの間にも子どもが生まれたりしたら、ぬいぐるみの家族もまた増やしちゃいましょう」


最初は一匹だったサイラス様色の犬の周りが、人生の経過とともににぎやかになっていったらいいなあと思う。


「私とマリーの子ども……」


サイラス様は目を丸くした後、数歩壁側に歩いて行き


「きゃあ!」


なぜか壁に頭を打ち付けた。ゴツッとかいう音がしたので相当痛そうだが。


「あ、あの、大丈夫ですか? どうしたんでしょう、サイラス様?」


「えっと、ちょっと、机の犬が増えて嬉しくて、つい。幸せがあふれてしまって壁に頭を」


喜びの表現の仕方としては痛そうすぎるけども、喜んでくれたみたいで良かったのかな? 額大丈夫だろうか?


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