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62 伝わりますように

今日はついに私も大聖堂に来ている。サイラス様から聞いてた通り、屋内の照明は控えめで少し暗くなっていて、そのぶん大きなステンドグラスから入ってくる光がすごく荘厳な雰囲気だ。自分が王族の結婚式でこんな前の方の席にいることにうろたえそうになるけど、花嫁のお姉様はさすが堂々としている。ステンドグラスから差し込む光を浴びる婚礼衣装を着たお姉様は、女神様みたいにきれいでそこらじゅうから感嘆の声が漏れていた。

結婚式が始まると大変そうにしていただけあって一挙手一投足にすらすごい順序がありそうな婚礼の儀式が続いて、見ているだけでお姉様に拍手を送りたくなる。ついでにアラン王子にも。


一連の難しそうな儀式が終わっても、誓いの言葉もなんか難しいし、挨拶も難しいし、なんかいろいろとすごくて王族って結婚するのも大変なんだなって思った。格式高すぎてうちの親戚とかの結婚式とは概念レベルで違う、全くの別物だった。これは準備も疲れるはずだわ。

式が終わった後、アラン王子とお姉様がいろいろな人に挨拶して、夕方にさしかかりそうな頃解散になった。サイラス様はつい最近も王族の結婚式に出席していたからそうでもないかもしれないけど私はちょっと感激した。主にお姉様の苦労が最高の形で報われてたことに。


帰る前にサイラス様のお邸に寄って二人でわいわい感想を言い合った。


「お姉様、すっごくきれいでしたね!」


自分の姉ながらこれは言わずにいられない。


「アラン王子もああしているとまともに見えましたね」


褒めてるのか微妙なところだと思う。


「でもお姉様も今日から王子妃かぁ。すごいなあ」


結婚式も大変そうだったけど、明日からも多分大変なんだろう。優秀なお姉様だから務まるんだと思うと本当に尊敬する。


「え」


「……マリーにとってすごいものですか? 王子妃が?」


サイラス様が私に聞いてくる。声のトーンが普段より少し暗いような気がするけど疲れているんだろうか。


「だってすごくないですか? 王族ですよ」


あらゆることが大変だろうし、絶対に自分には無理だから、本当にすごいと思うんだけど。

でもそう言ったらサイラス様は思い詰めたみたいに固まってしまった。どうしたんだろう?


「マリー、ちょっと懺悔してもいいでしょうか?」


声を絞り出すみたいにサイラス様が聞いてきた。


「私で聞けることなら何でも聞きますけど、何かあったんですか?」


「先日、ある高貴な人が、もしかしたらあなたに好意を持っているかもしれなくて、私はその人があなたに会えないように邪魔をしてしまったんですが」


「え? そうなんですか? でも私たち婚約してますし、それは別にかまわないのでは?」


その人に会ったとしてどうなるわけでもないし。


「でも、マリーの権利というか、そういう別の幸せの機会を私が勝手に壊したというか。今思えば相談すれば良かったとも思うんですが、私の嫉妬心みたいなもので先走ってしまって。仮にその人とマリーが会ったとしても、私以上にあなたを好きになれるはずなどないし、あなたはきっと私を選んでくれると思ってはいましたが、百万分の一の可能性ですら怖くて」


「自分のそういう身勝手なところが醜悪なことは自分でもわかっているんですが、今更清らかな心も手に入りませんし。自分のこの性格が今後もあなたの幸せを邪魔するんじゃないか不安になって」


この感じだとサイラス様はすごい一大決心でこの話をしてくれているみたいだが、私にとってみれば名も知らぬ人と会うのを邪魔されたとかは全く問題ではない。むしろ私のことを好きかもしれないとかいう人をサイラス様が私に引き合わせて来たりしたら、そっちのほうがはるかに嫌だ。


どうしよう、すごく久しぶりにサイラス様が不安定な感じになってしまった。

サイラス様は普段はいつも余裕があって、お仕事の時とかは特に自信に満ちあふれているのに、たまに私絡みのことで妙に自信がなくなる気がする。サイラス様と知り合ってからもうそれなりの時間を一緒にすごしているのでサイラス様が心から私を大切にしてくれているのは痛いほどわかるが、私からの好きはサイラス様に正しく伝わっているのだろうか?


「あの、サイラス様。サイラス様は私と違ってすごく物事を深く考えてるからいろんな気持ちになると思うんですけど」


そろそろこれだけは伝わってほしい。


「一つだけ言いたいのは、私はサイラス様のことが大好きですし、この世界で私と両想いになれる男性はサイラス様一人しかいませんからね! 一生!」


言いたいだけ言って、向かいのサイラス様を思いっきり抱きしめる。私から抱きつくのは初めてで加減がわからなかったのと、想いを込めすぎたというか、力一杯しがみつきすぎて愛情表現というよりも体当たりをしかけたみたいになってしまったが。


「……ありがとう。マリー」


サイラス様も骨がきしみそうなくらい強い力で抱き返してくれてお互いぎゅうぎゅうだったが、少しでも私の気持ちがサイラス様に伝わってればいいなと思う。


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