表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/69

59 全く普通の話

先日王太子の結婚式が終わって、今日は祝賀パレードの日だ。

街はすごい熱気で素晴らしいことだと思う。しかし私はああいう人混みの中で思った方向に進むことができないというか、人の波に流されていくというか、下手したら転んでつぶされたりしないか心配というか、そういうのが怖いのでおめでたいこととは思いつつ参加はしない。

サイラス様のお邸の中から静かにお祝いしていよう。


「おめでたいですよね。次はお姉様かぁ」


「その次は我々ですね。マリーの花嫁姿が楽しみです」


サイラス様は建国祭の時に私に素晴らしいドレスを作ってくれたが、新年祭の時やちょっとしたパーティに二人で参加することになった時なども素敵な衣装を用意してくれた。ちょっと贅沢をしすぎではないか気になるのだが、「マリーにお金がかからなすぎて、全然使うところがないのでドレスくらいは贈らせてください」と言われた。いくらするのか怖くて聞けないが。

しばらく前に二人で婚礼衣装の採寸に行った時もサイラス様は衣装をどうするかデザイナーの人たちと真剣にお話ししていたが、私はあんな風に即断即決で物事を決めたり、人に的確な指示を出したりできない人間なので見ていてすごいと思う。

帰り際にはそこのお店がすごい熱気に包まれていて、お店の偉そうな人に


「最高の衣装にしましょう! お嬢様!」


と拳を握りしめて熱く言われた。一体どんな仕上がりになるのかドキドキするが楽しみだ。


でもこんなふうに思うのはおこがましいけど、ついに結婚式の第一弾が来たなあと思う。


「サイラス様、王太子と王女様の結婚式ってどんな感じでした? 私大聖堂って外からしか見たことがなくて」


私もお姉様の結婚式の時は大聖堂に行くんだけど、サイラス様は一足先に見てきたのだし感想を聞いてみたい。


「内側から見るステンドグラスの美しさはあまり他にはない趣のある光景なので、ぜひマリーにも見てもらいたいですね。結婚式自体はおごそかな感じで進んでいました。そこまで楽しいものではなかったですが、面白い話なら聞きましたよ」


「面白いお話ですか?」


「エリック王子のことなんですけど」


外国に留学してるとかいうアラン王子のお兄さんだったっけ。


「兄弟達の結婚式に顔を出すために帰国したら、道中で何者かに襲われて大怪我をしたらしいんです。襲撃者はその場で撃退されたらしいですし、王子本人も逃げおおせたは良いものの、同行者ともはぐれてどこにいるのかもわからず、そのまま力尽きてオオカミの声まで聞こえてくる。本人も死を覚悟していたらしいんですが」


すごいことになっていたみたいだ。


「森の妖精のような優しい女性がエリック王子を助けてくれたとか。その女性が倒れたエリック王子を安全な所まで運んでくれて命拾いしたらしいです」


妖精みたいな優しい女性、すごい力持ち!


「すごいですね! 私もこの間倒れている人を運ぼうと思って持ち上げようとしたけどびくともしませんでしたよ。人間の重さに驚きましたもん」


「……え?」


「ザビが馬車から逃げちゃって追いかけているうちに林の中に入ってしまって。ザビとエルディが吠えるから何かと思って見たら人が倒れてたんです。死体だったらどうしようかと思いましたけど」


「ちなみにいつ頃のことですか?」


「ザビとスピカが来た初日なのでけっこう前だったかな」


「でも、案外人って倒れているものなんですね。エルディもよく怪我している生き物とか動物の死体とかは見つけますけど、人間は初めてでした」


王都だし、人間が多いからだろうか。怪我をしたり具合の悪い人も比例して多いのかもしれない。


「ええ。人が倒れているなんてよくあることですし、思い返してみればエリック王子のこともただ親切な人がいたというだけのごくごく普通な話でしたね。特別なことは何もありませんし、そこから何か起こるわけでもないですし。ようは『人には親切に、困っている人がいたら助け合おう』そういうことでしょうか」


「本当にそうですね、王太子がご成婚されたおめでたい時にエリック王子が無事で良かった。助け合いの精神と親切な人のおかげですね!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ