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57 犬が見つけたもの

年が明けしばらくして、ついに仔犬が私たちのところへやってくることになった。

名前は黒毛の男の子ザビで、茶色の女の子がスピカに決まった。これからお互いににぎやかになりそうな予感がする。


カリナによればこの二ヶ月で丸い仔犬は、しっかり犬の形をした仔犬に進化していて馬車移動も全然問題ないらしい。同じ所の往復だけだが、移動の多い生活をしている私としては大助かりだ。今日カリナは用事があるので来れないが、お使いの人がこれから馬車で仔犬たちをサイラス様のところまで連れてきてくれるらしい。


最近の生活の変化としてはもうひとつ、いつも送り迎えをしてくれていたジェムさんがうちで働くことになった。雇用主はサイラス様のままだし、うちの仕事をするってわけでもないのだが、ジェムさんは馬車や馬の扱い以外に、護衛の仕事もできるスーパー御者らしい。サイラス様が自分との関わりが深くなったせいで私のところに変な人が来ないか心配ってことで住み込みで派遣されてきた。実際変な人はたまに来るのだが、ジェムさんが対応するとすぐに帰ってくれるのでとてもありがたい。

エレノアお姉様もアラン王子と婚約した時は突然会ったこともない知り合いが増えたとか言っていたし偉い人は色々と大変だなと思う。


あんな立派なところからうちの邸に来ていただいて申し訳ないが、本人は特に気にしてないと言っていたのでお言葉に甘えている。

まあ私が毎日半日はあちらのお邸に行っているし、そっちにもジェムさんのお部屋があるだろうから、もしかしたら生活にそこまでの違いを感じないのかもしれない。


「お嬢様、到着いたしましたよ」


「ありがとうございます」


「それとお嬢様、すみませんが本日こちらで少し用事がありまして。帰りの馬車は別の者が手綱をとりますのでよろしくお願いいたします」


「そうなんですね。わかりました」


サイラス様もジェムさんは有能な人って言ってたので何かと忙しいのかもしれない。


今日もサイラス様のお邸についた。私とサイラス様とエルディの三人で仔犬をお迎えしたが、スピカはエルディそっくりでとても物静かな犬だった。対してザビは、なんというか落ち着きが全くないというか、ちょろちょろしているというか、活動的な犬だった。


「こんなに動き回る生き物は初めて見ました」


サイラス様もちょっと驚いているようだ。



どっちがどっちを引き取るとかは特に決めていなかったのだが、お仕事のあるサイラス様には静かな犬の方が良いだろうってことで私がザビを育てることになった。

しばらく皆でわいわいして、そろそろ帰ろうかという時間になった。今日はハンスさんという方が送ってくれるらしい。

そのまま邸には着いたのだが、なんと馬車が停車した途端、膝にのっていたザビが窓から飛び出してしまった!


首輪とリードがついたまま、ぴょんぴょん走って行くザビをエルディと一緒に急いで追いかけるが、なかなか追いつけない。幸い見失いはしなかったがやっと追いついたときにはもうへとへとだった。


「ああ、捕まえられてよかったけど。変なところまで来ちゃったわ」


森まではいかないけど、林の中というか。人気はないし普段あまり近づかないところだ。


リードにつながれたザビがキャンキャン鳴いてさらに進んでいこうとする。


「これ以上どこに行きたいの?」


そう思ったが、エルディもそっちが気になるようでワンワン吠えている。

何かあるのだろうか? そっちを見てみると


「きゃあ!」


出血した男の人が倒れている。


「あの、だ、大丈夫ですか?」


声をかけてみると、うめき声で返事をしてくれた。死体じゃなくて良かった。

重くてとてもじゃないが持ち上げられそうにないが、ハンスさんが追いついて来てくれたので倒れていた人を最寄りの診療所まで運んでもらった。運んでいる途中で意識がなくなっていたみたいなので、どこの誰なのかはわからなかったが。


いやぁ、びっくりした! 


邸に戻るともう夕方になっていた。

ロイ君が帰ってきていたので早速ザビを見せて、今日の活躍を話してあげる。


「まさか、新居に到着初日に人命救助するなんて思わなかったわ。この子捜索隊とか救助犬とかの才能があるのかも」


「このチョロ助が?」


部屋の中とかエルディの周りをものすごく動き回っているザビを見てロイ君がうろんな顔をしていた。



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