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56 結婚式の話

先日マリーの姉と弟がやってきてマリーとの同居計画はなくなってしまった。最終的にマリー本人からお断りされたのでもうこれ以上押すこともできない。


たしかに、いくら好きとはいえ私も節度に欠けていた所もあったかもしれない。結局マリーと親しくなるのに近道はないということだろう。

こうして毎日会えるだけで良しとするしかないか。


しかし今年もあと何日も残ってないな。

来年には私とマリーの結婚式が控えているが、黙って待っていれば結婚式の方からやって来てくれるわけではない。そろそろ色々と決定していかないといけない時期だ。


まず会場だが王都の大聖堂が格式としては国では一番だし私も利用できる立場ではあるが、春に王太子、夏にアラン王子が使うとなると大聖堂はなんとなく食傷気味な感じがするな。特にアラン王子の嫁はマリーの姉だからメインの参加者がかなり重複するし。


とはいえ、国外の聖堂も縁が深いわけではないし、あまり遠くで式を挙げるのはマリーが好まなそうだが。どこが最適だろうか。

グダグダ考えるよりも今部屋にマリーがいるのだから本人の意見を聞いた方が早いか。


「マリー、私たちの結婚式なんですけど。どこで挙げたいとかどんな風にしたいとか希望があれば聞いておきたいんですが」


マリーが作業の手を止めてこちらを向いた。最近また私の仕事中に何かを作っているようだが詳細は不明だ。


「あっ、はい。うちの両親は領内の教会で挙げてたらしいので、なんとなくそんな感じかと思ってたんですけど」


たしかに領内の教会は貴族の結婚の定番ではある。しかし私の場合本拠地がほとんどこの辺りだから結婚式でいきなり地方に行くのもな。

私の両親は結婚前から仲が悪かったから式など挙げてないし、なんの参考にもならない。


「この辺りの候補だと大聖堂かと思ったんですが」


「えっ、大聖堂? 王太子とかお姉様が式を挙げるあそこですか?」


「ええ」


「いやいやいや! 大規模すぎませんか!? すみません、サイラス様くらいの身分だと普通に感じる場所かもしれませんけど、あそこはちょっと」


「そうですよね。私もできれば他の場所にしたいんですけど」


王太子、王子、私だと回を追うごとにスケールダウンしている感が強くてどうもな。私とマリーの大切な結婚式だ、もっと特別感が欲しい。


「あの、サイラス様。こんなこと言うと困らせてしまうかもしれないんですけど」


「いえ、是非なんでも言ってください」


「もっと小さい集まりというか、親戚とかお友達とかそういった人たちだけで挙式するみたいな感じだと思っていて」


正直私もたくさんの人に祝福されたいとか、多くの人を集めてにぎやかにしたいとかそんな考えはまるでないので、それはそれで良いと思う。ただ私の身分だと場所の選定が難しい、小規模かつ私が使っても問題ない場所。ああ、そういえばあるな。


「マリーが教会にこだわりがなければなんですが」


「ありません! こんなわがまま言っておいてなんですが」


「うちの敷地内の礼拝堂なんてどうです? あそこなら小規模で融通が利くし、来てくれる聖職者のつてもあります」


商売で教会との軋轢を生まないためにしていた大口の寄進が思わぬ所で役に立ちそうだな。ここの教区の司教から結婚する時は是非呼んでくれと言われていたしお言葉に甘えよう。


「アットホームでいいですね!」


マリーの顔が輝く。まあ自宅の一部だからアットホームだろうな。


「礼拝堂で誓いの後にガーデンパーティにしましょうか、それならエルディも参列できるでしょうし」


マリーが目を丸くして驚いているみたいだが、自分でもけっこう良い思いつきだと思う。

堅っ苦しい式より我々らしそうだ。エルディは私とマリーの縁をつないだ功労者でもあるし。何よりマリーも喜ぶんじゃないだろうか。


どんな反応があるかと思って横に目をやる。


「サイラス様って私にもエルディにも優しくて、思いやりがあって、紳士的で、本当に素敵な人ですよね」


素晴らしい笑顔で私を絶賛してくれた。

なんだろう、最近は距離を詰めることに躍起になっていたが、こういう穏やかな感じもこれはこれですごく満たされる感じがする。


早く秋にはなってほしいことには変わりないが、今この時が永遠に続いて欲しい気もする。難しいな。



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