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55 第2ラウンド

「ねえ、ロイ君。引っ越しって何が必要だと思う?」


夕食が終わってロイ君とリビングでのんびりしている時に、そういえばと思って聞いてみる。


「何、突然どうしたの? 誰か知り合いでも引っ越すの?」


長椅子に寝そべってぐだぐだしているロイ君。年末のテストが終わって冬休みに入るとかで完全にだらけている。


「ああ、この間カリナの所に行った帰りに、仔犬が来るのと一緒にサイラス様の邸に居候しないかって言われて」


そこまで言うとロイ君が長椅子からずり落ちてしまった。


「仔犬がかわいかったみたいな話は一万回くらい聞いたけど、なんでそういう重要なことを言わないんだよ!」


「え? でもエレノアお姉様もちょいちょいアラン王子の邸宅に長期滞在してるから、婚約者ってそういうものなのかと思って。だめだったかな?」


「マリーはだめだと思う」


判定基準がよくわからないけど、ロイ君は反対みたいだ。家族の反対があるとなるとあまり気軽な話ではなくなってくるかな。


「うーん、じゃあお断りした方がいいのかなぁ」


「うん、同居はちょっと急ぎすぎじゃないかと思うよ」


一回了承した手前断りづらいが、サイラス様は優しい人だから無理は言ってこないだろう。犬の問題は残ってしまうけど。


「丸め込まれないか心配だから明日俺も一緒に行くよ。休みだし」


「そう? でもロイ君って話をまとめるの上手だから、来てくれるなら助かるわ」



次の日、ロイ君と一緒にサイラス様のところへ向かったのだが、なんだか邸の中が騒がしい。


「来るなら邸の前で待っててくれって言ったのに」


ロイ君が額に手を当ててなにやらつぶやいているが、なんのことだろうか?


いつもの部屋に行くと、ドアの外まで聞こえるくらいの音量でお姉様とサイラス様の声が言い争っていた。何やらしばらく前が懐かしいような気がするが、心なしか前回よりパワーアップしていて怒鳴り合いに近い。


「本当にふざけんじゃないわよ! 私のかわいいマリーを結婚前に邸に連れ込もうなんて、よくそんないやらしいまねができたわね!」


「結婚前にアラン王子と暮らしているあなたにだけは言われたくないな!」


「私とアラン様と、マリーとあなたじゃパワーバランスが全く違うじゃない! あなたみたいな人が迫ってきたらマリーは何もできないわ!」


「単に一緒にいたいのと、今の住居だと防犯面で不安があるだけで、結婚前にそんなことをするつもりはない!」


「そんなのなんの保証にもならないわ、あなたの気が変わったらそれで終わりなんだから!」


なんだろう、私としては完全に軽い気持ちで客室に長期滞在するくらいの気持ちで返答してしまったのが、すごい波乱を呼んでしまっている。


「エレノア姉さんも話し合いに参加するか聞きたくて朝一で手紙出したんだけど、くれぐれも一人で行かないでくれとは書いておいたんだけどな。もう殴り込んでるとは思わなかった」


お姉様は思い立つとすぐな人だから。しかし私が軽率な行動をしたのがまた周りに迷惑をかけてしまったみたいで申し訳ない。


「えっと、ドアを開ける前にロイ君の意見も聞いてみていい?」


「うーん、エレノア姉さんとアラン王子は先の見えない結婚で付き合いも長かったからわかるけど、マリーたちは付き合いはじめだし、結婚もそう遠くないだろ。メリハリのある交際を心がけた方がいいんじゃないの? 俺の感想だとね」


たしかに。ちょっと私も初めての恋人に浮かれすぎてたんだろうか。

とりあえず部屋に入らないといけないけど、開けるの勇気がいるなあ……


「えっと、お二人とも、すみません」


「マリー!」


「あの、サイラス様。私軽い気持ちでお答えしちゃってすみませんでした。やっぱりこちらには結婚がすんでからお世話になろうと思います」


「それが正しいわ! マリー!」


「ぐっ! でもマリー、二人で仔犬を育てようって」


それは本当にどうしたらいいんだろう。


「仔犬二匹いるんでしょ? 結婚までは二人で一匹ずつ育てればいいんじゃない?」


ロイ君の天才的な発想により話はまとまったが、頭を抱えるサイラス様と、勝ち誇った顔がものすごく美人なお姉様を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいというか、物事はもうちょっと考えてから決めた方が良いと思った。




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