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53 提案

丸々した赤ちゃんたちと離れるのは辛かったが、これ以上長居すると帰宅が難しくなってしまうので帰ることになった。帰りがたいが。


「いい加減に帰りなさい!」


ドアにへばりついていたら、お呼ばれした身でありながら追い返されてしまった。


「マリー、この子たちとはまた会えますから」


サイラス様にも手を引かれる。たしかに私だけならカリナの邸に泊まることも可能だったかもしれないが、サイラス様にこれ以上迷惑はかけられない。しかも父親のエルディがおとなしく帰ろうとしているのに私がこれ以上粘るのもわがまますぎる、帰ろう。


カリナやサイラス様と相談の結果、黒毛で胸の辺りにクローバーみたいな白い模様が入った子と、明るい茶色の短毛で焦げ茶色の折れ耳の子の二頭をこちらへお迎えすることになった。


迎え入れる時期はあと二ヶ月くらい後でどうだろうっていうことで話がついたので今から楽しみだ。


帰りの馬車の中でも話題は赤ちゃんワンコのことで持ちきりだった。


「エルディとポピーちゃんの子ども、小っちゃくてまん丸で短い尻尾がピコピコしてて、本当にかわいかったですねぇ」


「ええ、思い返せばエルディにもあんな時期がありましたけど、まさか仔犬の親になってるとは感慨深いです」


「名前も決めなくちゃ。黒い子は男の子だし、茶色い子は女の子だからかっこいい名前とかわいい名前をつけてあげたいですよね」


「是非良い名前をつけてあげたいですね。戻ったら一緒に考えましょう」


「楽しみがいっぱいですね! お迎えの日が来るのが待ち遠しいです」

 

「マリー、それに関してちょっと言いたいことがあるんですが」


なんだろう?


「あなたさえ良かったら同じ時期にうちの邸に引っ越してきません?」


「え? 私がですか?」


「ええ、元々提案するつもりだったんですが、どのタイミングがいいかなと思ってたんです。マリーの所へ仔犬が来るのがちょうど良い機会なような気がして」


「結婚までにはまだ日もありますが、できればもっと一緒にいたいし、居住環境にも慣れてもらいたいですし。それと数日前に知らない人がマリーの別邸を訪ねて来たと言っていたでしょう? そういうことがあるのもそばにいられないと心配で」


「今回仔犬たちがマリーの所に来るのも大きい環境の変化ですし、どうせなら同時期の方がマリーにも仔犬にもストレスがないような気がするので」


ああ、たしかに引っ越しって新生活って感じがするからなぁ。


今までと違って生活空間が一緒になるっていうのは少し恥ずかしいが、来年にはどの道そうなる予定で、そうならなかったらむしろ困るくらいなので、前倒して居候させていただくのも良いかもしれない。


一緒にいられる時間が増えるのは私も単純に嬉しいし、けっこうな手間だった私の送り迎えもなくなるだろうし。それに仔犬たちが私の邸に引っ越してきたとして、今の訪問スタイルだと、仔犬は私や成犬のエルディと違って毎日のようにサイラス様のところに行くのは難しいだろう。サイラス様だって仔犬と暮らしたいだろうし、私が独り占めするのは悪いな。


「ありがとうございます。サイラス様さえよければ赤ちゃんたちと一緒にお引っ越しさせてください」


「……勘違いされると嫌なので言葉に出して宣言しておきますが、仔犬がどんなにかわいかろうと、私が一緒に暮らしたいのはあなたですからね」


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