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52 かわいさの塊

案内された部屋に行くとポピーちゃんがいた。

なんだろう、いつもどこかキリッとしているポピーちゃんの表情がとても柔らかい気がする。しかし、たしかにポピーちゃんはかわいいが、カリナは私にポピーちゃんを見せたかったんだろうか?


「ポピー、父親を連れてきてあげたわよ」


「え?」


ポピーちゃんがさっきまで寝ていた布のベッドから丸々した仔犬たちが動くのが見えた!


「!!!?」


かわいくて言葉も出ない。悲鳴なら出そうだが、ポピーちゃんや赤ちゃんたちの前で奇声をあげたりしたら迷惑だろう。両手を口にあてて声を押し殺した。


「カ、ヵ、カリナ。このベイビーちゃんたちって」


「しばらく前にポピーが妊娠したんだけど、生まれてきた仔犬を見たら半分はエルディにそっくりだからエルディが父親なんじゃないかしら? この二匹仲が良いし。それであんたを呼んだってわけよ」


「か、かわいいぃぃ!」


頭を抱えて床をゴロゴロ転げ回りたいくらいかわいい! そんなことしたらポピーちゃんと赤ちゃんを驚かせてしまうのでしないが。


エルディもポピーちゃんのそばへ行って、仔犬の匂いをかいだりペロペロなめたりしている。感動しかない。もう泣きそう。


「ちょっと、マリー。涙と鼻水を拭きなさいよ」


気がつかないうちに既に泣いていたようでカリナにたしなめられてしまったが。


そっと近づいてしゃがみ、よく見てみると仔犬ちゃんたちは四頭いるみたいだ。

黒い毛並みのポピーちゃん似の仔犬が二頭、茶色いエルディ似の仔犬が二頭。

まん丸のお腹をさらしてすやすや寝てる子もいれば、小さい肉球のついた小さい前足を上げてポピーちゃんやエルディに飛びかかっている子もいる。他の子犬の上によじ登ってる子やその下でバタバタしてる子。幸せ空間がここに極まっている。


「どうしよう、カリナ。あまりにもかわいくて私一生この部屋から出られないかもしれない」


「地縛霊みたいなこと言ってんじゃないわよ」


「かわいいよぉ、かわいいぃぃ」


「幽霊みたいな声のトーンで犬を褒めるのやめてよね」


「大体、見せびらかすためだけに呼んだんじゃないんだから。多分父親はエルディってことで飼い主のあんたにも仔犬を渡そうと思ったの」


「え! いいの? 本当に? 後で嘘だったとかなしだからね」


このエンジェルちゃんたちが、エルディの所にも来てくれるとは! 嬉しい!


「でももう少しポピーの所で育てさせたいから、しばらく後にはなるだろうけど、それで良い?」


「もちろん! ありがとうカリナ!」


すごく、すごく嬉しい! エルディとポピーちゃんの子どもと生活できるなんて夢のようだ。


「今日は連れて帰れないけど、抱っこしていく?」


「抱っこして大丈夫? ポピーちゃんと赤ちゃん嫌がらないかな?」


「もう体もしっかりしてるし大丈夫よ。それに四頭いるから、ちょっと触ってみた方がどの子が良いか選びやすいでしょ」


お言葉に甘えて黒い毛並みの子を抱っこさせてもらっていると、扉がノックされて、ヘンリーさんとのお話が終わったらしいサイラス様が入ってきた。


「サイラス様、ポピーちゃんとエルディの間に赤ちゃんが生まれてたんです。すっごくかわいいですよ」


腕の中の仔犬を驚かさないように平静を保って伝えると、サイラス様も仔犬のかわいさに頭を抱えて崩れ落ちていた。


「か、かわいらしい……。まるでマリーと私の間に子どもが生まれたみたいだ」


「え?」


カリナが驚いたような顔でサイラス様を見ている。サイラス様の少し独特で大げさな表現は見慣れていないと驚くかもしれない。


「ああ、私はエルディ似ですけど、サイラス様ってちょっとポピーちゃんに似てますもんね。髪が黒いところとか、キリッとした顔とか」


「……そうかしら? でも、思っていた以上にあんたと公爵様の相性が良さそうで親友の私としても安心したわ。公爵様は少し変わった目の持ち主なのね」


「? そうですね、珍しい色の目をしているとはよく言われます」


「色も珍しくはありますけど、そこではありませんわ。ただ、友人が幸せそうで何よりです。遅くなりましたが婚約おめでとうございます公爵様」



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