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49 襲来

サイラス様のお邸に着いた。

毎日来ていた所ではあるのに、自分の立場の変化もあってちょっと気恥ずかしい感じがする、照れるというか。


ただサイラス様はいつも通りなので私だけ恥ずかしがっていても変かな? あんまり変な態度をとってもおかしいし普通を心がけないと。

サイラス様もお仕事がちょうど一段落した所らしく、いつものように向かい合ってお茶を飲むが、今日は私はお菓子はもう食べられなさそうなので遠慮した。ビターなチョコレートでコーティングされたドライオレンジがテーブルの上に用意されていてすごくおいしそうだが我慢しないと。あまりお菓子ばっかり食べるのはまずい。ただでさえ今日の集まりは友人同士で遠慮がなかったので皆お菓子を普段よりかなり食べていたと思う。


向かいのサイラス様を見てなんとなく思ったことを口にする。


「毎日見てて思いましたけど、サイラス様ってレモンとかオレンジとか使ったお菓子けっこう好きですよね」


「よく気がつきましたね、たしかに甘味だと柑橘系が入ってるのが気に入ってます。あまりあれが好き、これが好きだと言うとそれ以外出てこなくなるのが嫌なので好き嫌いは口にしないようにしているんですが」


「へへ、でもサイラス様の好きな物とか嫌いな物とかこれからいっぱい知っていければいいなって思いますけど、その第一歩でしたね」


「私は多分マリーの好きなお菓子はけっこう知ってますよ。アップルパイにナッツの入ったブラウニー、レモンタルト、甘さが控えめのチョコケーキに生クリームを添えてあるものとか他にも色々」


なぜ? 言ったっけ? そう羅列されると私がお菓子大好き人間みたいだが。


「いや、ここで出てくる食べ物が全部おいしいのでサイラス様はそう思うかもしれませんけど。決して私はお菓子ばっかり食べてるわけではないですよ」


「フフ、わかってますよ。良かったら今度から昼食を一緒にとりませんか? マリーの食事の好みも是非知りたくて」


「私もサイラス様の好き嫌いは気になります。でも苦手な食べ物とかあるんですか?」


あんまり好き嫌いがなさそうなイメージだが。


「これはあなたと打ち解けた関係になれたから言うんですが、実は赤ワインがちょっと」


「ええっ!」


サイラス様がばつが悪そうに告白してくれた。じゃあ最初に私が持ってきたお詫びの品とか嫌がらせだった!?


「味は好きなんですけど、人生の節目節目であまり良い思い出がなくて。でもマリーからもらった貴重なワインがあるでしょう? あれを私たちの結婚式で開けたいと思っていて。私にとって良い思い出のある飲み物に変えられそうなので」


嫌がらせにならなくて良かった。

本当に気遣いの人だと思う。


明日の約束もして邸に戻ると、セバスとローラが困惑したように私にお客様が来ていると告げてきた。誰だろうか? 友達の誰かかと思いきやどうも知らないご令嬢みたいだし。

ロイ君もまだ帰って来てないし対応に困っていたらしい。

知らない人ということでジェムさんが心配してくれて一緒にお会いすることになったが、どんなご用件なのだろう。


応接室に行くと着飾った女性が座っていた。美人だが化粧のテイストのせいか、ちょっと退廃的というか、なんとなく不健康そうな印象の人だ。


「あの、お待たせいたしました。私に何かご用でしょうか?」


「やっと来たの? ふーん、改めて見ると本当に地味な女ね」


それはそうなのだが、なかなか失礼な人だ。どこかの侯爵令嬢ってことだが。


「早速だけど用件を伝えるわ。あなたには今後一切サイラス様に近づかないでもらいたいの」


今日も会ってきたし、明日も会う約束をしているし、それ以降もそうだろうに、なんて無茶なことを言ってくる人なんだろう。


「それは無理ですけども、理由をお聞かせいただけますか?」


「私、公表はしていないけどサイラス様とお付き合いしているの。あなたみたいな地味な女が少し優しくされて勘違いしないように釘を刺しにきたのよ」


「え?」


あれ? なんかこの人。


「ちょっとお聞きしたいんですけど、あなたって犬が好きだったりします?」


「話の腰を折らないでもらえる? 臭くてうるさい獣なんて私が好きなわけないでしょ」


エルディは静かで良い匂いだが。


「最近サイラス様に会ったりしました?」


「うるさいわね、毎日会ってるわよ!」


「サイラス様の好きな物ってなんですか?」


「……えっと、剥製と赤ワインよ!」


「やっぱり!」


「何がやっぱりなの? さっきから変な質問ばかりして!」


「来る所を間違えてますよ! 確実に別人です。サイラス様違いというか」


「はぁ?」


「一回、お邸に戻られて確認してみてください。絶対に間違えてますから。本当に!」


サイラス様は三ヶ月前にお会いした時、女性を招くのは初めてとか女性とは縁がないと言っていたからその時付き合っていたということはまずないだろう。その後私と婚約するまでにこの人とお付き合いが始まったとも思えないし、何よりこの人は犬が嫌いそうだ。それに一昨日はサイラス様ずっとうちの領地にいたから会えるわけないし、しばらく前に剥製にも全く興味ないって言ってたし、好きな物が赤ワインなんて真逆だ。


つまり同じ名前の別人とお付き合いしている人が「私とサイラス様と婚約した」っていう情報だけ聞いて間違えて乗り込んできたんだろう。


強く説得してお帰りいただいたが、それ以降一度もお会いすることはなかったので、やっぱり人違いだったんだろう。

迷惑な話である。



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