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45 幸せな結論

マリーの弟が我々に邸の中に入るように促した。アラン王子とマリーの姉は邸に入っていったが、マリーはまださっきの場所にいる。


「こんなところまで来てくださってありがとうございます。姉とお話する場所は整えますのでとりあえずお入りいただけますか?」


弟が私を中庭へ案内する。三ヶ月前と逆だな。


「差し出がましいことを言うようですし、お二人の間のことなので詳しいことはわかりませんが、しっかり話し合えば大丈夫だと思いますよ。姉は思い込みは激しいですが頭が固いわけではないので」


この弟は最初の時とだいぶ印象が違うな。姉と同じような感じで邪魔されたらどうしようかと思っていたが、そう言ってくれるのは素直にありがたいと思う。


「ありがとう。そうなることを祈っています」


中庭の長椅子に座って一人で遠くを眺める。

これからマリーに会えると思うと嬉しい反面、怖気づく自分がいる。マリーに弁解したい一心でここまで来たが、話を聞いてもらえたとして私とマリーの関係が一体どうなるというんだろう? 

元々私からの一方的な好意だ。マリーからしてみれば、私が必死にこんな言い訳をしたところでなんでそんなことを言ってくるのかという感じかもしれない。


たしかに私は昨日、マリーも私に好意を抱いてくれているかもしれないと思った。ただそれも少し私を気にかけてくれている程度の話かもしれない。そしてこのゴタゴタでそんな好意も消えているかもしれない。私はこんなにマリーのことが好きなのにマリーは違う。

こんなにしつこいと逆にマリーから嫌われてしまうかもしれないが、諦めることもできない。

マリーに思いを返してもらえないのが寂しい。


マリーの周りはいつも愛であふれている。私みたいな空っぽな人間がマリーに愛されたいなんていうのは過ぎた望みなのかもしれない。


「サイラス様」


マリーがやってきて私の隣に座ってこちらを見た。半日と少し離れていただけなのにそれがとても長い時間だった気がする。


「マリー。私が何も言わなかったせいで不快な思いをさせたみたいですみませんでした」


とりあえず謝ろう。私がグズグズしていたせいでマリーを傷つけてしまった。さっさと言うべきだったんだ、全て。


今からでも聞いてもらえるだろうか。それでどうなるのかはわからないし、こんな思いで話すことになるとは思わなかったが。


私の昔話なんて退屈だろうが、マリーは聞くと言ってくれた。


両親の不仲、親との関係、母親の死とそれからの生活、ヴァルゴのこと……。

家族と憎しみ合い殺し合った五年とそれから虚しい二年を経て、マリーに出会って、幸せだった。


ヴァルゴを助けてもらった感謝、エルディはマリーの犬であり、自分は決してエルディ目当てでマリーに近づいたわけではないこと、今まで溜め込んでいた感情が流れ出て止まらない。


「最初はかわいらしいとしか思っていなかったのに、一緒に過ごすうちにあなたが私の幸せの全てなってしまう。あなたはあたたかくて優しい、あなたといると楽しい、あなたと過ごすのが私の安らぎで幸せなのに」


自分でも滑稽だと思うほどに一方通行だ。

誰からも愛されたことなどないしそれで良いと思っていたが、マリーの愛だけは欲しい。

なのに、エルディはマリーから深く愛されているが、私はこんな少しのすれ違い程度ですぐに捨てて行かれてしまう。


「あなたを」


涙が流れる。情けないが、もう全部吐き出してしまおう。


「好きになっていくのが私だけで辛い。エルディがうらやましい。あなたに愛されたい」



「あの、サイラス様?」


隣のマリーが呼びかけてくる。顔を上げるとマリーの顔が紅潮していた。


「私わりととっくにサイラス様のこと好きですよ」


「え?」


幻聴か? 「友達として」とかそういうオチがつくやつか? でも、もしかすると本当に私のことが好きなんだろうか? 本当に? 


「サイラス様はいつも私に親切で優しかったけど、ずっとどこかで不安だったんです。私にはすごい特技もなければすごく美人なわけでもないし、なんで私なんだろうって」


マリーの自己評価に驚きを隠せない。君は私にとって世界で一番素敵な女性なのに。


「それでエルディがサイラス様の愛犬だったって知って『やっぱり私じゃなかったんだ』って勝手にショックを受けてました」


君だよ! 私がマリーからエルディを取り上げようとしていると勘違いして、エルディを連れて私から逃げたのかと思ってた。


しかしもうこれは夢なのでは? なんて心配はしなくても良さそうだ。私の頭ではたとえ願望であってもマリーみたいな女性を生み出すのは無理だろう。マリーは現実にしかいない。



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