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44 傷心の痛み分け

ここしばらくマリーと楽しい安らぎの日々を送っていたせいか、このギスギスした空気が妙に久しぶりな感じがする。


アラン王子は早々に会話から離脱して目を閉じて腕を組んでいる。最初王子はフォレット領まで行くのに難色を示したが、マリーの姉にじゃあ来なくて良いと言われて傷ついたのかついてきたようだ。今乗ってる馬車は王子の物だが。


「大体あなた怪我なんてとっくに治ってるのに、マリーを毎日付き合わせて。ちょっと図々しいんじゃないかしら?」


「初対面の他人にそこまで失礼なことが言えるあなたには負けますけどね。大体マリー本人が了承してくれているのに姉君が妹の交友関係にまで口を出すのはどうかと思いますよ」


最初は無礼のないようにしたいと思っていたが、だめだ。私はこの女と相性が悪い。

延々と無駄な言い合いをしていると、アラン王子が御者に「おい、もっと速く走れ」と指示を出していた。


「昨日までマリーは変わったところなんてなかったのに、今日になって逃げるみたいに領地に帰るなんてあなたが何かしたんでしょう? 出会った時からマリーへ変な要求ばかりして」


「それに関しては全く的外れですよ。昨日悪意のある輩から変なことを吹き込まれたようですが、私は常にマリーの意思を尊重していますし、敬意を持って接しています」


そうだな、昨日のあの時間までは普通だった。だとするとあの場でマリーに余計なことを言えそうな奴は限られてくる。

ヘンリーの野郎か。やってくれたな、ヘンリー。

…………ただあいつを締め上げに行くのはいつでもできる。今はマリーのことだけを考えよう。



不毛な言い争いを続けながらフォレット領のマリーの邸に到着したが、なんとマリーがいない。ここまで来てマリーに会えないとは。

まずいな、このままでは貴重な時間を浪費してこの二人と無意味に遠出しただけになってしまう。


そう思っていたらアラン王子が誰かと話している。あれは


「マリー!」


驚いたような顔をしたマリーがそこにいる。

やっとマリーに会えた、体調はもう良さそうなのが幸いだ。


マリーの姉が私とマリーの間を割くようなことを言っているが、この女は本当にいい加減にしてほしい。さっさと帰れ! 王子も帰りたそうにしてるだろうが。


「あの、二人ともなんでここにいるの? お姉様とサイラス様」


追いかけてくるつもりが追い越してたことには私も驚きを感じたが、そこはたいした問題ではないだろう。マリーの誤解を解かないと。マリーに話を聞いてもらいたいが、もう私の顔なんか見たくなかったらどうしよう……


自分の声が震えるのがわかった。

マリーが絡むと急に弱気になる自分に腹が立つが、大丈夫、マリーは優しい、きっと私の話を聞いてくれるはずだ。



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