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43 絶望の朝

夜が明けるのが待ち遠しい。

朝になればマリーは元気になっているはずだ。初めてマリーの体調が悪そうな顔を見たが、それだけでこちらまで苦しかった。


落ち着かないまま時間だけが経過した。まだ他所の邸に訪問するにはあまりにも非常識な時間だ、もう少し待たないと。温室へ行って見舞いの花でも切ってくるか。


早くマリーに会いたい、まだ朝だが、心配で気になって仕方なかったと言えば許してくれるだろう。

マリーの邸に到着して取り次ぎを頼むと執事が申し訳なさそうにマリーの不在を伝えてきた。手紙を預かっているとも。


不在? 朝の散歩にでも行ったのかと思って確認したらどうも違うらしい。フォレット領に行ったということだが、そんな急ぎの用事があったのだろうか。


先日の「目が覚めたらマリーもエルディも全て消えていたら」なんていうくだらない思考がフラッシュバックした。

くだらない、マリーにだって急用くらいあるだろう。弟も一緒に行っているみたいだから家の用事かもしれない。


渡された手紙を開いてみる。私へのメッセージが残してあるのだからそこに理由は書いてあるはずだ。マリーから手紙をもらうのは三ヶ月ぶりだな、あの時は謝罪の日程調整なんていう味気ないものだったが。


あまり飾り気のない白い便せんに、クセのない文字が並んでいる。



『親愛なるサイラス様へ


昨日は突然の不調でご心配をおかけして申し訳ありません。


この三ヶ月間私とお友達でいてくださって本当にありがとうございました。サイラス様と一緒に過ごすことができて、とても楽しい素敵な日々でした。


でも、すみません。私、最後までエルディがヴァルゴさんだったということに気がつかなくて、サイラス様とエルディの間に割って入るような形になっていたのかと思います。調子に乗ってはしゃいでいた自分がお恥ずかしいです。


今、少し驚いていて混乱しているというか、自分でもよくわからないのですが、とにかくサイラス様に合わせる顔がなくて……

自分の頭を整理したいので、一度自分の邸に帰ろうかと思います。


エルディのことについて話し合いの機会が必要かとは思いますが、もう少しだけ、私の心が落ち着くまでお待ちいただければと思います。


こんなにお世話になっておきながら直接ご挨拶もせずに領地に帰る無礼をお許しください。


マリエラ・フォレット』



書いてあることが信じられずに、何度も読み返すが内容が変わるわけもない。

息ができない。呼吸が止まって首の下辺りに刺すような痛みを感じたが手を動かすこともできない。


なぜ? 嘘だろう?

エルディがヴァルゴなのはこれからマリーに伝えるつもりではあったが、この手紙の感じだと最悪な形でマリーがそれを知ったらしい。なぜそんなことになった?



しかもおそらく私は完全に誤解されている。

マリーが私とエルディの間に割って入った? これだと私がヴァルゴ目当てでマリーに近づいたクズか何かだと思われている可能性すらある。

積み上げてきた親しみすら失われてしまったかもしれない。一刻も早く誤解を解かないと!


「あら、公爵様? お客様を一人にして、マリーとロイはどうしたのかしら?」


いつの間にか人が入って来ていた。マリーの姉と王子か、今こいつらに構っている場合ではないが。さっきの執事が対応しているようだ。


「あの、エレノアお嬢様。マリエラお嬢様と若様は先ほど本邸に戻られまして」


「あの子が? 今もそれなりに早い時間なのに、何しに行ったの?」


「申し訳ありません。詳細は私どももうかがっておりませんで」


「なんだ、せっかく来たのに不発だったな。帰ろうか、エレノア。サイラスも訪ねた相手が留守で残念だったな」


「そうですね。殿下、フォレット嬢、申し訳ありませんが急いでおりますので御前を失礼いたします」


一秒が惜しい。さっさと行かないと。

馬車の馬を外して乗っていけば、しばらく前に出発した馬車くらいなら追いつけるだろう。

馬を外した車は非常事態だからここに置かせてもらうとして、鞍は一応馬車に積んであったはずだ。ジェムにこのままフォレット領に行くことを伝えていると、マリーの姉が追いかけてきた。


「ちょっと公爵様、あなたうちの妹が領地に戻った原因をご存じなんじゃないの?」


うるさいな、私が原因だよ。


「ええ、なんとなくは」


「教えていただける?」


「すみませんが、個人的なことなので」


ジェムの準備が終わったようだ。


「旦那様、馬の準備が整いました。私も併走いたしますが、公爵邸への連絡はこちらのお邸の方にお願いしてよろしいですか?」


「ああ」


「ちょっと待ってくださるかしら。まさかうちの本邸に行くつもりなの?」 


クソ、マリーの姉だから下手に扱えないし面倒だな。


「急ぎでマリーに話さないといけない用事があるので。本人以外に言うつもりはないので内容については聞かれても答えられませんが」


「ふうん、なら私も同行させていただくわ。ここしばらくあなたが妹を振り回していたみたいだけど、それがあの子にとって良くないなら姉として放っておけないもの」


本当に面倒なことになってきた。ただでさえややこしい事態になっているのに。


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