39 パーティへのお誘い
建国祭が近くなってきたが、仕立屋からついに衣装が完成したと連絡が来た。
届けられたドレスを早速確認する。
上品で華やかで美しい。そしてこれが一番重要だがマリーによく似合いそうだ。とりあえずトルソーに着せたドレスを執務室の隣の部屋に置いた。
明日マリーが来た時にこれを見せて、建国祭のパーティに一緒に参加してくれないか頼むわけだが、万が一断られたらどうしよう。
『サイラス様すみません。偉い人たちが集まるようなパーティは、私にはちょっと』
とか言われたら……
いや、後ろ向きになるな。
まず、ドレスは受け取ってもらえるだろう。マリーに合わせて作った物だから他に使い道もない、受け取り拒否はしないはず。それで首尾良く夜会の同行も了承してもらえば最高だが、少し難色を示すくらいなら何か理由をつけてお願いすれば来てはくれるんじゃないだろうか。
問題は強い意志を持って拒否された場合だな。この場合拒否されているのは私ではなく夜会だが、考えるだけで少しキツい。
マリー抜きの建国祭とか行きたくないな。
夜会が駄目なら二人で一緒にこの邸で夕食をとってうちのホールでダンスを踊って星空でも見ながら告白したい。
しかし私は立場的に強制参加だし、例年も遊びに行っているわけではないからそういうわけにもいかないだろう。夜会が始まって陛下のお言葉が終わったらてきとうな所で帰ってマリーと会えないだろうか? 多少問題行動ではあるが。それも難しそうなら別の機会を待つしかあるまい。
プランは練った。断られる可能性の方が低いだろうし明日が待たれるな。
と、思っていたものの、いざマリーが来たらなかなか言い出せない。
どう切り出したものか……まずいな、私ともあろう者がなんのアクションも起こせないままに時間の経過を見送っている。あるまじき事態だ。
「なにかあったんですかサイラス様?」
そう思っていたらマリーの方から声をかけてくれた。なんという渡りに船。ありがとうマリー!
断られないかという不安と、喜んでくれるのではないかという期待が、膨れて混ざり合ってざわざわする。緊張しながらマリーにドレスを見せて、一緒にパーティに参加してくれないかお願いしてみた。
……返答までの三秒間が永遠にも感じたが、「よろこんでご一緒します!」の一言を聞き終わった後は安堵と喜びがすごかった。良かった。やはりこの期間でマリーも多少は私に好意を抱いてくれている、夢のようだ。
「私、建国祭みたいな大きいパーティに参加するの初めてなので、どんな感じなのか楽しみです」
しかも、結構前向きに楽しみにしてくれている。当日は完璧にマリーをエスコートして楽しかったと思ってくれるようにしよう。必ず期待に応えてみせる。
その日はふわふわした気分でマリーと過ごして明るい気持ちで見送った。
その日の昼過ぎ、ジェムから何か報告があると連絡があった。
ジェムは元々私の護衛をしている有能な男だが、最近はマリーの送り迎えをしてもらっている。道中に危険があると困るからな。しかしマリーを送って今帰って来たのなら普段よりだいぶ時間がかかっている。何かあったのか? 緊急性はないらしいので悪い話ではないと思うが。
聞けばわかることか、すぐにジェムを部屋に通した。
「何かあったのか?」
「本日マリエラ様がミリアム通りの工房でお買い物をされまして、そこでマリエラ様の知人と少しお話をしてきたのですが」
マリーの知り合いか。何を聞いてきたんだ?
「七年前にヴァルゴがマリエラ様のところに保護された経緯が判明いたしましたので、旦那様にご報告したほうがよろしいかと思いまして」
「……詳細を続けてくれ」
拾ってきたと言っていたから、邸から逃げてさまよっていたヴァルゴと偶然出会ったのではないのだろうか。犬の足でも行けないことはないだろうが、マリーの実家はここから距離もあるし、なぜヴァルゴがフォレット領に? と感じたことはあるが。
ジェムがそれを知っているのなら早く話してもらうとしよう。




