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3 天使ってなんだっけ?

その日の晩餐はお通夜のようだった。


デュラン公爵は見立て通り、来年からのワインの取引の話をしに来たらしい。が、

私がスタート地点でやらかしてしまったのでもう商談どころではないだろうとして、お父様は公爵に謝りまくったそうだ。


しかし公爵は意外にも笑って許してくれたという。他の地域に寄って泊まる予定もあり、運良く服の替えをお持ちだったので、着替えてそのまま当初の予定通り話をすることになった。


もしかしたら怒りを隠しているだけかもしれないと疑っていたお父様は、どんなに条件をふっかけられても飲むしかないくらいの覚悟でいたが、むしろ驚くほど好条件かつ、すごい早さでワインの出荷の話がまとまったらしい。


胸をなで下ろしていたところに、公爵が私の話を振ってきた時はお父様はまた心拍数が上がったらしいが


「さっきのお嬢さんは犬が好きなんですか?」


みたいな感じのとりとめもない話題だったので少し安心して聞かれることに次々答えていたらしい。


話し込んでるうちに気がついたら会話の大半は私に関することになっていた。さすがに何か変な気がしてきたお父様だったが、私に婚約者がいるかどうか振られた時に


「まだ探しているところでして」


と正直に答えると、公爵が満面の笑みを浮かべ、それに妙な迫力を感じたお父様もひきつった笑いを浮かべた。


「ああ、まだ婚約者がいなかったとは。世の中の男に見る目が無いおかげで今日ここでマリエラ嬢にお会いすることができたのは僥倖でした」


「どうか、あの天使のようなかわいらしいお嬢さんの結婚相手に私を選んでくださいませんか?」


………


私からしても冗談はヨシュアさん以外の感想は無いが、お父様も突然の申し出過ぎて恐怖を感じたらしい。


お父様もあの場にいたが、犬を両手で抱えて肩で息をする血走った目の私は、親の愛というフィルターを通しても天使要素などかけらも無く、かわいさとも無縁だったという。


お父様も今までデュラン公爵と深い付き合いがあったわけでもないので、人となりに詳しい訳ではない。


事故死や病死で家族が死にまくってるという事実とそれにつきまとう噂はあるものの、仕事に対する姿勢や領地経営に関してはすこぶる評判が良いらしい。


つまりビジネスの相手としては問題ないが、血縁関係を結ぶとなるとどうしていいかお父様にもわからないようだ。


「向こうの意図がわからないんならお断りした方がいいんじゃないの?」


お姉様は反対してくれてるが


「しかし相手方はうちなんか比べものにならない大貴族だからなぁ。理由もなしに無碍にできんだろう」


「公爵様もマリーのかわいさにやられちゃっただけかもしれないし、マリーも一度会ってみれば? それで嫌なら、うーん、なんやかんや理由をつけて話をうやむやにしちゃえばいいわよ」


お母様の意見は全体的にゆるい。


公爵のことは怖いが、とりあえずちゃんとした謝罪はしないといけないところだったので一度お会いしてみようと思う。


「気の迷いか勘違いの可能性も高いし、一度謝罪文をお送りしてご訪問するお約束を取り付けたいんだけども」


ただ一人で行くのは怖いので誰かついてきて。切実に。




結局次の日にお手紙を出して、一週間後に公爵邸にお呼ばれされることになった。てっきりお父様が同伴してくれるかと思っていたが、弟のロイ君がついてきてくれることになった。


お姉様がロイ君に手紙を出したらしいが、自分がついて行くと即日で返事が来たそうだ。お父様はちょっと気弱なところがあるので、しっかり者の弟が来てくれるのは頼もしい。


公爵のお邸は、うちの別邸と案外近いようだった。前日にお詫びの品をもって別邸入りしたが、久々に会ったロイ君もあきれ顔だった。


「マリーがやばい大物を釣り上げたって聞いたけど、なんでそうなったのさ?」


「私にもよくわからないんだけど、泥まみれのエルディが公爵を突き飛ばして、私がエルディを持ち上げて回収したらなぜか結婚を申し込まれてたの」


「昨日見た夢の話ってくらい意味不明だね」


ロイ君は眉間にしわを寄せたまま少し考え込んで


「実は公爵、めちゃくちゃ怒っててマリーを嫁にした後に殺そうとしてるとかないよね?」


恐ろしいことを口にした。

さすがに殺されるほど悪いことはしてないと思うが背筋がぞわっとする。


「もし怒ってたとしても、明日謝って許してくださればいいんだけど」


お父様もうちで一番貴重なワインを土産に持たせてくれたので、これでなんとか手打ちにしてほしい。私に求婚したとかもお父様の勘違い説が捨てきれないから、こっちに関しては自分からは触れない方がいいだろう。


翌日の午前、弟と一緒に公爵邸へ向かったが、


「ロイ君。ついてきてもらっている身で申し訳ないんだけど、帰りたくなってきた」


門からもう立派で、うちとの格の違いが明らかなので自分の場違い感が気になってしまう。


「エレノア姉さんの旦那の家の方が立派でしょ。ほら、さっさと行くよ」


王宮と比べないでほしいが、物怖じしないロイ君がついてきてくれて助かった。

馬車を降りて守衛の人にお取り次ぎを頼もうとしていたら、玄関から颯爽とあらわれた青年……


あれ? この間うちに来た人だよね? じゃあ公爵様ご本人だよね?


そんな偉い人がなんでわざわざ外までお出迎えにきてるの?


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