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「旦那様、今はそれどころではないとは思いますが、また三件ほど婚約のお話が来ておりますよ。どうお返事いたしましょうか?」


そういえば見合いの申し込みが来ていたんだった。さっさと断らないと。

何度か断ってもめげずに釣書を送ってくる家もあるが。


以前は紹介や申し込みがあれば女性と会ったりもしていたが、会う女性が口を揃えて『陰のあるところが素敵』とか言ってくるので正直嫌気が差していた。誰が好きでそんな物持ってると思うのか、暗い人生の副産物なんて今すぐにでも捨てたいわ。

申し込んでくる連中も私にどんなイメージを抱いているのか知らないが、金目当てとか、地位目当ての方がまだ良いくらいで、ひどい場合だと「剥製になってあなたの部屋に飾られたい」とか言う女性もいた。二度とお会いしたくない。

私にそんな猟奇的な趣味はないので、そんなことを言われるのは純粋に気味が悪いと思う。


昔ネルソンがヴァルゴのことで私を煽って来た時にあまりにもうるさかったので「黙らないとお前を剥製にする」みたいなことを言ったのが始まりだと思うが、ここまで引きずられるならあんなこと言わなければ良かった。今更どうしようもないが。


「もう相手は決まった。見合いも紹介も今後は全てお断りする」


「マリエラ様とはまだご友人かと思っておりましたが」


「マリーとこれからどうなろうとも、他の女性とは結婚はしない。最悪の場合分家から後継者を出す」


最初は好意的に見ている程度の感覚だったが、一緒に過ごすうちにマリーの存在が私の中で大きくなりすぎた。一緒にいると感じたことのない安らぎを感じるし、信じられないくらいに楽しい。

こんなに好きになれる女性は確実にマリーだけだし、マリーの類似を求めて別の女性を探したりするのだけは絶対に嫌だ。もしマリーが私を好きになってくれなければ一生一人でいいとも思う。しかし、


「……なぜ、まだ友達なんだろう?」


友達になってくれとは言ったが、友達から始めたいだけであって、ずっと友達でいたいわけではないんだが。恐ろしい程恋愛に発展しないまま、もう約束の三ヶ月は半分が経過している。

未だに手を握るくらいの接触しかないし、転びそうになったマリーを抱きとめるとか、前方不注意で体がぶつかるとか、そんなハプニングもない。話をしていてすごく楽しいが、そこから甘い雰囲気になるかと言えば全くそんなことはない。関係が清らかすぎて、五歳か六歳の子どもレベルだ。下手するとそれ以下かもしれない。


喉から手が出そうなほど進展が欲しいが、あんな純粋な女性相手に下心を持ってベタベタするわけにはいかない、それは大罪だ。マリーの気持ちがこちらに向いてない以上はあまり過剰に好意を伝えるのも迷惑だろうし、どうしたものやら。


「マリエラ様はマイペースなお嬢様ですし、ゆっくりでも少しずつ旦那様を好きになってくれるのではないですかね?」


無力感に頭を抱えているとポールがフォローを入れてくる。

そうかもしれない、少なくとも嫌われている感じはしない。私のマリーへの好意が百上がる間に、マリーからの好意はせいぜい一か二くらいしか動いてなさそうなのが辛いが。



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