27 新しい二つ名
ある日マリーと話していて、マリーとエルディが似ているというような話になった。どこが似てるのか考えてみたがまず毛色と瞳だろうか。そんな風に言うと
「エレノアお姉様やロイ君は髪は金色で目は海みたいに青いんですけど、私はどっちにも似てなくて。
お母様は目は青いし、お父様は髪が金色なんですけど、お母様のお母様は私みたいな目と髪の色らしいので、私はおばあ様似らしいです」
失礼にあたるかもしれないから口には出さないが、マリーは金髪に青い目が似合わないと思う。今の色が最高に似合っている。
「エルディに似てるって言われるのは嬉しいので良いんですけど、たまに自分でもありふれた色だなーって思います」
あはは、と笑うマリー。
「マリー、髪や目の色なんて珍しければいいと言うものでもないですよ。私の目なんて珍しいは珍しい色ですけど色が薄くて白目の中に白目があるみたいに見えますからね」
私は顔はよく褒められるが、目は、瞳の色だけは不評だ。薄い薄い青みがかった灰色。目つきも鋭く見えるようで、周りから怖がられることが多い。
母方の家系でたまに出る色らしく、私の母ももう少し青みが濃いものの似たような色だった。
母があそこまで仕事人間になったのも、目が怖いとうるさく言われて色恋沙汰が面倒になったのもあるのだろうか。そのくらい頻繁に目が怖いと言われる(さすがに面と向かって言ってくる馬鹿はあまりいないが)
私の目がマリーのように優しかったなら絶対に『悪魔の目』とか『血に塗れた公爵』とかそんなあだ名はつかなかったと思う。
「ふふっ、サイラス様面白いこと言うんですね。でも、サイラス様の瞳って周りの色が薄い分瞳孔が強く見えて」
迫力があるとか思われてるのか、やはりマリーも私の目は怖いだろうか?
「北国のわんちゃんみたいで素敵ですよね」
え、何? 北国のわんちゃん?
この「悪魔の目」が「そりを引く犬の目」?
理解するまでに数秒かかったが、
「クッ」
「アハハハハッ! ヒッ、ククッ!」
めちゃくちゃ笑ってしまった。こんな馬鹿みたいな声を上げて笑うのは初めてな気がする。
いや、確実に初めてか。
マリーが引いてないか心配だ。早く弁解しないと。
「フッ、フフ、すみません、マリー。そんな風に言われたのは初めてで。面白くて、つい」
「す、すみません、サイラス様。もっと何か美しかったり詩的な表現の方が良かったんでしょうけど」
「いや、すごい気に入ってしまって。もう北国の犬を自分の二つ名にしたいくらいです」
血塗れ公爵より余程良い。
「? そうですか、良かったです。でもサイラス様は出身がこの国でしょうから『目だけ北国の犬』ですね」
もうだめだ。お茶を口に含んでいる時でなくて良かった。
ひとしきり笑った後、マリーの前で早速こんな失態を見せてしまったことに気がつき頭を抱えて落ち込む。
「サイラス様、どうしたんですか? 頭が痛いとか」
「いえ、レディの前で馬鹿笑いしたのを反省しています」
「サイラス様が楽しそうに笑ってくれる人で良かったです。偉い人だからずっと無表情だったらどうしようかと思ってましたし」
マリーが笑顔でそう言ってくれる。
良かった。人によっては致命傷になりかねない醜態だったと思うが、マリー的にはセーフだったらしい。明日から気をつけよう。
昼の鐘を聞きながらそう思った。




